後発品の薬価算定

後発品って特許が切れた薬剤を安く発売するって認識でおおよそは間違いありませんが、細かい薬価ルールって知らないって言う人が多いのではないでしょうか。
特に昔の薬価ルールでは70%の薬価だったので、最近の後発品の価格を見て驚く人も多いのではないでしょうか。
直近の後発品ではエゼチニブが発売されましたが、先発のゼチーアが173.2円。後発品が63.1円と先発品に比べて36.4%と非常に安い薬価になっています。
ゼチーアは1つのクリニックで月100万円以上の売り上げがあるケースも珍しくありませんが、それが36万位になってしまう訳で莫大な市場が失われます。
後発品の薬価算定ルール

それでは実際の薬価算定ルールを見て行きます。なおこれから紹介するルールは2020年7月現在のものです。ご注意ください。
また納入価による薬価差益の話も少々登場します。納入価等に関しては過去記事:医薬品卸の談合問題にて解説しておりますので、気になる方はご確認ください。
発売時の薬価算定ルール
後発品の薬価算定は初めて発売される後発品と2番目以降に発売される既薬価収載の薬剤で異なります。それぞれ分けて紹介します。
初めて発売される後発品の薬価算定
初めて発売される薬剤の場合は、基本的に新薬の50%の薬価がつきます。100円の薬の場合50円になります。ただし同時に発売する会社が10社以上になるような製品の場合、これが40%に下がります。
ちなみに2014年4月までは70%(低下時60%)でしたが、価格面から患者の後発品を後押しするため引き下げられ2018年より現制度に変更されています。
更にひとつ注意点がありまして、新薬創出加算対象品目に関しては加算を返還した薬価を用いて算定されます。
新薬創出加算は特許期間中の新薬の薬価を維持する制度です。そのため、対象になった製品は薬価が本来の価格より高止まりしています。通常、特許満了後の薬価改定にて加算の返還を行い一気に薬価が引き下げられます。加算がなかった場合の制度上の薬価に戻るわけです。
この戻った薬価の50%ないし40%が後発品の薬価になりますので、加算品目の薬価はとんでもなく安くなることがあります。
直近の新薬創出加算品ですとセレコックスの後発品セレコキシブが発売されました。その薬価を確認すると
- セレコックス100mg:69円
- 後発品:19.6円(71%OFF)
- セレコックス200mg:106.3円
- 後発品:30.2円(71%OFF)
ここまで安いと経営上の問題から採用を見送る病院や薬局が出てきます。
100人の患者にセレコックス100mgを処方していた場合1日2錠の薬剤ですので6,000錠の薬が処方されます。69円の薬が6,000錠使われ414,000円の金額が動きます。医薬品卸から薬局への納入価が10%引きの場合41400円が薬局の売り上げになります。更にここから消費税が引かれます。
これが19.6円になってしまうと117,600円に取引額が減ります。納入価が10%の場合売り上げが11,760円に減ってしまいます。約30000円の売り上げ減少です。同様の売り上げを出すためには後発品の納入価を35%以上引いた値でなければ売り上げが減ってしまいます。
当然先発品の納入価が安くなれば安くなるほど後発品の納入価も安くせざるを得ません。先発15%引の場合、薬局が同様の売り上げをあげるためには52%引きの納入価が必要です。19円の薬を10円で卸してもらってやっと同じ売り上げがカバーできます。
既薬価収載薬の薬価算定ルール
既に薬価収載されている場合は簡単です。最低価格の後発品と同価格になります。
後発品の薬価改定ルール
後発品の薬価改定ルールはまず発売されている同じ成分の後発品を以下ルールにしたがって、3つの群に分けます
- 最高価格の30%を下回る算定額となる後発品を一つの価格(加重平均値)として収載(統一名収載):低薬価群
- 最高価格の30%以上、50%を下回る算定額となる後発品を一つの価格(加重平均値)として収載:準低薬価群
- 最高価格の50%以上の算定額となる後発品を一つの価格(加重平均値)として収載:その他の後発品群
バイオシミラーの薬価算定
後発品は一律50%引き、10社以上出た場合には60%引きと紹介しましたが、バイオ医薬品の後発品であるバイオシミラーに関しては先発品の30%引き、10社以上発売された場合は40%引きと優遇されています。
これには理由がありまして通常、非バイオ医薬品の後発医薬品は健康成人を対象にした生物学的同等性の試験の実施のみで発売できます。
しかしバイオシミラーの場合は、ここからさらに患者を対象にした臨床試験を実施し、先行バイオ医薬品との同等性/同質性を証明しなくてはなりません。
補足と終わりに

この他にも後発品関連の薬価ルールとして後発品への置換えが進まない先発品の薬価特例引き下げがあります。