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TIGIT抗体の解説【次世代免疫チェックポイント阻害薬】

TIGIT抗体とは

TIGIT抗体とは

TIGIT抗体は抗PD-1/PD-L1抗体に続く次世代の免疫チェックポイント阻害薬(抗がん剤)として期待されている薬剤です。絶賛開発中です。開発中ですので当然、未承認です。ただ期待も高い薬剤で多くの企業が研究しています。作用機序も面白く、私も個人的に非常に期待している薬剤の一つです。

TIGIT抗体は、T細胞やNK細胞に発現しているTIGITという受容体を阻害することで、T細胞が活性化し、がん細胞を攻撃することが期待されています。なおTIGITはT-cell immunoreceptor with Ig and ITIM domainsの頭文字をとっています。

抗体の働き

抗体の働き

TIGIT抗体は抗体ですので、TIGITに特異的に結合することでその機能を失わせます。物質特性としては非常に単純です。TIGITにくっついて阻害するだけです。その阻害する場所がT細胞やNK細胞にとって非常に重要な場所なんですね。実際どういった作用機序なのかを次項で紹介いたします。

関連記事:igG、igMって何?抗体の役割とは 

TIGIT抗体の作用機序

TIGIT抗体の作用機序

それでは作用機序を図を用いて紹介します。わかりやすくするため少々端折っていますご容赦ください。T細胞、NK細胞の働きを利用した薬剤ですのでT細胞って何?という方は過去記事:T細胞の種類と役割も参考にしてください。

今回の主役は2つの受容体と2つのリガンド(受容体刺激する役割をもつもの)です。

受容体はTIGITとCD226の二つです。この二つはNK細胞とT細胞の表面に存在しています。CD226はDNAM-1という名前の方がメジャーかもしれません。DNAM-1表記も多いですが、これらは同じものを表しています。

そしてこの二つの受容体を刺激する2つリガンドがCD155とCD112です。これらはTIGITとCD226の両方を刺激します。
TIGIT抗体の作用機序

CD155とCD112がTIGITを刺激すると、T細胞やNK細胞はその活性を急速に失い。仕事を辞めてしまいます。唯一免疫反応のブレーキ役のTregだけは活性化されますが、ブレーキが活性化されるのでTreg活性化の結果、その他のT細胞たちは活性を失います。

逆にCD226が刺激された場合はNK細胞&T細胞は活性化します。活性化の結果がん細胞を攻撃して消滅させます。

ざっくり言うと

  • TIGIT刺激→免疫抑制
  • CD226刺激→免疫活性化

といったところです。

ここで重要なのが生体内においてTIGITとCD226がCD155とCD112を奪い合う関係になっている点です。さらに優先順位ではTIGIT>CD226となっています。つまり、通常条件下ではCD155とCD112はTIGITを優先的に刺激し、基本的にはT細胞&NK細胞の活性化を抑制する方に働いています。

更にがん細胞はTIGITを刺激すればNK細胞やT細胞の活性を落ちることを知っています。がん細胞は攻撃してくるT細胞やNK細胞から逃れる為、がん細胞表面のCD155とCD112の数を増やしています。そうすることでTIGITを刺激し免疫細胞から逃げやすくやすくしています。

結果T細胞やNK細胞が抑制され、がん細胞がそれら細胞から逃げられるようになる訳です。

TIGIT抗体の作用機序

優先順位ではTIGIT>CD226である以上、このままではT細胞やNK細胞が活性化せず、がん細胞に逃げられ続けてしまいます。ならば抗体の力を使って、TIGITを阻害することができればTIGIT<CD226となり逆にT細胞が活性化するのではないかと研究者は考えた訳です。

さらにがん細胞は前述のとおり、逃避のためCD155とCD112を増殖させています。

抗体の存在によりTIGIT<CD226となった環境ではがん細胞に対して、T細胞やNK細胞は逆に活性化しやすい状態に変わります。CD226が刺激されたことで活性化されたT細胞やNK細胞はがん細胞を攻撃し消失させることが期待されています。

TIGIT抗体の作用機序

がん細胞が自ら増やしたCD155とCD112によってT細胞、NK細胞がどんどん活性化されます。

現在、発表されている臨床試験

現在、発表されている臨床試験

つづいて実際の臨床試験を確認していきたいと思います。開発中の薬ですので十分なデータのある薬はありません。そんな中、開発が進んでいるのが中外製薬のtiragolumabです。読み方はチラゴルマブでいいのでしょうか。

tiragolumabに関する研究結果は、ASCO2020(アメリカ臨床腫瘍学会2020)にて第Ⅱ相試験(P2)であるCITYSCAPE 試験が発表されました。CITYSCAPE 試験は初回治療のPD-L1 陽性⾮⼩細胞肺がん患者さんを対象に、有効性と安全性をtiragolumab +アテゾリズマブ(テセントリク)とプラセボ+アテゾリズマブを⽐較しています。P2ですので症例数は少なくなりますがランダム化⼆重盲検プラセボ対照⽐較試験です。それでも135例を1:1で振り分けています。

本試験はPD-L1陽性の患者ですので抗PD-L1抗体のアデゾリズマブの効果は期待できますが、それにtiragolumabを加えることで上乗せ効果がみられるかということを調べた訳です。

主要評価項目は以下の通りです。 

  • Overall response rate(ORR):全奏効率:効果があった患者さんの割合。
  • Progression-Free Survival(PFS):無増悪生存期間:がんが悪化せずに生存している機関

ORRの結果

ORRの結果は31%16%=tiragolumab+アテゾリズマブ:プラセボ+アテゾリズマブ

 PFSの結果

PFSの結果は5.42か月(95% CI: 4.21-Non-Evaluable):3.58か月(95% CI: 2.73, 4.44)

=tiragolumab+アテゾリズマブ:プラセボ+アテゾリズマブ

対照群と比較して両方とも主要評価項目を改善しています。

また副作用に関しても

・安全性プロファイルは両群で⼤きな差はなかった。
・免疫介在性の有害事象は、tira+atezo 群でより多く認められたが、主にグレード1-2 の注射部位反応や発疹などで、いずれも管理可能であった。 

引用:https://www.chugai-pharm.co.jp/cont_file_dl.php?f=FILE_1_100.pdf&src=%5b%250%5d,%5b%251%5d&rep=117,100

と記載されています。

もちろんCITYSCAPE 試験は第Ⅱ相試験ですので、この結果をもって有効性・安全性を断定することは言語道断です。

まだまだ限られた症例でしか使われていませんし、予期せぬ副作用で治験失敗になる可能性は残っています。しかしながら今後に非常に期待が持てる第Ⅱ相の結果であることは間違いありません。 

終わりに

いかがでしたでしょうか、作用機序とTiragolumabの第Ⅱ相試験を中心にご紹介しました。非常にユニークな作用機序の薬剤です。うまくいけば新しい治療ムーブメントがきそうな気がします。

実はTiragolumabは既に非小細胞肺癌を対象としたSKYSCRAPER-01試験、SKYSCRAPER-02試験という第Ⅲ相試験が始まっております。

特にSKYSCRAPER-01試験は、PD-L1陽性の患者にTiragolumab+アテゾリズマブVSプラセボ+アテゾリズマブ。主要評価項目はPFSと全生存期間(OS)となっていましてCITYSCAPE 試験と同じような試験デザインとなっています。

試験結果がよく出ることを祈りたいですね。

余談ですがアデゾリズマブも中外製薬が製造しています。将来的にアデゾリズマブとの併用療法が認められた場合、非常に高い抗がん剤の併用療法ですので、中外製薬には莫大な利益が生まれそうですね…

 
中外製薬&ロシュはぼろ儲けかもしれません。