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ファイザー社とBioNTechの新型コロナウイルスワクチンBNT162とは

BNT162とは

BNT162とは

先日、ファイザーとBioNTech、1億2000万回のBNT162 mRNAワクチン候補を日本に提供というニュースが日本中に届けられました。

さすが世界のファイザーと驚いた次第ですが、BNT162ってどんなワクチンなんだ?と気になった方も多いと思います。私もそんな人間の一人でして、今回BNT162に関して勉強してまいりました。

 
当記事ではどんなワクチンなのか?特徴は?開発状況は?等々の疑問をまとめていきたいと思います。
 
抗体やT細胞に不安が残る方は以下過去記事を一度ご参照ください。

過去記事

そもそもmRNAワクチンって何

そもそもmRNAワクチンって何

そもそもmRNAワクチンってなんなんだ?って話なのですが、

mRNAワクチンは抗原とするタンパク質(今回のケースでは新型コロナウイルスの一部)を精製するmRNAを人体に投与することで、人体内で抗原を生成し免疫システムを刺激し抗体を産生させ、免疫を得るという物です。

 
今回の場合だと新型コロナウイルスの一部を作るmRNAを体内に入れて、体内で新型コロナの一部分を生成させて、それに対する免疫を得ることが狙いです。
 
メリットデメリットは?

メリット

  • 大量製造に向いている。
  • ターゲットのDNA配列がわかれば作成が可能→迅速性に優れる。
  • 核内に移行せず細胞質に入るだけで効果を発揮する。
  • 宿主の遺伝子情報を変更しない。そのため宿主の遺伝情報を変更せず、がん化しにくいと考えられいる。
  • mRNAは非常に不安定であり、長期的には体内から消失すると考えられる。

デメリット

  • 量が少ない場合タンパク質発現効率に乏しい。
  • 消失し複製されないため持続性に乏しい。
  • 抗体依存性感染増強の懸念がある。(2016年デング熱ワクチン死亡事件の原因とも言われている)
  • そもそもテクノロジーとしては新しく多人数に使った際の安全性情報は乏しい。
 
BNT162はデメリットを打ち消すためにmRNAをいろいろ改造して対応しているようです。
 
天然のmRNAを使うと特許が取れないという問題もあるみたいね。

Light speedプログラムでは3系統4種類のmRNAワクチンを開発中

Light speedプログラムでは3系統4種類のmRNAワクチンを開発中

今回、BioN Techとファイザーの開発者候補には3系統4つの候補mRNAが上がっています。これらを統括するプログラムはLight speedという名前になっており早期開発への意気込みを感じます。

 
実は1製品じゃありません。4つ同時に開発してます!

共通部分と用語解説

それぞれ紹介する前に4つに共通している部分と用語解説を簡単にしたいと思います。

ワクチンのターゲットはスパイクタンパク

ワクチンで生成する抗体のターゲットを最初に紹介します。

新型コロナウイルスはACE2受容体という細胞表面タンパクにスパイク部分をつかって接合し侵入します。そのため現在作られているワクチンの多くはスパイクをターゲットに創薬されています。

下記図の左側は新型コロナウイルス、右側はスパイクタンパク(ウイルスの赤い部分)を示しています。BNT162のターゲットはこのスパイク全体とRBD(スパイクの緑の部分)のどちらかを作るmRNAが使われています。

後述するBNT162b1はRBDを作るm RNAをベースに創薬され、BNT162b2はRBDを含むスパイクタンパク質全体を作るmRNAを使用しています。

画像引用:BioNTech BNT162 COVID-19 Vaccine

DDSは共通の脂質ナノ粒子

ドラックデリバリーシステムは全て共通の脂質ナノ粒子(Lipid nanoparticles, 以下 LNP)が使われています。トリグリセリドや脂肪酸、ステロイドなどの生体適合性がある脂質と界面活性剤から構成されています。

生態の細胞膜はリン脂質二重膜で構成されています。細胞膜と近い物質で構成することで細胞膜と親和し細胞膜を通過してmRNAを細胞内に投入することができます。

画像引用:BioNTech BNT162 COVID-19 Vaccine

RNAの構造

次項で登場しますがRNAは基本的に以下構造をとります。

  • Cap-UTR-OFR−UTR−Poly(A)

非常に端折って紹介するとCapとPoly(A)はRNAの安定性に寄与しUTRは転写に関わる分子の接合性などに関与しているとされています。そのほか色々な機能があります。

OFRはタンパク質情報が詰まっている領域です。ここが主に翻訳されます。BNT162ではスパイクタンパク情報またはRBD情報が入っています。

 
UTRはUnTranslated Region、非翻訳領域の頭文字だとわかると理解しやすいかと思います。
 
ちなみにORFはOpen Reading Frameです。

3系統4種類のm RNAワクチン

3系統はヌクレオチド修飾mRNAワクチン、ウリジンmRNAワクチン、自己増幅mRNAワクチンがあります。そのうちヌクレオチド修飾mRNAワクチンは2種類が開発されています。それぞれ紹介していきます。

ヌクレオチド修飾mRNAワクチン

画像引用:BioNTech BNT162 COVID-19 Vaccine

ヌクレオチド修飾mRNAワクチンは2製品開発が進めれらています。それが前述のBNT162b1とBNT162b2です。

その差は前述のとおり生成するタンパク質が異なります。

  • BNT162b1はスパイクタンパクの一部のRBDを作るm RNA
  • BNT162b2は全スパイクタンパクを作るmRNA

なお英語で書かれている特徴を訳すと

  • 複数回投与
  • 中等度のアジュバント効果
  • 非常に強い抗体反応
  • CD4>CD8の反応
 
CD4優勢ということは、つまり細胞障害性T細胞ではなくヘルパーT細胞への反応を促すようです。抗体産生を考えるとTh2を刺激する必要があるのでCD4>CD8は重要そうに思います。

このRNAは名前の通り化学的に修飾されています。

RNAやDNAは生体内でも様々な修飾を受けることで遺伝情報を変化させることなく、その性質を変化させることがわかっています。ちなみにエピジェネティクスと言います。主要な変化としてはメチル化やヒストン修飾があります。

具体例としては魚類や爬虫類の雌雄決定があげられます。魚類や爬虫類では卵の時に受けた温度で雌雄が決まる種類がいます。彼らは温度によってDNA情報を変化させるわけではなくエピジェネティクスな変化で性別を変化させます。

 
エピジェネティクスは決まってしまった遺伝情報でなんとか環境に適応するために生物が編み出した機構とも考えられます。

BNT162b1並びにBNT162b2に施された修飾の目的は記載がありませんでしたが、前述のデメリットである安定性とタンパク発現率に関する物であろうことは予想できそうです。

開発状況

つづいてBNT162b1並びにBNT162b2の開発状況です。

ファイザー社は『ファイザーとBioNTech、COVID-19に対するmRNAワクチン候補を決定し、国際共同第2/3相試験を開始』というプレスリリースを出しています。

プレスリリースを引用します。

・両社は最適化されたSARS-CoV-2のスパイク糖タンパク全長をエンコードする修飾ヌクレオシドmRNA(modRNA)ワクチン候補であるBNT162b2を選択し、30 µgを2回接種する用法用量で第2/3相試験を実施する

・ワクチン候補と用法用量は、非臨床試験データおよび米国(C4591001)とドイツ(BNT162-01)でそれぞれ実施中の第1/2相試験データに基づき選択

・第2/3相試験の治験実施計画書は、米国食品医薬品局(FDA)のCOVID-19に対するワクチンの臨床試験デザインに関するガイダンスに完全に則っている

・最大30,000名の18~85歳の参加者を対象とする第2/3相試験を米国で開始し、世界約120施設で実施予定

・ワクチン候補BNT162b2のCOVID-19の予防効果を評価するため、SARS-CoV-2の感染率が有意に高いと予想される場所を含む地域で治験を実施

・治験が成功した場合、両社は早ければ2020年10月に規制当局に承認申請し、許可または承認が得られた場合には、2020年末までに最大1億回分、2021年末までに約13億回分を供給する計画

引用:ファイザー社プレスリリース

BNT162b2が選択され30 µgを2回接種する用法用量で第2/3相試験を実施するようです。

スパイクタンパク全体をを生成するb2が選択されるのは当然の様な気はします。スパイクタンパクの一部分より全体を使った方がより免疫を誘導したのでしょう。

ちなみにC4591001を確認するかぎり投与方法は筋肉注射となってます。海外のワクチンの多くは筋肉注射なイメージがあります。

国内販売の時も筋肉注射になるのでしょうか。データを筋肉注射でとっているので筋肉注射になりそうですが、皮下注射に比べて痛いのは嫌ですね。

13億回分を2021年末までに供給できる点はmRNAワクチンが大量製造に向いている事とファイザーの企業体力のすさまじさを感じさせます。

 
13億回分を本当に製造すると世界人口の10%くらいをカバーしてしまいますね。

ウリジンmRNAワクチン

画像引用:BioNTech BNT162 COVID-19 Vaccine

こちらは修飾等は受けていませんが、ウリジンを含んでいるRNAを使っています。調べた限りウリジン含有量が少ないと免疫原性が落ちるようです。

英語部分を翻訳すると

  • 複数回投与
  • 強いアジュバント効果
  • 低用量で活性化
  • 強い抗体反応
  • CD8陽性T細胞有意の反応

CD8優位のためか、抗体反応はStrongとなっています。他の二つがVery Strongである点を考えるとこの点は劣りそうです。

 
改造の少なさと特徴から少し他のワクチンの当て馬のような印象をうけますね。
 
アジュバント効果は強力みたいなんで、アジュバントとして使われるのかもしれませんね。

自己増幅mRNAワクチン

画像引用:BioNTech BNT162 COVID-19 Vaccine

このワクチンの最大の特徴はレプリカーゼという複製酵素を搭載している点です。レプリカーゼはもともとウイルスが自身のRNAからRNAを複製するために存在する酵素です。

これにより当RNAは自己複製能力を有すると考えられます。

mRNAワクチンのデメリットである持続性とタンパク生成能力を自己複製による量でカバーしようというアプローチです。

実際特徴を見てみても

  • 1回注射
  • 長時間作用型
  • 非常に強い抗体反応
  • CD4、CD8共に非常に強く刺激する
  • 前臨床ではウリジンRNAの60分の1用量で免疫を誘発

となっており、自己複製によるメリットが感じられる内容となっています。

なお長期的にmRNAが消えないという特性です。この特性を裏返したデメリットがどうなるのか注目していきたいと思います。安全性という意味では懸念がありそうですね。

 
1回注射で少量でよく効果も非常に強いと製品力自体は強そうです。
 
これがフラッグシップモデルかな?順調な開発を祈りたいですね。

あとがき

あとがき

ファイザー社もアストラゼネカ社もそうですが、企業体力がすごいですね。正直まだまだ臨床試験には時間がかかると思っていました。流石世界の大企業としか言いようがありません。

 
まだまだ、製品化されたわけではありませんので、良い報告をまってうがい手洗い、ソーシャルディスタンスを守りましょう(^^)/

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