当ブログではCRISPRテクノロジーに関連する記事を何度か紹介しています。
※当ブログのCRISP関連記事一覧
実は最近医療の現場にも
CRISPRテクノロジーを応用した
検査方法が広がってきています。
その代表がSHERLOCKとDETECTRです。
まとめてCRISPR検査って呼ばれたりします。
そのうちのSHERLOCKは
新型コロナ診断キットとして既に使われています。
米Sherlock Biosciences社が製造し販売している
「CRISPR SARS-CoV-2キット」がそれです。
「CRISPR SARS-CoV-2キット」は実は2020年5月
米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可を得ています。
近い将来SHERLOCKとDETECTRが日本にも上陸した時のために、
今回は簡単なメカニズムを紹介します。
本記事では
- SHERLOCKとDETECTRの由来と開発者
- Cas12、13の特徴
- SHERLOCKとDETECTRのメカニズム
- CRISPR検査のメリット
上記4点をまとめて紹介します。
SHERLOCKとDETECTRの由来
![](https://www.mr-net.info/wp-content/uploads/2022/10/77e162ac9d02eee5a3b7ec5580a056ec-150x150.png)
![](https://www.mr-net.info/wp-content/uploads/2022/10/90f80471d9f2632a5d72253a10468423-150x150.png)
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某漫画の○月のオッサンも言ってました!!
SHERLOCKとDETECTRの由来
SHERLOCKは
Specific High Sensitivity Enzymatic Reporter UnLOCKing
特異的な高感度酵素レポーターのロック解除
DETECTRは
DNA Endonuclease Targeted CRISPR Trans Reporter
DNAエンドヌクレアーゼを標的としたCRISPRトランスレポーター
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特異的な高感度酵素=DNAエンドヌクレアーゼ=Cas酵素です。
Casって何?って人は過去記事をご参照ください。
【過去記事】CRISPR-Cas9【基本編】
さらに両方にレポーターと言う単語が出てきている様に、
この核酸検出技術はレポーターとCasが鍵を握っています。
両方ともCasとレポーターを使った技術ってことでOKです。
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補足として開発元を紹介すると
SHERLOCKは
James J. CollinsとFeng Zhangが開発し
スタートアップのSherlock Biosciencesが
研究を続けている技術で
DETECTRは
J. Doudnaが開発し
スタートアップのMammoth Biosciencesが
研究を続けている技術です。
![](https://www.mr-net.info/wp-content/uploads/2022/10/90f80471d9f2632a5d72253a10468423-150x150.png)
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それにしても名前が両方とも秀逸です。
シャーロックはかの有名な名探偵
ディテクターは英語で検出器
名探偵や検出器の様にターゲット核酸を探しだし
知らせるシステムって願いが込められまくっています。
余談ですが、
CRISPR検査は他にもいくつか開発されていて、
我が国、日本でも開発されています。
そしてその名はCONAN(コナン)!!
![](https://www.mr-net.info/wp-content/uploads/2022/10/77e162ac9d02eee5a3b7ec5580a056ec-150x150.png)
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アニメ大国日本ですから、
死神と揶揄されているメガネに違いないでしょう。
Cas12、13の特徴
Cas12と13は標的とする核酸が違います。
Cas12のターゲットはDNA Cas13のターゲットはRNA
この違いは何に対抗するために生み出されたかと言う違いでして、
DNAウイルスに対抗するために進化した方がCas12
RNAウイルスに対抗するために進化した方がCas13
CasってDNA破壊系が多いので13は
ファミリーの中では少々変わり者です。
なお正確には13aとか12aとか表記しますが、
今回は概要なので割愛します。
12、13の両Casはターゲットを速やかに認識し破壊します。
ターゲットは違いますが、この二つの酵素には共通した特徴があります。
その特徴がターゲット破壊と同時に一本鎖DNA(ssDNA)
ないしssRNAをコラテラル切断すると言う特徴です。
![](https://www.mr-net.info/wp-content/uploads/2022/10/912678c247d55652db97944ca6d47b58-150x150.png)
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![](https://www.mr-net.info/wp-content/uploads/2022/10/8237942ed1a6aad6a000c5fde3ec175f-150x150.png)
![](https://www.mr-net.info/wp-content/uploads/2022/10/8237942ed1a6aad6a000c5fde3ec175f-150x150.png)
![](https://www.mr-net.info/wp-content/uploads/2022/10/8237942ed1a6aad6a000c5fde3ec175f-150x150.png)
ssDNAやssRNAの配列は関係ありません。
近くにいるだけで巻き込んで破壊します。
![Cas13のコラテラル切断](https://www.mr-net.info/wp-content/uploads/2020/10/2-2-1024x633.png)
![Cas13のコラテラル切断](https://www.mr-net.info/wp-content/uploads/2020/10/2-2-1024x633.png)
![](https://www.mr-net.info/wp-content/uploads/2022/10/77e162ac9d02eee5a3b7ec5580a056ec-150x150.png)
![](https://www.mr-net.info/wp-content/uploads/2022/10/77e162ac9d02eee5a3b7ec5580a056ec-150x150.png)
![](https://www.mr-net.info/wp-content/uploads/2022/10/77e162ac9d02eee5a3b7ec5580a056ec-150x150.png)
余談ですが、
ヒト細胞内のDNAはほとんど二重螺旋構造をとっていることから、
ヒトゲノム編集に与える影響は限定的と考えられています。
SHERLOCKとDETECTRのメカニズム
SHERLOCKとDETECTRは、
このコラテラル切断を応用します。
応用のためにここで登場するのが前述のレポーターです。
レポーター
レポーターは
ssDNAまたはssRNAを改造して作られます。
具体的には切断とされることで
発光したり色を変えたりする改造が行われます。
つまりレポーターがコラテラル切断されると、
レポーターが含まれる試薬の色が変わったり光ったりする様になります。
SHERLOCKでは、
消光状態の蛍光ssRNAレポーターを
Cas13のコラテラル切断の対象として使い
DETECTRでは、
消光状態の蛍光ssDNAレポーターを
Cas12のコラテラル切断対象として使います。
ターゲットを見つけたCasは
速やかにターゲットを破壊します。
と同時にレポーターも破壊します。
すると切断されたレポーターは発光し、
ターゲットの存在を知らせると言う過程をとります。
なお試験紙でもわかる様に改良されたSHERLOCKv2もあります。
この動画をみてもらえるとより理解が進むと思います。
CRISPR検査の3つのメリット
DETECTRの開発者でCRISPRの開発者である
ダウドナ教授によるとCasを用いた検査には
3つのメリットがあると紹介しています。
- 検出が直接的である
- 変更が簡単なこと
- 他のテストと同じ材料で製造する必要がない
一つ目の検出の直接性ですが、
抗体検査と異なり「直接的な」方法だってことです。
核酸を直接検出するのがCRISPR 検査なので、
感染の間接的な証拠である酵素とタンパク質に依存しません。
つまりウイルスが二次的な証拠を生成し
始める前では検査できないと言う問題がおこらないと言えます。
抗体検査だと抗体獲得を待つ必要が有りますが、
その必要がないってことですね。
![](https://www.mr-net.info/wp-content/uploads/2022/10/77e162ac9d02eee5a3b7ec5580a056ec-150x150.png)
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二つ目の変更が簡単ってどう言うことかと言うと
CRISPR−CasシステムはガイドRNAを組み換えるだけで
ターゲットを変えることができます。
なので新型コロナや他のウイルスが変異しても、
それにわせて迅速にキットを作り替えることができます。
最後に他のテストと同じ材料で
製造する必要がないと言う点についてです。
CRISPR-Casはタンパク質と核酸で構成されています。
他の検査の材料と全く違うもので出来ています。
パンデミック下で他の検査と
同じ材料の検査をさらに作ろうとすると材料が足りなくなり、
世界に十分量を流通させられなくなる可能性が有りますが、
そう言った心配がありません。
大量に作っても材料切れにならないのは
世界的なパンデミックでは大きなメリットになります。
あとがき
実はSHERLOCKって新型コロナ対策として期待されている技術だし、
利権でノーベル賞が取れていないCRISPR技術使っているし、
話題性と言う意味でノーベル賞取らないかなーって思ってこの記事書いています。
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参考
- New CRISPR tool can detect tiny amounts of viruses
- Jennifer Doudna sees CRISPR gene-editing tech as a Swiss Army knife for COVID-19 and beyond
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