【図解】わかりやすい核酸医薬:RNA干渉とRNAi治療薬【ノーベル賞の医薬品応用】

【図解】核酸医薬の解説:RNA干渉とRNAi治療薬
もくじ

RNAi治療薬耳慣れない薬ですよね。
でもそんなRNAi治療薬は
最近の創薬のトレンドの一つでして
非常に多くの研究がなされています。
(すでに日本初のsiRNA核酸医薬も登場しています。)

なかなか専門的な分野ですので、
少々小難しいですが、
今後必ず話題になる分野です。
本当に薬の世界が変わりうる技術の一つです。

チクチク

かみ砕きましたが、
まだまだ大粒です。
ご了承の上、
ご賞味いただけますと
幸いです。

RNA干渉ってなに?

RNA干渉ってなに?

この医薬品を語る上で欠かせないのが
RNA干渉(RNA interference)です。
RNAi治療薬(siRNA核酸医薬)は
この現象を応用して創薬されています。

チクチク

RNA干渉は
高校生物をやっていないと
理解が難しいです。

ただこれが解れば
治療薬含めて、
8割解った様なものです。

チク子

頑張っって!

発見と役割

RNA干渉自体も比較的新しい内容で
昭和生まれの多くは、
学校ではほとんど触れていないと思われます。

発見は1998年。約20年前です。
発見者は
アンドリュー・ファイヤーと
グレイグ・メロー

彼らは後に
ノーベル生理学・医学賞を
受賞しています。

基本的には
ウイルス防御や遺伝子発現の抑制に
使われている現象です。

実際に昆虫、植物、菌類では
ウイルス防御として活用されていると
分かっています。

ウイルスを倒すために
生物が身に着けたテクニックです。

人間等の哺乳類では厳密には
違うメカニズム(miRNA)で
遺伝子抑制を行っていますが、
昆虫等で使われるsiRNAを使ったところ、
同じくRNA干渉を起こすことが判りました。

チクチク

現在siRNA、miRNAともに
医薬品へ開発が進んでいます。
このうちsiRNAは前述のとおり
既に遺伝性疾患の治療薬として
発売されています。

mRNAとRNA干渉の概要

RNA干渉を一言でいうと、

二本鎖RNAと相補的な塩基配列を持つ
mRNAが分解される現象

と説明されています…
よくわかんないですよね。

平たく言うと
RNAが壊れる現象です。

ちょっと雑にいいすぎました…
もうちょっと詳しく紹介します。

まず「mRNAが分解される」ここを解説します。
mRNAはメッセンジャーRNAと呼びます。
その名の通り伝令が仕事です。

生物はすべからく、タンパク質を作っています。
DNAは作成するタンパク質を
ラインナップしたカタログです。

チクチク

生きるために必要な
タンパク質情報が
DNAには詰まっています。

カタログであるDNAはタンパク質を作る際に
DNA→mRNA→タンパク質の順番で作成します。

直接作成はせず、伝令役を介して
タンパク質のカタログ情報写し取らせて
作成工場(リボソーム)に送って作ります。

前述の通り
mRNAはDNAから写し取った
タンパク質情報の伝令役です。
まさにメッセンジャーです。

RNA干渉はこの伝令役mRNAを分解する為、
タンパク質工場に

カタログ情報が伝わらなくなり、
タンパク質を作ることができない
=遺伝子発現が抑制されることになります。

ここは比較的簡単かもしれません。
問題は次です。
「二本鎖RNAと相補的な塩基配列を持つ」
この部分です。

二本鎖RNA…RNAって
基本的に一本鎖なのですが、

RNA干渉においては
特別な二本鎖のRNAが登場します。
dsRNA(Double-stranded RNA)と言います。


もう少し詳しく紹介します。
RNAって
4つのパーツ(塩基)で構成されてまして
それぞれ

  1. アデニン(A)
  2. ウラシル(U)
  3. シトシン(C)
  4. グアニン(G)
チクチク

『AはU『と『CはG』と
それぞれ鍵穴と鍵の様な関係
となっていて組み合わさり
くっ付きます。

AとUの関係、CとGの関係を
それぞれ相補性があるといいます。

簡単に図式しますがmRNAが
以下の並びでパーツが並ぶとすると
塩基配列と相補的な塩基配列の関係は
以下になります。

《塩基配列》
AUAUUGCUUCGAUU
《相補的な塩基配列》
UAUAACGAAGCUAA 

AUAUUGCUUCGAUU配列を持つ
RNAをターゲットにした二本鎖のds RNAは

・UAUAACGAAGCUAA=一本鎖目
・AUAUUGCUUCGAUU=二本鎖目

こんな形になります!
mRNAと同じ塩基配列も持っていますね。

チク子

二本鎖RNAと
相補的な塩基配列を持つ
ではなく、
mRNAと同じ塩基配列をもつ
二本鎖RNA
でもいい気がします…

チクチク

RNA干渉で働くのは
あくまで相補側の鎖なので、
めんどくさい書き方を
しているのでしょう。

まとめますと

二本鎖RNAと相補的な塩基配列を持つ
mRNAが分解される現象とは
mRNAに組み合わさる塩基配列をもった
二本鎖RNAによって
mRNAが分解されて

遺伝子発現が抑制される現象
示しています。

説明しても長いですね。
同じ塩基配列を持った二本鎖RNAによって
mRNAが分解される

くらいでいいかもしれません。

チクチク

次はどうやって二本鎖RNAが
mRNAを分解するのか
確認します。

RNA干渉のメカニズム

すこしマニアックになりますが、
ここで初めて

siRNA
(small interfering RNA)

が登場します。かなり端折りますが以下、
概要図を見てもらえば、
RNA干渉の全体の流れは確認できます。

RNA干渉のメカニズム概要図

RNA干渉(siRNA)の模式図
イラスト作成協力:@F1_ABS

解説しますと

  1. 細胞内に取り込まれた2本鎖RNA(dsRNA)がDicerという
    酵素によって短い一本鎖RNA(siRNA)に分解される。
  2. siRNAはArgonauteタンパク質というRNAを切断する
    酵素と結合しRISCという複合体を形成する。
  3. RISCがsiRNAをガイド役に使い
    ターゲットmRNAを特異的に認識し結合する。
  4. ターゲットRNAがRISCの切断酵素によって
    特異的に切断される→遺伝子発現(タンパク質合成)
    が妨げたげられる。
  5. RISCは次のターゲットを探す
    …RISCが破壊されるまで以下繰り返し
チクチク

文字だけだとわかりづらければ
この動画がおすすめです!

既に発売されている
オンパットロという薬に
作用機序動画があります
ので、
リンクを貼っておきます。
図と合わせて確認頂ければ、
よりわかりやすくなるかと思います。

  1. 二本鎖RNAが分解されて
    小さなsiRNAに変化、
    siRNAと切断酵素が合体。
  2. それがターゲットのmRNAと
    結合して破壊する。

短くするとこんな感じです。
これくらいで十分です。

ウイルスの多くはRNAが主体ですので、
生物は相補的なsiRNAを使ってウイルスを認識し
破壊するテクニックを磨いてきたわけです。

チクチク

これを薬に利用してやろう
というのが
siRNA核酸医薬になります。

RNAi治療薬(siRNA核酸医薬)と課題

RNAi治療薬(siRNA核酸医薬)と課題

最後に、RNAi治療薬と
その課題について紹介します。

RNAi治療薬(siRNA核酸医薬)

siRNAは非常に短い塩基配列でして、
合成が比較的簡単というメリットがあります。

さらにターゲットの
RNA塩基配列が判明していれば、
すぐに作成することが出来ます。
そして作られたsiRNAは
確実にターゲットRNAを破壊します。

効果的な影響を及ぼすRNAがわかり、
塩基配列も判明すれば、
確実に薬効を示す物質が作れる
わけです。
通常の薬とはここが大きく違います。

通常の薬はターゲットを発見してから
有効物質を探索したり、
デザインしたりしますが、

RNAi治療薬であれば、
ターゲットRNAの発見≒有効物質の発見
となります!

つまり新種のウイルスに感染した細胞が作る
mRNAを発見し塩基配列を特定し
相補的なsiRNAを作れば、
ウイルスの遺伝子発現を抑えて
増殖を防ぐ事が可能
なのです。

その他にも異常遺伝子が原因となる遺伝病も
ターゲットRNAがわかれば
コントロールが可能になります。

チクチク

現在の創薬は
こちらがメインかも
夢の技術に感じてしまいます。

RNAi治療薬の課題、DDS

夢の技術ですが、
そんなに簡単では当然ありません。

RNA配列さえわかっていれば、
薬効を示す物質の創造は
通常の創薬よりしやすいことは確かです。
しかし、最大の問題は
どうやってsiRNAを届けるか
というところにあります。


狙った場所に薬を届けるシステム
(ドラックデリバリーシステム:DDS)
には常に課題が付きまとっています。

siRNAって
細胞に簡単にとりこまれない
&壊れやすい特徴を有していまして、
血中に入れてもなかなか取り込まれず、
薬効を発揮しません。

それでも、研究はすすめられ、
現在承認されている薬(オンパットロ)は
脂質ナノ粒子(mRNAワクチンも同じです)
というものを使うことで、
壊れにくく血管から肝細胞に取り込まれやすく
装飾されています。

通常の創薬とは異なり、有効物質の発見よりも、
狙った部位に到達させる方法を
より考えなければいけないことが
RNAi治療薬の開発難易度を上昇させています。

ちなみに
文部科学省科学技術・学術政策研究所が
出している
第11回科技予測調査2019では
『目的とする組織・機関への送達と
細胞内ドラックデリバリーシステム(DDS)技術を
実現させる核酸医薬品』の
科学技術的 実現時期は2028年
社会的 実現時期は2030年

とされています。

これが出来れば最大の問題が解消され
一気に薬としての開発が進みます。

チクチク

ちょっと先ですが
これまでの予測は
前倒し傾向にはあります。
(大体3~5年くらい早くなってます)

まとめ

まとめ

RNA干渉とRNAi治療薬いかがでしょうか?
すっごい期待できそうな技術&薬ですよね。


今後、各国の研究費がさらに拡充し
研究が前倒しされれば
革新的なDDSの早期実現も
期待できるのではないでしょうか。
というか本当に期待したいです

チクチク

…Alnylam社
頑張ってください!!!

2021年追記

アルナイラムジャパンが
新しいRNA干渉治療薬
「ギブラーリ皮下注」を販売します。
(ちょっとだけ出てきたオンパットロもアルナイラムです。)
適応は「急性肝性ポルフィリン症」。
期待の新薬です。
※プレスリリースはこちら

チクチク

1瓶500万6201円。
ピーク時の予測販売額37億円
最新テクノロジーの薬が
どんどん出て来ますね!

2023年追記

どんどんRNAiを利用した新薬が
アルナイラムから登場しています!

ノバルティス発売ですが、
創薬はアルナイラムです。
また高血圧の治療薬も開発しています。

【図解】核酸医薬の解説:RNA干渉とRNAi治療薬

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