子宮頸がんワクチンの現状

最近新型コロナウイルスのワクチンが求められておりますが、既にワクチンがあるにも関わらず積極的に使用されていないものがあることをご存じでしょうか。それは子宮頸がんワクチン(以下HPVワクチン)です。
子宮頸がんは日本でも年間3000人が亡くなる病であり、助かっても子供を授かりにくくなる可能性があります。少子高齢化の日本の根幹に関わる病です。
しかしながら、有害事象の問題をメディアで取り上げられ、日本では積極的接種が控えられています。ちなみに世界的に積極推奨を控えている国は日本だけと言っていい状態です。世界ではワクチン不足が起きていますが、日本では余っているという異常な状態になっています。日本の接種率は約1%と言われています。
安全性や有効性に関する情報を各機関が発表していますが、情報は散逸的であり一般の方が判断することが難しい状態です。
そこで、今回、公的に発表されている情報を時系列で表にしてまとめました。
HPVワクチン関連WHO,コクランの発表

時系列でWHOとコクランの発表とポイントをまとめています。見出しに原著へのリンクも付けてありますので合わせて参照ください。
HPVワクチンの安全性に関するステートメント
2015年12月
WHOワクチンの安全性に関する諮問委員会(GACVS)発行
要約:HPVワクチンの使用を支持する。
ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種推進に向けた関連学術団体の見解
2016年4月
予防接種推進専門評議会15団体、関連学会2団体発行
要約
- 有害事象の発生時も含めた社会として十分な接種体制がほぼ整った
- HPVワクチンの国外における確固たる有用性が示された。
- 積極的な接種を推奨する。
※こちら日本の見解ですが重要なので入れております。日本語ですので見出しをクリックして是非読んでみてください。
WHOポジションペーパー
2017年5月
WHO発行
要約:HPVワクチンは優れた安全性及び有用性を持つ。
安全性情報のアップデート実施
2017年7月
WHOワクチンの安全性に関する諮問委員会(GACVS)発行
要約:懸念すべき新たな有害事象は確認されていない。
コクラン-HPVワクチンのレビュー
2018年5月
コクラン共同計画発行
要約
- 子宮頸部前癌病変を予防することを示す確実性の高いエビデンスがある
- 重大な有害事象を生じるリスクは増大しないと評価
子宮頸がんの制圧に向けた世界規模での協調的な行動要請
2018年5月
WHO事務局長発行
要約:子宮頸がんはHPVワクチンで予防され、早期発見と効果的な管理をされうる限り最も予防可能かつ治療可能ながんの1つと評価
日本国内の研究

それでは日本の研究はどうなっているのでしょうか?代表的な研究は下記2つになります。同様に見出しにリンクいれてあります。
青少年における「疼痛 又は運動障害を中心とする多様な症状」の受療状況に関する全国疫学調査
発表年:2016年
研究者:厚生労働科学研究班
結論
- HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」を有する者が一定数存在する。
- HPVワクチンと接種後の症状に対して因果関係は言及できない
名古屋スタディ
発表年:2018年
研究者:鈴木貞夫
結論
- HPVワクチン接種後に認められた24の症状について疫学的に調査を実施したところ24の症状の発生頻度はHPVワクチン非接種群と比較してHPVワクチン接種群で増えるという結果は認められなかった 。
- ワクチン接種群に多くみられた症状は月経血量の異常のみであった。
終わりに

WHO、コクラン、日本の研究を紹介しました。世界的に子宮頸がんワクチンは好意的な評価を受けていることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
前述のとおり年間3000人が亡くなる病です。助かっても子供が産めなくなるかもしれません。ワクチンで防げます。お子さんの為にも一度婦人科で相談してみてください。
追記
※2020/04/11進展がありました。
9価が承認審査に進んています。製品名はシルガード9です。