治験の健康被害(メディアによる悪影響)

はじめに

少し前に

薬害歴史から非専門家のアビガン積極推奨に警鐘を鳴らす。という記事を書きました。

Twitterでこれに関連する話題をフォロワーさんと話していたところ

メディア情報が原因で薬害といえるもの起こっているよねとコメントを頂きました。

確かに、BCGの誤った投与はメディアに踊らされた明らかな医療過誤である。厳密に薬害かというと議論が分かれるところかと思うので、整理しながら紹介したいと思います。

薬害の定義

まずは薬害の定義であるが、これって厳密な定義というものは存在しないのですよね。

ただ言われているものとしては

  1. 適正使用によっても起こり得る副作用⇒薬害ではない。しかしながらこれが社会問題にまで大きくなれば薬害になりうる。基本的には薬害にはならない。
  2. 適正使用をすれば防げる副作用のうち、広範囲にわたらず個人レベルのもの⇒医療事故
  3. 適正使用をすれば防げる副作用のうち、広範囲にわたり社会問題化したもの⇒薬害
  4. 企業や国の不正行為が原因で起こった健康被害のうち社会問題化したもの⇒薬害

3と4が薬害ですね。

「不適切に医薬品が使われた結果、被害が個人ではなく広範囲にわたり社会問題化したもの」これが一般的な薬害の定義で問題ないと思う。

そういった意味ではこれから紹介する事件は個人レベルであるため薬害とは言えないかもしれません。しかしながら、その性質自体は薬害に近くメディアによって医薬品の不適切な使用が行われ起こったという点は変わりません。

プレ薬害といえるものだと思う。

コロナ報道による医療被害

メディアによって適正使用を誤った事件は間違いなくBCG皮下注射事件でしょう。

毎日新聞の記事を紹介します。

細い9本の針を刺す「はんこ注射」と呼ばれるBCGワクチン接種について、誤って皮下注射し、発熱やじんましん、血尿などの健康被害が出ていたことを厚生労働省が10日、明らかにした。BCGは0歳児が対象の結核予防ワクチンだが、新型コロナウイルス感染症を予防しようと接種を受けた成人だった。乳児向けの在庫が不足しており、製造元は目的外の使用を見合わせるよう医師らに求めている。 BCGは本来、腕に塗ったBCG溶液のうち、細い針でわずかな量だけ体内に入れる。説明文書には「絶対に注射してはならない」と記載されている。同省によると、4月初め、BCG溶液を成人に全量注射し、間もなく発熱などがあり救急外来を受診したという。もともとBCGを扱っていない医療機関だったため、誤った可能性がある。

引用元:https://mainichi.jp/articles/20200410/k00/00m/040/275000c

新型コロナウイルス予防にBCGが効くかもしれないという疫学データをもとにBCGワクチンを使いなれない医師が大人にBCGワクチンを使った結果おきてしまった健康被害です。

この事件の問題点は下記3点です。

  1. 大人に使用したこと:適応間違い
  2. 全量使ったこと:用量間違い
  3. シリンジで皮下注射したこと:用法間違い
  4. 新生児用ワクチンは計画生産であるため、新生児の分を奪っている事。

用法・用量だけでなく、適応患者まで間違っています。

BCGワクチンは小児で臨床試験を行っているため、成人への効果は不明です。

さらに言えば、新型コロナへの好影響に関しても、

・子供のころ打っていた人が重症化しにくいかもしれないというものであって、

・大人になってから打って重傷化しにくいというものではありません。

あくまで疫学データですし、差はありそうですが、かもしれないレベルなのでまだまだ研究段階です。

こういった情報を報道せず、期待感だけを持たせる報道をした結果、扇動された民衆が間違った行為をとってしまったわけです。

結果

・誤った情報を根拠とした使用による重篤な副反応

・間違った適応・用法・用量による重篤な副反応

・本来使用すべき新生児が使用できない

という被害を生み出しました。

もちろん本来ストッパーの役目を果たすはずの医師がその役目を果たさず、さらに間違った使用を行ったことは大きな問題です。

しかしながら、不確かな情報をもとに有効性に偏った報道を行いリスクを正しく伝えなかったメディアにこそ、大本の問題は存在しています。

仮に最初の報道の段階で

  • 本来の適応でない事
  • 現状では使っても意味がない可能性が十二分にあること
  • 大人に使った場合の有効性や安全性が不明であること

これらが十二分に報道されていればこの様に扇動される人はいなかったのではないでしょうか。

先の記事でも述べましたが、ワイドショーのコメンテーター等の薬害教育を受けていない素人が安易に医薬品の積極使用を訴えるべきではありません。あやふやな情報に扇動された民衆の先には健康被害しか待っておりません。

コロナ治験でおける医療被害

治験における医療被害はクロロキンの治験でおきています。

ブラジルの研究チームは、ブラジル北部マナウスの病院に入院中の新型コロナウイルス感染症患者81名を対象に、クロロキンの効能と安全性を評価する臨床試験を実施。すべての被験者に抗生物質の「セフトリアキソン」と「アジスロマイシン」を投与したうえで、そのうち41名に、1回600ミリグラムのクロロキンを10日間にわたって1日2回、合わせて12グラムを投与する一方、残りの40名には、1回450ミリグラムのクロロキンを初日のみ1日2回、その後4日間、1日1回、合わせて2.7グラムを投与することにした。しかし、被験者のうち11名が死亡し、臨床試験は6日目で中止された。6日目までの臨床試験の結果によると、クロロキンを高用量投与したグループで死亡者数がより多く、クロロキンが重症な不整脈を引き起こすおそれがあることもわかった。クロロキンを高用量投与した後に死亡した患者2名は、死亡する前、心室頻拍が認められた。また、低用量投与した患者でも死亡例があることから、低用量投与であれば安全であるとも言い切れない。

 引用元:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/04/post-93145.php

この使用方法は治験で適切に使われた結果です。しかし被害は11名死亡と広範囲。

この時にどうしても私が拭えない疑問点が3点かあります。

  1. クロロキン網膜症薬害事件
  2. 致死量の問題
  3. 心臓毒性の問題

上記3点です。これらを見ていきます。

クロロキン網膜症事件

まずは網膜症事件ですが、前回の記事

薬害歴史から非専門家のアビガン積極推奨に警鐘を鳴らす。でも紹介した通り

クロロキンは1969年ごろに網膜症に関する薬害事件を日本で起こしています。

しかしながら、さかのぼること20年前の1948年にはアメリカ軍でクロロキンの網膜症はすでに報告されています。

日本で薬害があり、アメリカでも半世紀以上にわたり使われている薬剤の用量設定をブラジルの研究チームは間違え死者を多く出したのです。

さんざん安全性解析などこれまでされていそうなものだと、違和感を感じました。

致死量と心臓毒性の問題

次に致死量と使用量の問題です。クロロキンは有効量と致死量が非常に近い薬剤です。致死量2~3g程度。通常使用量1g/日です。

間違って2日分飲むだけであの世行きの毒薬です。そして急性毒性として心臓毒性が知られています。

今回の治験においては1.2g/日の高容量を投与して不整脈を起こしています。

循環器系に影響を与える肺炎患者に対して、心臓毒性のある薬をいきなり高容量処方する。

これを治験で行った訳です。こちらも何となく違和感を感じます。

私は専門家では有りませんので考えすぎかもしれませんが、致死量と有効量が近い薬剤にも関わらず、怠慢または長年使われてきた安心感から積極的な用量設定をしてしまったのではないかと疑念を抱いてなりません。

これの通りならば人災による広範囲への健康被害なので立派な薬害になると思われます。

なにより過去に薬害を起こした薬剤で11名の命が奪われてしまったことは、非常に残念でなりません。

終わりに

クロロキンの治験の失敗の様に臨床試験では専門家でも健康被害を起こしてしまいます。ましてや情報の錯綜と報道の過熱で断片的な情報を知った民衆がBCGの様に健康被害を起こさない訳がありません。

こういったことを避けるためにも薬関係の報道にはリスクとベネフィットのバランスを願いたいです。

また、断片的な情報に惑わされそうなときには薬害の教訓を振り返ってほしいです。

事件を覚える必要はありません。

  • 用法容量を守って正しく使われているのか?
  • 対象は適切か?
  • 医師薬剤師の言う通り使っているか?

上記を振り返ってください。少しでも違いがあったのならば、それはデータのない不適切な使用だと思った方が良いです。健康被害につながるリスクをはらんでいるといえます。

この記事によって、医薬品が適切に使用される世の中につながればいいと切に願います。