特例承認されたべクルリーの添付文書解説

はじめに

べクルリーの記事は色々なスペシャリストが書いてますし、記事にするつもりは無かったのですが、

「特例承認の医薬品なんだし、一応ちゃんと添付文書読んでおくか」と思い確認したところ。

なんだコレ?めちゃめちゃ勉強になるじゃないか。少々感動しました。

一言で言うなら「変わり者添付文書」ですね。

特例承認なんて滅多にないので製薬会社勤務の人は一度目を通すべきだと強く思います。

この感動を忘れないうちに目に付いた部分をまとめたいと思います。

製品名周辺

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まずは製品名の真上。赤枠で囲ってある部分です。

注意−特例承認医薬品って書いてあります。当然普通の薬にはありません。ただコレは少し小さくないですか?重要な情報だと思うのですが…注意って書いてあるのに小さいとか少しズルいような…(笑)添付文書は書き方がルール化されてるので、ルール通りの書き方なのでしょうが…

少しネット通販の規約の中に小さく良くない事を書く手法をイメージしてしまいました。

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製品名の下にもちゃんと書いてあるし私が過敏になり過ぎかもしれませんね。

こっちには特例承認だから注意してつかってね。患者の合意とってね。なんかあったら報告してねと書かれてます。

警告・禁忌

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続いて禁忌&警告

腎機能、肝機能は毎日モニタリングか…

最初から危険性言われている部分だし、ギリアド・サイエンシズと厚労省も徹底して安全に使おうとしていますねぇ。

効能又は効果に関連する注意

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この部分は非常に興味深いです。個人的にはココが1番目を引きました。

メーカーの基本スタンスって、添付文書に書いてある以上の方法では使わないでね!書いてあることが全てだから!変な使い方しても責任とりませんよ??添付文書内の責任はとりますからね??ってスタンスなんですよ。

でもこれは最新情報確認して使ってね!添付文書が全てじゃないよ?最新情報確認せずに、既にわかってる情報無視して使わないでね…と添付文書に責任の全てを負わせない書き方をしているんですよね。

まぁこう言う書き方になっちゃうのだとは思いますが、

見方を変えると医師&薬剤師に責任の一部をメーカー側から求める様な文章

なのでギョっとした方もいらっしゃったのではないでしょうか。

顧客に寄り添う立場としてはしっかり伝えなければいけない内容であると同時に少し抵抗も感じてしまいます。

腎・肝機能について

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腎機能障害は有名でしたが、腎機能障害の原因、添加物なんですね。知りませんでした。スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンって溶解補助剤みたいだけど、代替方法無かったのか、研究中なのか…

いい見方すれば、将来的に改善する可能性は残ってそう。

eGFR30以下とALT5倍についてはリスク判断してから慎重投与みたいですね。これは臨床試験の除外基準で除外されて全くデータないからでしょうね。

相互作用と副作用

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相互作用と副作用って通常、表になっていて色々書かれているのですが、これだけです。

特例承認でデータ少ないからと書いてあります。

ここも特徴的ですね。今後どんどん追加されるのでしょうが、ほとんど意味なしてないですね。仕方ありませんが…

前述の最新情報見てね!!って部分を如実に表していますね。

特定の背景を有する患者

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片っ端からデータなしですね。

これも特例承認ゆえ許される添付文書ですね。すごいな本当に。

臨床試験

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承認の根拠になった試験が書かれています。

これの除外基準に腎機能と肝機能の慎重投与は合致してますね。

ただNIAID ACTT-1試験の有害事象の記載が何故ないんだ??という疑問があります。RCTである1番メインの試験ですよね?…他の試験には書いてあるのに。

ここは単純に不思議でしたね。気になってる人多そうですけど、間違いなく1番大事なデータなのに書かれていないんですよね。

ちなみに他の試験の有害事象は

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SARS-CoV-2による感染症患者を対象とした人道的見地から行われた本剤の投与経験の有害事象

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GS-US-540-5773試験(NCT04292899)

こんな感じで書かれてます。SARS-CoV-2による感染症患者を対象とした人道的見地から行われた本剤の投与経験なんて報告ベースで全て並べてる感じですね。雑多な感じがリアリティあります。この雑多さも他の添付文書では余り見ないですね。

NIAIDの有害事象データ記載がないのはなんでなん??ギリアドさん。

承認条件

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医療従事者か最新情報を簡単にゲットできるように対策しろと書かれています。

効能又は効果に関連する注意のところで「最新情報確認してね!」と書いてあるので、「じゃあ企業としても最新情報見やすいように対策しろよ」という事なんだと思います。

納入得意先は限られているでしょうし、暫くMRが毎週、毎日訪問するとか、まとめサイトつくるとかするのでしょうか?情報を最速で届けるためにどんな企業努力するのでしょうか?ここはメーカー勤務としては気になるところです。

使用している医療機関って縛らずに医療従事者と広く書いているからMRだけでは不十分な気はしますけどね。お問い合わせセンターとかも強化するかもしれませんね。

顧客の為に何が出来るのか、何をするのかチェックして勉強させてもらいたいです。

あと追加資料を9ヶ月以内にだしなさいという記載も特例承認だからでしょうね。

これも気になる点で、世界的に新規の患者が減り始めていますし、重症患者となると更に少ないでしょう。高い薬なので使えない人も考えられます。データ集め難航しそうだなと少し思いました。

ギリアドが無償提供したり後発品会社に作らせたりして、データを多く得ようとしているのはタイムリミットとこう言う背景があるからかもしれませんね。

まとめ

いやー特例承認だけあって、添付文書も特例ですね。

全体のイメージとしては「わからないこと多いから細心の注意払ってつかってね。最新情報チェックしてね」という部分が目立つ作りになってますね。

特例承認の背景考えれば当然ですが、添付文書としては非常に面白く勉強になる内容でした。

べクルリー以上に異例の承認になりそうなアビガンの追適はどんな添付文書になるのでしょうか。興味と恐怖が尽きないです。

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