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0からわかるCRISPR-Cas9(クリスパーキャスナイン):part1【原理と役割】

CRISPR-Cas9

CRISPR-Cas9

最近、新薬関連の情報ニュースでCRISPR-Cas9とかCRISPR-Cas3とかCRISPR-GNDMとか時々見かけますよね。

 

ゲノム編集の技術って分かっている方や詳細までわかっている方、様々かと思いますが、全くわかっていない方が概要を理解できる情報ってまだまだ少ない様に思います。

そこそこ詳しく概要を知りたいけど文献読見込むのは手間…って人多いと思うんです。

そこで今回はCRISPR-Casシステムの中で最も登場が多く基本となるCRISPR-Cas9について0から概要がわかる様に解説をしていきたいと思います。

専門分野の人にとっては退屈かもしれませんが、あまり関わりのない人や学生間で話題になったときに「あ、コイツ知っているな」と思ってもらえるくらいのレベル感にはなれると思います。

なお、少々大容量になるため

  1. 基本的用語、役割とDNA切断のメカニズム解説
  2. 遺伝子修復とゲノム編集
  3. 期待されている創薬への応用

上記3partでお届けします。今回はpart1基本的用語、役割とDNA切断のメカニズム解説です。

 
なお当記事は「CRISPR 究極の遺伝子編集技術の発見」ならびに「ゲノム編集の基本原理と応用」、「休み時間の分子生物学」を参考に作成しています。
 
どれも非常に面白いですが、特に「CRISPR 究極の遺伝子編集技術の発見」はCRISPR発見者の一人ジェニファー・ダウドナ教授が書いたこともあって熱がこもっておりオススメです。
 
最下部にリンク貼りますので気になった方は確認してみてください。
 

CRISPRの歴史

まずは簡単に歴史を紹介します。

CRISPR自体の発見は意外と古いです。その発見は1986 年。昭和61年まで遡ります。更にCRISPRの最初の発見者は日本人です。

石野 良純博士(九州大学教授)が29歳で発見しています。

大腸菌の遺伝子解析を行なっていた石野 良純博士は大腸菌の遺伝子情報内に規則正しい塩基配列が繰り返される領域を発見します。

大腸菌
※最初にCRISPRが見つかった大腸菌

当時はどんな働きをするか石野博士も検討がつきませんでしたが、これが後に解析されCRISPRと名付けられ現代に至ります。

その後、数多の研究者の手によって解析検討が重ねられ2012年CRISPR関連技術が飛躍的に活用される様になります。

の技術を発表したのはカリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ教授とスウェーデンのウメオ大学のエマニュエル・シャルパンティエ教授です。お名前からお気づきの通り女性研究者です。

彼女らはCRISPR-Casシステムの一つであるCRISPR-Cas9(DNA切断酵素)を利用し簡易かつ高精度で遺伝情報書き換えるゲノム編集技術を開発しました。

このCRISPR-Cas9はゲノム編集のハードルを大きく下げる技術でした。

ざっくり言うと従来の技術と比べて安くて簡単、そして汎用性が非常高かったのです。それはもうびっくりするくらい。CRISPR-Cas9の2年くらい前に出来た技術がそっくりとって変わられる位の衝撃です。

 
あまりにも使いやすかった(高校生でも出来ると言われる)ことから瞬く間に世界に広がり遺伝子治療や農作物への応用がすすめられています。

CRISPR-Casってナニ?

歴史を変えた技術です。なんだか凄そうな技術ですよね?実際、近い将来ノーベル賞を取るのではないかとも言われています。期待も膨らんだところで、ここからは実際の内容に入っていきます。

CRISPRの意味

まずは名前からです。名前を知るのと知らないのではどんな技も威力が変わるのでね…実は当ブログでは名前の意味を大切にすると言う裏コンセプトもあります(笑)。どうでもいいや!!って人は読み飛ばしてください。

CRISPRはクリスパーって呼びます。

clustered regularly interspaced short palindromic repeatの頭文字をとっています。日本語訳するとクラスター化され(集まった)規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し」です。

 
は?日本語喋れや!!!

なんのこっちゃ?って話なんですが、

CRISPERは元々、原核生物の遺伝子のある領域を指しています。遺伝子の一部分の名前なんです。原核生物は細菌が最も身近です。大腸菌とか緑膿菌です。

その細菌たちの遺伝子領域が回文配列を規則正しく間隔を空けながら繰り返しているんです。なので規則正しい短い回文構造が集まってるよーという名前がついています。

イメージはこんな感じです。

CRISPR

Aという配列が規則的に間隔を空けて繰り返されています。この繰り返された領域をCRISPRと呼びます。更にAという配列が回文構造になっています。

 
回文?
 
回文ってあれです。上から読んでも下から読んでも同じ文章です。世の中ね。顔かお金かなのよとかです。
 
分かったけどそのチョイスどうなん?

ちなみに生物学における回文って少し変わってまして、対応する相補的な塩基配列を逆から読んで回文になっていることを言います。

ちょっとわかりにくいので例をあげますと

CGGTTTAAACCG】という配列があった場合、その相補的な配列は

【GCCAAATTTGGC】となりますが←方向に読むと【CGGTTTAAACCG】となり最初の配列と同じになります。

 Casの意味

続いてCasです。Casも同様に遺伝子の領域の名前です。よく専門書ではCas遺伝子群って言われます。名前の由来は何かというとCRISPR-associated(クリスパー関連)の遺伝子群の頭文字です。

元々はCRISPRを研究していた科学者たちがCRISPRのすぐ側には常に別の配列の群があることに気がつき、「これCRISPRに関連する働き持っているんじゃね?」ということから関連遺伝子群という名前になっています。

Cas にはヌクレアーゼやヘリカーゼといったDNAを分解したり、切断したりする酵素情報がコードされています。

その種類は多岐に渡りここの違いでCRISPR-Casシステムは様々な働きの違いを生みます。Casから作られるタンパク質はCas1やCas9等々、Cas+ 番号がふられています。

 
なおCRISPR−システムは2015年の段階で2種類6型19亜型に分類されています。
CRISPR
※CRISPR配列に寄り添う様にCas配列は存在しています。

CRISPR-Casシステムの本来の役割

次に実際の自然界での働きを紹介していきます。

先ほど紹介した通り、CRISPRは原核生物の遺伝子のある領域を示しています。ここが何をしているかと言うと、原核生物の免疫記憶スペースだったりします。

CRISPRの回文構造の間には一定の感覚でスペースがありますが、ここに原核生物に感染するウイルスの核酸情報を記憶することができます。

具体的にはウイルスの核酸情報の一部をそっくりそのままスペーサー領域に取り込みます。取り込むことで相手を覚えてしまいます。

現在、CRISPR-Casシステムは約 2 万5 千種類の真正細菌の約50%と約 340 種類の古細菌の約90%に見つかっています。

ファージへの感染防御機構

もう少々、メカニズムを詳しく紹介します。

原核生物に寄生し増殖するファージと呼ばれるウイルスがいます。ファージは原核生物内にファージの遺伝情報(DNA、RNA)を送り込んできて原核生物の代謝システムをのっとって増殖します。

※ファージ:こんな感じで細菌に取り付いて遺伝情報(DNA,RNA)を送り込みます。

原核生物のCRISPR-Casシステムは送り込まれてきたファージゲノム(DNA、RNA)を破壊することが出来ます。

  1. まず原核生物は最初の感染時に侵入してきたウイルスの遺伝情報の一部をCRISPRのスペーサー領域に組み込み記憶します。
  2. 再度同じDNAをもつウイルスに感染した場合、CRISPRに記憶した情報からウイルスの遺伝情報を識別する物質(crRNA)を作り出します。
  3. このcrRNAを頼りにウイルスのRNAやDNAを探し当てます。更にCasから作られる各種タンパク質(核酸分解酵素)を組み合わせることでウイルスのRNAやDNAといった遺伝情報を特定し破壊します。

上記が基本的なCRISPR-Casシステムのメカニズムです。取り込んだ情報からRNAを作成し、それをガイドにCasタンパクを使ってファージゲノムを破壊します。

単細胞生物である原核生物は獲得免疫を備ないと考えられていましたが、それは間違いでCRISPR-Casシステムを用いて高度な獲得免疫システムを有していたのです。

※スペーサー領域には敵性ウイルスの遺伝子情報の一部がそのまま組み込まれています。

CRISPR-Casシステムを使うことで原核生物は過去感染したウイルスのDNAやRNAを破壊し再度感染することを防いでいます。

補足ですが、Casの種類は原核生物の種類でかなりかわります。生物によってDNAファージに強いCRISPR-Casシステムを持っていたり、RNAに強いシステムを持っていたりします。(DNAを切断するCas3や9、RNAを切断するCas13等があります。)

なおその類似性からCRISPR-Casシステムは原核生物のRNA干渉とも言われています。

CRISPR-Casのメカニズム

続いてどの様にDNAを破壊しているのかを2種類6型19亜型の中で代表的なCas9とCas3を取り上げて紹介します。

CRISPR-Cas3のDNA切断メカニズム

まずはクラス1のCRISPR-CasシステムのCRISPR-Cas3です。

こちらは大腸菌と緑膿菌から見つかっているシステムで複数のCasタンパク質を使うことが特徴です。

第一段階として10種類または11種類のCasタンパク質とcrRNAがCascade(CRISPR-associated complex for antiviral defense:抗ウイルス防御のためのCRISPR関連複合体:カスケード)と言う複合体を形成します。

Cascadeはファージの遺伝情報から作られたcrRNAを積んでいますので、それを頼りにファージゲノムを探し当てます。

cr RNAはウイルスのDNAと相補的な構造(鍵穴と鍵の様な構造)になっているため、探し当てたウイルスの塩基配列と合致し、標識します。つまり、ここがターゲットだよーって言う目印をつけます。

目印がつくとCas3タンパク質が召喚されます。召喚されたCas3はボロボロになるまで、チェーンソーやシュレッダーの様に標的のDNAを何度も切断します。

それはもう凄まじくジェニファーダウドナ博士はこの様に評しています。

ファージゲノムを毎秒300塩基対を超えるスピードで往復してDNAをズタズタにし、長いファージゲノムを屑の山にした。単純なヌクレアーゼが剪定バサミだとすれば、Cas3は驚くほど高速で効率性の高い電動刈り込み機の様だ。

CRISPR 究極の遺伝子編集技術の発見 97Pより引用
 
DNAぶっ壊すマシーンってことね

当初はその破壊的能力より遺伝子編集には使えないと思われていました。現にジェニファーダウドナ教授はCas3の研究からCas9の研究に路線変更しています。

しかしながら、投入するRNAを調整することで現在は遺伝子編集にも使える様になっています。

CRISPR-Cas9のDNA切断メカニズム

多くのタンパク質とcrRNAを組み合わせるのがクラス1のCas3でしたが、クラス2のCRISPR-Cas9が使うタンパク質はCas9ひとつです。

CRISPR-Cas9ではcrRNAとtracrRNA(trans-activating crispr RNA)、Cas9が複合体を形成しDNAを切断します。tracrRNAはcrRNAと接合し成熟させる役割を持ちます。

特に実験下においてはエラーを減らし効率化するために予めcrRNAとtracrRNAを接合させたsgRNA(single guide RNA)が使われます。

具体的な切断のステップはこんな感じです。

  1. Cas9がターゲットDNAの二重螺旋構造をこじ開けます。
  2. sgRNAが相補的な配列を探索しDNAと接合し標的します。
  3. 標識されたDNAの両方の鎖をCas9は1箇所(両鎖で2箇所)切断します。
  4. 切断後Cas9は新たなTGを求めて別のDNAを探し切断をくし返します。

イメージ画像だけではわかりにくいかと思うのでVISUAL SCIENCEの動画を紹介させてもらいます。丁度50秒くらいから再生してもらうとCas9がDNAを切断する方法が確認いただけます。

Cas9タンパクがグリグリ回ってDNAを切断します。

https://vimeo.com/252474293

Cas3と異なり1箇所の切断、タンパク質が1つと非常に簡易であることがCas9の特徴です。この簡易さが後の応用時の扱いやすさと量産による安価に直結しています。

まとめ

基本的用語、役割とDNA切断のメカニズム解説を行わせていただきました。CRISPR-CasシステムがDNAを破壊するシステムだと言うことがおわかりいただけたかと思います。

この破壊のシステムがどのように創造の編集システムへと生かされるのか、次回は遺伝子修復を通してその部分に近づいていきたいと思います。

 
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