注目キーワード
  1. 新薬
  2. MR
  3. 抗体
  4. AMP
  5. 水族館

モデルナ社の新型コロナウイルスワクチンmRNA-1273とは【mRNAワクチンの迅速性と大量生産能力はやっぱり凄い】

mRNA-1273とは

mRNA-1273とは

mRNA-1273はm RNAワクチンです。Moderna社(以下モデルナ社)と米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が共同で研究開発を行っています。

基本的な組成はBNT162シリーズと同じでスパイクタンパクをコードするmRNAの配列に修飾を加えたものが脂質ナノ粒子内に抱合されています。

詳しくは過去記事ファイザー社とBioNTechの新型コロナウイルスワクチンBNT162とはをご確認いただき、下記モデルナ社の動画をみてもらえるとイメージができると思います。

mRNAワクチンのメリット

過去記事のファイザー社とBioNTechの新型コロナウイルスワクチンBNT162とはでも紹介しましたが、mTRNAワクチンのメリットは「

  • 大量製造に向いている。
  • ターゲットのDNA配列がわかれば作成が可能→迅速性に優れる。
  • 核内に移行せず細胞質に入るだけで効果を発揮する。
  • 宿主の遺伝子情報を変更しない。そのため宿主の遺伝情報を変更せず、がん化しにくいと考えられいる。
  • mRNAは非常に不安定であり、長期的には体内から消失すると考えられる。

特にこの中で現状最も重要なのが、大量製造と迅速性です。

新型コロナウイルスワクチンは世界の人々に届けなければいけませんし、何よりスピードが重要な状況です。。

ワクチンの開発とインフルエンザワクチンの製造

ワクチンの開発とインフルエンザワクチンの製造

mRNAワクチンの迅速性、大量生産性と言うメリットを確認するために、他のワクチン製法ではどれくらいかかるのかインフルエンザワクチンを例に確認してみます。

従来のワクチン開発

ウイルスをそのまま弱毒化させるか、ウイルスの一部分をバラバラにして取り出し精製、投与すると言う方法が取れられいます。

その為、新しいワクチンを作る際にはウイルスの培養方法、弱毒化、不活化する方法や精製方法の検討を行わなくてはなりません。

実際のサンプル作成にもかなり時間がかかります。

 
実際にインフルエンザワクチンの製造方法を、見てみましょう。

インフルエンザワクチンの製造

インフルエンザワクチンの製造には受精した鶏卵(有精卵)が使用されます。生きた鶏の卵の中で鶏の生命力を借りてウイルス数を増やし分離不活化処理を施します。

インフルエンザワクチンの製造

更に詳しく言うとこんな感じです。ここはふーんそうなんだ位でいいやつです。

33 ~ 35℃で 2 日間培養→冷蔵室で一晩放置→感染尿膜腔液を採取→限外濾過法、化学的方法で濃縮→蔗糖密度勾配遠心法で濃縮→エンベロープ中の脂質をエーテル除去→ホルマリン添加で不活化(参考:インフルエンザワクチンの製造と課題

ご覧いただく様に大量の卵を必要とする製法(1ワクチン1卵)です。その為、ワクチン製造会社は鶏卵場と契約し数百万以上の卵を毎年確保しています。

結果、弱点として

  • 計画外の増産に対応できません。
  • 卵による培養なのである程度時間がかかる。
  • 鶏卵タンパクの除去工程が必要(鶏卵アレルギー予防)

ざっくりこんな弱点があります。

大量の卵を確保するのは何だかんだ1年がかりのプロジェクトです。米国なんかは国家安全保障に関わるとして、場所も明かさない鶏卵工場で極秘にワクチン用の鶏卵を確保するくらいです。

日本のインフルエンザのスケジュールを箇条書きにすると更にどれくらいかかるかお分かりいただけると思います。

卵の確保→4−5月に培養するウイルス株を決定→製造→9月末から12月にかけて順次出荷→2月から3月にかけてインフルエンザ収束

と1年がかりのプロジェクトです。

毎年作っているインフルエンザでこの大変さです。新型コロナウイルスワクチンを全国民に行き渡らせることがどれ程困難か何となく感じませんか?

 
急な増産には対応できませーんと言うのがデメリット。新しい感染症に関しても同様に急には作れない。
 
技術の信頼性は高いんだけどね
 
卵を使わないワクチン製造方法もいくつかありますが、ほぼ全てが生物を使う技術なのでウイルスの培養に時間がかかりますし、大量に作ることが難しいと言う問題点は共通です。

日本ではKMバイオロジクスが不活化ワクチンを開発中

なお日本では明治製菓ファルマ傘下のKMバイオロジクスがVero細胞を使いウイルスを培養し不活化ワクチンを開発中です。(プレスリリース)

小動物での単回投与、反復投与を行う非臨床試験を行ってから人体に第1相試験になるため2020年夏前には非臨床試験を始め、最短で2020年11月から臨床試験を開始する計画の様です。

不活化ワクチン の製造技術自体は既存の技術ですが、やはり前述のウイルスの培養方法、不活化方法、精製方法に関してはmRNAより時間がかかりますね。

mRNA-1273の開発スピード

mRNA-1273の開発スピード

ここからはどれくらいmRNAワクチンの開発が早いのかみていきたいと思います。以下はモデルナ社のHPより作表した第3相試験までのスケジュールです。

2020/1/11に中国当局が新型コロナウイルスの遺伝子配列を公開したところから始まります。

Moderna’s Work on a COVID-19 Vaccine Candidateより抜粋して作表

わずか2日後の13日にはmRNA-1273の塩基配列が決定しています・圧倒的な速さです。ある程度これまでのコロナウイルスから目星をつけていたとしても圧倒的な速さです・ワクチンのメインとなる成分が僅か2日で決定してしまいました。

その後、25日で試験用ワクチンが完成です。約1ヶ月かかっていますが、ドラックデリバリーシステムとして使う脂質ナノ粒子や不純物の除去工程他、アジュバントの検討などもありますので1ヶ月くらいかかったのでしょうか。

その後、約半年で第3相まで到達しています。

通常の医薬品は創薬から発売まで10−20年かかることが普通です。1年以内に開発できそうな今の勢いがどれ程以上かは感じてもらえるかと思います。

化学的に大量合成できる

mRNA自体は生物の力を借りることなく、科学的に合成することが可能ですので大量に作ることができます。

従来のワクチンの様にウイルスを一度大量に増やす必要がありません。必要なmRNAを必要なだけ化学的に合成することができます。

実際、各社非常に多くの製造を約束しており全て単位は億です。

  • モデルナ社のmRNA-1273は年間最大10億回分の製造
  • ファイザー社のBNT162b2は2021年末までに約13億回分の製造
  • アストラゼネカ社のAZD1222は20億回の製造

3製剤全てのワクチンうまくいったと仮定した場合の計算ですが、21億5000万人分が製造される計算になります。(2回投与)

2019年の世界人口が77億人ですので、25%くらいはカバーできます。先進国に鍵って言うと10億人くらいしかいませんので、ビジネスとしてお金のある先進国に売る分の2倍は製造される計算です。

あとがき

あとがき

mRNAのとんでもないスピードと大量生産能力について紹介しました。

今回の記事で米国のワープスピード計画で調達されそうな3ワクチンの紹介を全てすることができました。

まだ、開発自体は行なっている会社もありますので、進展があればワープスピード計画がらみの記事を書いていきたいと思います。

最後まで読んでいただきまして本当に有難うございます。

ワープスピード計画の関連記事