目次
ポイント
- FDAが重症再生不良性貧血(SAA)向けにOmisirge(omidubicel-onlv)を承認
- 既に血液がん向けに使われていた薬で、今回は6歳以上のSAA患者に適応拡大
- 適合する献血ドナーが見つからない人向けの新しい造血幹細胞移植の選択肢
- 臍帯血を“ビタミンB3の一種(ニコチンアミド)”で処理し、回復を早めるのが特徴
- 好中球(感染防御を担う白血球)が早く増えることで、感染のリスクや入院期間の短縮に期待
- 希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)・優先審査の指定を受けて承認
詳細
米FDAは12月8日、重症再生不良性貧血(SAA)の患者さん向けに、細胞治療薬Omisirgeを承認しました。
再生不良性貧血は、骨髄が赤血球・白血球・血小板をうまく作れなくなる病気で、貧血、感染、出血などが起こり、命に関わることもあります。
従来の主な治療は、
- 免疫抑制療法
- 適合したきょうだい・親族からの造血幹細胞移植
でしたが、適合ドナーが見つからないケースでは治療の選択肢が限られていました。
ドナーがいない場合の代替として、臍帯血移植が使われてきましたが、
- 血液が回復するまで時間がかかる
- その間に重い感染症を起こしやすい
といった課題がありました。
Omisirgeは、臍帯血から採取した造血幹細胞をニコチンアミド(ビタミンB3の一種)で処理し、「増えやすく・根付きやすく」したうえで移植する製品です。これにより、
- 白血球の回復を早める
- 感染症のリスクを減らす
ことが狙いです。
今回の承認により、Omisirgeは
- これまでの「血液がん(12歳以上)」に加え
- 「6歳以上の重症再生不良性貧血で、適合ドナーがいない患者」
にも使えるようになりました。これは、SAAに対する初めての細胞治療薬という位置づけになります。
試験結果(進行中試験の中間データ)
6歳以上の重症再生不良性貧血患者を対象とした、単群・前向き・オープンラベル試験の結果が承認の根拠となりました。
- 対象:6歳以上の重症再生不良性貧血(SAA)
- 解析対象:14人(有効性評価集団)
- 好中球の生着(早期かつ持続的な回復)
- 12/14人で達成
- 好中球回復までの中央値:11日
- 範囲:7〜20日
主な副作用
- 発熱性好中球減少症
- ウイルス感染・細菌感染
- 高血糖
- 免疫性血小板減少症
- 肺炎
- 自己免疫性細胞減少症:25%の患者で発生
いずれも重い病気の治療に使う移植用製剤であるため、副作用も軽いものとは限りません。専門施設での厳重な管理が前提となってます。
今回の承認の意味
- 適合ドナーが見つからないSAA患者さんに、実用的な造血幹細胞移植の新しい選択肢ができた
- 臍帯血移植の「回復が遅い」「感染が多い」という弱点を補うコンセプトの製剤
- 早期の治療介入により、その後の人生の経過を大きく変える可能性がある、とFDAはコメント
再生不良性貧血の世界では、長年「ドナー探し」が大きな壁でした。
Omisirgeの登場により、「ドナーがいないから移植が難しい」という状況が、少しずつ変わっていくかもしれません。
参考情報
FDA Approves First Cellular Therapy to Treat Patients with Severe Aplastic Anemia
