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なぜ軽症の人にコロナウイルス検査を行ってはいけないのか?理由と根拠を徹底解説。

なぜ軽症の人にコロナウイルス検査を行ってはいけないのか?

なぜ軽症の人にコロナウイルス検査を行ってはいけないのか?
  • 「発熱があってコロナじゃないか心配なんだけど、病院が検査してくれない!!」
  • 「国がオリンピックの為に検査数を抑えているんじゃないの?」
  • 「なんで検査力には余裕があるのに検査しないんだ?」

最近こんな怒りのTweetをよく見ます。安心してください。ちゃんと合理的な理由があります。

感度、特異度、的中率とは?

感度、特異度、的中率とは?

感度、特異度ってよく効くけど聞き流してませんか?これらは検査精度を表すための陽性的中率、陰性的中率に関係する数値です。少し煩雑ですが解説にお付き合いください。

まず

感度は病気の人を陽性と判断する割合

特異度は健常者を陰性と判断する割合です。

つまり病人100人を検査すると感度70%で70人陽性

健常者100人で検査すると特異度95%で95人陰性になります。

今回はコロナのPCR検査の感度特異度を感度が70% 特異度が95%とします。大体、どの情報でもこれくらいですので、この値を使って実際に計算します。

計算方法

ここから実際の計算の考え方を紹介します。

煩雑ですが、これを理解するとコロナ関連のワイドショーが楽しくなります。

この人解ってないなと心の中でマウント取れます(笑)

下に3つの集団を用意しました。

有病率は感染している人の割合です。

  • A群:軽症で渡航歴なしの人たち:有病率10%
  • B群:中等症で渡航歴なしの人たち:有病率50%
  • C群:中~重症で渡航歴ありの人たち:有病率90%

ABCそれぞれ1000人いると仮定します。そうすると病気の人と健常者は

  • A群で病人100人:健常者900人
  • B群で病人500人:健常者500人
  • C群で病人900人:健常者100人

それぞれいることになりますよね?

病人から病気を陽性とする感度が70% 健常者を陰性と判断する特異度が95%なので

  • 病人×感度=病人の陽性数
  • 健常者×特異度=健常者の陰性数

となります。

A群陽性

病人100人の中から

陽性70人、陰性30人(偽陰性)が出る。

健常者900人の中から

陽性45人(偽陽性)、陰性855人が出る。

結果:軽症+渡航歴無しの人に検査すると

70+45=115人の陽性と

30+855=885人の陰性が出るんです。

この時の検査精度(陽性的中率、陰性的中率)は陽性/(陽性+偽陽性)だから

  • 陽性的中率:70/115=約61%
  • 陰性的中率:855/885=約97%

陽性は高い数字ではないし、陽性と出ても4割は外れています。

その上、偽陽性の45人は病院に隔離され無駄な医療資源を使ってしまう。

更に本当に陽性の70人と一緒に隔離されるから本当に感染してしまうリスクもある。

これは単なる計算だけど

日本人口の1%の120万人がPCR検査に殺到すると

1000人の場合の1200倍なので、45×1200=5.4万人のもの偽陽性患者を隔離しなければならなくなる。当然そんな余裕はない。

同様にB群を計算すると

B群陽性

病人500人の中から

陽性350人、陰性150人(偽陰性)が出る。

健常者500人の中から

陽性25人(偽陽性)、陰性475人が出る。

結果:中等症+渡航歴なしの人に検査すると。375人の陽性と625人の陰性が出る。

検査精度は

  • 陽性的中率:350/375=約93%
  • 陰性的中率:475/625=約76%

C群陽性

病人900人の中から

陽性630人、陰性270人(偽陰性)が出る。

健常者100人の中から

陽性5人(偽陽性)、陰性95人が出る。

結果:中~重症+渡航歴ありに検査すると。635人の陽性と365人の陰性が出る。

検査精度は

  • 陽性的中率:630/635=約99%
  • 陰性的中率:95/365=約26%

より詳しく知りたい方は『ベイズの定理』でググってみてください。

数字の解釈

それぞれの数字を表にまとめるとこんな感じです。

f:id:HKS17881:20200312175104j:plain

陽性的中率が上がると陰性的中率は下がる関係になります。

余談ですが

中国製の精度95%の検査キットが出たという話が聞こえてきますが眉唾です。

ご覧のように精度は有病率で大きく変化します。

事前に判断される有病率が低い場合は

陰性は当たりますが陽性はあてにならない。

問題なのは偽陽性の余計な隔離者を生んで医療資源を大きく消費してしまう。更に検査の為に人々を動かすので感染拡大のリスクをはらんでいる。

⇒しても意味がない。陰性者の安心しか生まない。むしろ感染が拡大するリスクがある。

有病率が50%を超えると

陽性は当たる様になるが、今度は陰性が当たらなくなり、偽陰性のコロナウイルスもちが隔離されずうろつく様になってしまう。

⇒かえって感染拡大のリスクを招く。検査の為に検体を触らなければならず医療者は大きなリスクを取らなければならない。

90%越えは

陽性はほとんど当たる。

ただ陰性はほとんど当たらない。

しかし元々、重症で渡航歴のある人だから陽性は当然隔離されるし、

陰性でも重症なので入院が必要、

その時、病院は偽陰性の高さをわかっている。

⇒どっちにしろ隔離される。そのため、検査の意味は薄い。

陽性者は正確なので疫学的に数を測定するための意味はある。

御覧の様にPCR検査は治療選択に大きく影響しません。

安易な検査は感染の拡大をきたします。

一番大事なのは有病率

一番大事なのは有病率

ここまでしっかり読んでいただいた方はお気づきかと思います。

的中率に一番大きく影響するのは有病率です。

有病率は周囲の人口や発生率、症状の程度や危険なエリアにいったか等の情報から医学的知見をもちいて医師が総合的に判断します。

検査が断られるのは有病率が低いと医師が総合的に判断したためです。有病率を最も正確に判断できるのは高度な知識を持つ医師しかいません。そのため、ありとあらゆる検査のオーダー権利は医師が有するのです。

不安かもしれませんが医師が必要ないと判断したのは有病率が低く検査があてにならないからです。

インフルエンザの検査が多いのはなぜ?それは特効薬のおかげ

ちなみにこの計算はインフルエンザ等でも大体同じです。インフルエンザの感度は60%程度らしいので的中率はもっと悪い。

だったらインフルエンザの検査に意味がないと思う人がいるかもしれません。

ここで決定的に違うのはウイルスに直接効く薬の有無です。

インフルエンザにはタミフルを筆頭とした抗ウイルス薬があります。

陽性者には早い段階でタミフルを使うことで重症化を防げます。

陽性的中率が50%もあれば2人に1人は問題解決に直接つながる薬を出せることになります

結果として重症化や感染拡大を防ぎ大きなメリットを生みます。

この特効薬によってメリットが検査を行うリスク&デメリットを上回るからインフルエンザ検査はどんどん行われているのです。

このように

検査は治療方法とセットになって意味を成します。

治療方法のない検査にはやれることがない為、意味が薄いです。

残念なことに現状コロナウイルスに直接効く薬は存在しません。

(目下開発はされているが使用に耐える安全性、有効性で十分なエビデンスは当然まだない)

つらい症状を和らげる薬しか存在しないため、重症化を防ぐことはできません。

重症化を防ぐ唯一の方法は栄養のある食事と十分な休養しかないのです、

早期介入すれば重症化を防げるを思っている人もいるかもしれませんが、それは現状できません。むしろ病院に行く体力、待つ体力を使う分重症化するかもしれません。

上記の通り、軽症から中等症しかない患者の安易な検査は大きな感染拡大のリスクを生むが、それを打ち消すだけのメリットは生まない。せいぜい軽症者の安心ぐらいです。

まとめ

まとめ
  • 発熱があってコロナじゃないか心配なんだけど、病院が検査してくれない!!
  • 国がオリンピックの為に検査数を抑えているんじゃないの?
  • なんで検査力には余裕があるのに検査しないんだ?

不安なのは最もですが、医師が『有病率が低く検査が機能しない』と判断した結果です。有病率が低いのでかかっている確率は低いです安心しましょう。もちろん医師も人間ですから間違うこともあるかもしれません。それでも一般人よりははるかに高い有病率をだします。国家資格は重いのです。

安心してください。素人の判断とは天と地の差です。信じましょう。

この記事を読み安易なコロナウイルス検査を控えようと意識を変えて頂け、医療資源が適切に配分される様になれば至極幸いです。