はじめに

MRって高給だし、大きな会社多いし安定してそうだよね。
国民皆保険から利益受けているわけだし。つぶれないでしょう?
何となくそんなイメージで製薬業界を選ぼうとしていませんか?
安定していそうだからという理由であるならば製薬MRは辞めた方がいいです。
本記事ではMRの現状について10年のMR経験をもとに紹介していきます。
MRは減っている

まず初めに現在MRは減り続けています。人員増加企業はほとんどありません。私の営業所も4年前(2016年)では28名いましたが、現在では20名まで減っています。4年間で70%の人員になりました。
結果としてMRの担当エリアは確実に広くなっていっています。
このトレンドは今後も変わらないと強く感じています。
結論を先に申し上げますと、人員だけで見ると斜陽です。定年まで働けるとは思わない方が良いです。変革を強く求められる職業になっています。
これから理由を考察します。
製薬会社は利益を出すことが年々難しくなっている
新薬創出コストは上がっている。新薬創出の為のコストは年々上昇し続けています。
研究開発費は1つ新しい薬を出すために2000億円/年が必要とされています。<10年前は1000億/年でした。10年で1000億円上昇しています。
余談ですが火星に到達した観測船ハヤブサの開発費が約400億円です。製薬会社は年5回、火星に観測船を飛ばす予算をかけ続けなければいけません。研究開発費の負担がどれほど重いかは感じて頂けると思います。
しかしながら、新薬の開発は製薬会社の生命線です。この研究開発費を減らすことは非常に困難です。(それでも改善しなければならず、スタートアップ買収によるビジネスモデルが流行りになっています)
薬価抑制とジェネリックの推進
国の医療費抑制の為の政策の一環として、薬価抑制がありますが、そこで推進されているのが毎年の薬価引き下げとジェネリックの推進です。
前述の通り、非常に苦労をして新薬を作り出しても、毎年薬価を下げられるリスクがあります。有名なのが小野薬品の抗がん剤オプチーボです。
非常に高価な薬剤ではありましたが、簡単に言えば売れすぎたという理由で現在は約25%まで薬価が下がっています。発売数年で75%オフです。
さらにジェネリックの問題もあります。10年たつと3割引きのジェネリックが発売されます。薬にもよりますが70%くらいは売り上げが減ってしまいます。
私も1000万円/月の売り上げがあった薬が250万円/月までジェネリックにより売り上げが減った経験があります。このように新薬ビジネスの難易度は確実に上昇しています。
製薬会社はMRを減さざるを得ない。
研究開発費の負担と、ジェネリックによる売り上げ減少や薬価そのものの減少で、製薬会社のかじ取りは難しくなっています。
それでも国は薬価の抑制を要求してきます。しかしながら研究開発費を削ることは将来、自社の首を絞める可能性があります。このとき削れるものとしてMRの人件費があります。薬価には、研究開発費や研究者の給料の他にMRや内勤スタッフの給料、営業所の家賃といった経費が乗っています。
MRを減らすことでこの経費を削り、薬価を抑えさせようということが現在行われています。MRを減らしなさいというメッセージは政府からも発信されています。
定年まで働けるか

次に定年まで働けるかというと、30代の私は非常に難しいのではないかと考えています。
優良業界である製薬業界ではリストラというものはほどんどありません。会社の身売りによって会社が変わることはありますが雇用は守られる傾向が強いです。ちなみにこの傾向は外資より内資の方が強いです。
しかしながらそんな中でも薬価減少に耐えるためにMRは減らさなければなりません。そこで推進されているのが希望退職です
希望退職
『希望退職だからリストラじゃないよね?』『希望しなければいいんだから大丈夫じゃない?』と思うかもしれません。
しかしながら企業は退職強要を行うことはできませんが、退職勧奨というものは行うことが出来ます。
具体的な退職勧奨は『あなたの現在のスキルですと現状と同じ職務を行っていただくことは困難です。弊社で今後ついていただく職務はこのようになります。これはあなたのスキルを活かせる職務ではないでしょうし、本意ではないかと思います。他のスキルを活かせる会社に転職した方が良いのではないでしょうか。退職金増やしますので考えてみませんか』というものです。
悪く言うと『今の仕事は用意できないから閑職用意するけど、それなら退職金つむから辞めない?』というものです。これにより辞めることを選択する人は少なくないです。
『窓際に追いやるけど続ける?』という脅しに近いです。
もちろん今の会社を辞めて転職したい人もいらっしゃるでしょうから、一概に批判できるものではありません。割り増し退職金も大きいですしね。
しかし、リスク管理の為に多くのMRが、退職勧奨を受ける可能性があるということは覚悟するべきです。一つの会社で勤め上げるという時代が終わったということなのかもしれません。
これからMRになる方は個人の能力によって時代の波を乗りこなしていく必要があります。
まとめ

製薬会社は他産業と比較すると安定している産業でありました。しかしながら時代の変化により、変革を求められ居ます。その渦中にあるMRもまた同じく変革を求められています。MRとして入社した会社で定年まで勤めあげることは、困難になるでしょう。
変革に対応しつづけ新たなポジションを得るのか
あらかじめリスク管理を行い転職しながらサラリーマン人生を全うするのか
私はこれらを考えMRになることをオススメいたします。