製薬会社のWEB面談が抱える問題

前回の記事では製薬会社のWEB面談が抱える問題をシステム面から考察させて頂きましたが、今回はソフト面、人について切り込んでいきたいと思います。
ハード面、システムの問題も絡んではいますので恐らく前編を確認いただいた方が分かり易いとは思います。まだの方は興味があれば先に以下記事を確認ください。
おつきあいください。
製薬会社・MR側の問題
今、WEB面会が進んでいない会社・MR側の問題として感じている点は2点あります。一つ目がMRのWEB面談の経験値不足、そして二つ目が提供できる情報のクオリティが低くMR自身が諦めているケースです。
WEB面談の経験不足
まずは経験不足です。経験が浅く有効な活用方法や、どのような準備をするべきか分かっていない人が多い様に思います。いきなり環境が変わりましたからね。適応できていない人々が多いです。
準備するにしてもWEB固有の問題難しさを十分に認識しておらず、何を準備するべきかわからない。そのため漠然とした不安にとらわれ身動きが取れなくなっています。これはMR個人の問題でもありますし、この状況への対応をMRに丸投げしている会社としての問題の両面の問題があると思います。
漠然とした不安って行動変化の時に常に伴う問題ですよね。変化に対応する必要は分かっていても全員ができる訳じゃないですからね。そもそも人間は変化に弱い生き物です。大きな変化にはフォローがあった方がいいです。
そろそろ各社ノウハウも集積してきているはずなので、会社として最低限のマニュアルを作るべき時期にきているのではないでしょうか。営業所レベルのノウハウ伝搬でも良いかもしれません。
顧客の不利益につながる可能性もありますので製薬協とかが動いてくれるとベストですがそれは望みすぎでしょう。
提供できる情報のクオリティが低くMR自身が諦めている
本当に提供できるデータがないのか、あっても使い古したデータしかなく医師の興味を引きづらいという2点が考えられます。多いのは使い古したデータしかなく顧客が完全に理解していると思っているケースではないでしょうか。
しかし人間は忘れる生き物です。記憶力に関する研究はエビングハウスの忘却曲線が有名ですが、この研究でも1週間たてば、記憶の節約率は約2割と1回目の記憶にかかった努力量の8割も必要とすることがわかっています。
毎週面会している先生でも1~2回紹介したデータは詳細までは、ほとんど覚えていないと言い切っても大丈夫だと思います。さらに情報の提供角度を変えることで新鮮な気持ちで聞いてもらえる可能性も上がります。
工夫は必要ですが同じデータを使うことに億劫になるのは勿体無いです。まぁある程度長く働いているMRは皆知っている内容かもしれません。
顧客側はなぜWEB面談をしないのか

続いて顧客側の思考回路を考えていきたいと思います。都道府県によって感染状況や対策、意識も大きく異なる状況になってきましたので、会うことが出来る場合とできない場合に分けて考察を行っていきたいと思います。
現状、会うことが出来る場合
人口密集地以外では開業医の先生方にはかなり面会ができるようになってきていると聞きます。面会が可能な場合でも、これまで通り直接会って話すことを重要視している顧客と歓迎はしていないけど他の方法よりはいいと思って面会している顧客がいるかと思います。
直接あって話すことを重要視している
顧客の中に一定数いらっしゃいますが、MRと直接会って話すことを楽しんでいただいている顧客がいます。面会に情報のみを求めている訳ではなく個人間のつながり等を重要視している顧客なのでWEB面会はやめましょう。完全にニーズ外です。這ってでも情報提供に伺いましょう。
会うことはできるけれど、歓迎はしていない
意外とねらい目じゃないかなーと思うのがこの層の顧客です。訪問しすぎを歓迎しない顧客ですね。情報はほしいけどMRの邪魔な面もご理解いただいている顧客です。駐車場が埋まるのが嫌とかMRが沢山きすぎて大変とか、空気読まないMRが帰らなくて嫌とか、製薬会社のMRならばどこかで一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
こういった不満がある顧客にとってはWEB面談は福音になる気がします。駐車場が埋まることもなければ、面会自体も医師の都合で制限しやすいですしね。なかなか帰らない奴には切断という最終手段もあります。
現状、感染対策で会うことが出来ない場合
これも2ケース存在すると考えていまして、そもそも感染対策のド本流の病院に在籍していて、COVID-19で忙しくて会う状況ではないというケース。そして忙しくはないが会うことが出来ないケースです。
COVID-19で会う状況でないほど忙しい医師
COVID-19で会う状況でない医師は本当にその通りですし、余計な負担をかけないためにも感染制御に役立つ情報を有する製薬会社以外はアプローチを控えるべきでしょう。
感染制御に役立つ情報であっても、手紙やメールで対応しできるだけ顧客に生まれた余剰時間で確認していただけるように、過剰に配慮するべきかと思います。
COVID-19で異様に忙しくはないが、WEB面会も出来ない医師
製薬会社が一番苦慮しているのは、COVID-19で異様に忙しくはないが病院の訪問規制で会うことが出来ない上にWEB面会が出来ない顧客でしょう。
この顧客の中にはWEB面会は使えるけれど、製薬会社とWEB面会するメリットを感じない、デメリットを感じているというケースとWEB面会の必要性は分かっているが、使い方がわからないというケースがあります。
WEB面会するメリットを感じない、デメリットを感じている
メリットやデメリットを感じている顧客がいる状況は完全に製薬会社の責任です。MRが持ってくる情報に魅力を感じず、Googleで十分だと思われていたり、そもそもMRが信用されておらず連絡先を教えるのが嫌だと思われている訳ですから。ひょっとするとWEB面会自体が嫌いというケースもあるかもしれませんが全体では少数派ではないでしょうか。
裏を返せば、有用な情報やGoogleに載っていない情報でしたら会っていただける訳です。なので会社ごとに差がありそうだなとは思っています。ラインナップの影響もありますが、現場と本部が連携してこの問題に取り組んでいるか否かという点も大きいのではと思います。
必要は感じているけど使い方がわからない、漠然とした不安
恐らく医師側にも漠然とした不安を感じて使っていない人が一定数いるはず。特に高齢になればなるほど、この傾向は出てくると思います。WEB診療で業務拡大を狙わない場合、顧客の方が業務に及ぼす影響が少ない分、ひょっとすると多いかもしれません。
まとめとおまけ

基本的なWEB面会に対する対抗としては
- ノウハウの集積
- 紹介するデータを工夫して真新しさを出す。
こんなところでしょう。顧客ニーズにしたがって上記対応をMRは行っていくことが基本スタイルとなるのではないでしょうか。
その中で
- 訪問しすぎを歓迎しない顧客
- WEB面会システムを使えるけどWEB面会するメリットを感じない、デメリットを感じている顧客
- WEBに対する漠然とした不安をもつ顧客
上記3つの背景を持つ顧客はアプローチ次第でWEB面会が有効な手段となるかもしれません。
データの見せ方の工夫やGoogleに載っていない情報を本部連携で発信しアポイントにつなげていくことが出来たり、WEBに対する漠然とした不安を解消していくことが出来れば、他社と差別化につながるのではないでしょうか。