皆さんお疲れ様ですチクチクです。
2021年5月28日に睡眠薬混入問題を起こした小林化工さんが業務改善計画を厚生労働省に提出しました。
提出した原本は公開されていないんですが、ニュースリリースにて業務改善計画の概要を公開してくれました。
ただね…企業あるあるなんですけど、
一般向けじゃない!!
ハイレベルの専門用語ガンガン使っているし、正直製薬業界に勤めている私でさえ
言いたいことはわかるけど、正直よくワカンネって部分が多々あります。
信頼回復する相手は委託製造受けていた相手や医療機関だし読めて当然ってことかもしれませんが
今回の問題は多くの日本国民を巻き込む大事件です。
さらに、医薬品という背景から高齢者等も多いでしょう!!
正直このわかりにくさはやばいと思うんですよ!
なので本記事では
小林化工の業務改善計画の提出についてを確認し、業務改善計画の概要をわかりやすく解説します。
でもその前にメルマガ&過去記事も見ていってくれると嬉しいです!
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ニュースリリース解説
それではニュースリリースを見ていきましょう!
まずはカンタンな導入文を確認していきます!
導入文
弊社は、2021 年 4 月 28 日付の厚生労働省による第一種医薬品製造販売業及び第二種医薬品製造販売業の許可に係る製造販売業務に対する業務改善命令に基づき、是正措置及び再発防止策に係る改善計画(以下「本業務改善計画」といいます。)を策定し、本日、厚生労働省に提出いたしました。
弊社が製造販売しました抗真菌剤イトラコナゾール錠に本来含まれるべきでない睡眠剤成分が混入し、甚大な健康被害を生じさせた事につきまして、患者様及びそのご家族の皆様、医療関係者様並び に関係者の皆様にはあらためて心よりお詫び申し上げます。
亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともにご遺族の皆さまには謹んでお悔やみ申し上げます。
また、弊社が医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律と関連省令に違反したことで、多くの関係者の皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
弊社は、この度の事態を極めて重く受け止め、2021年2月9日付の福井県による業務改善命令に基づき同年3 月10日付で福井県に提出した業務改善計画と併せ、本業務改善計画の確実な実行を通 じ、全役職員の一人一人が、法令遵守の徹底を図り、再発防止と業務改善に真摯に取り組むことで、皆様からの信頼の回復に誠心誠意努める所存でございます。
これはなんてことないですね。
- 報告:業務改善命令を提出しました
- 謝罪:患者様及びそのご家族の皆様、亡くなられた方、医療関係者様並びに関係者に対する謝罪文
- これからの行動報告:福井県に提出した業務改善計画と厚労省に提出した業務改善計画を遵守する旨を報告
至極当然の内容でツッコむところもないかな?と思います。
ちなみに福井県に提出した業務改善報告の概要は
- 法令遵守を確実に実行するための組織体制の構築
- 法令遵守のための教育訓練と人材育成のあり方の見直し
- GMP 管理体制の再構築
- 薬事部の新設と信頼性保証部門の機能強化
これらを受けて代表取締役兼社長執行役員の小林広幸氏
および取締役兼副社長執行役員の小林順子氏の退任が決まっています。
法令遵守を最優先とした研究開発活動を実現するための体制構築
法令遵守を最優先とした研究開発活動を実現するための体制構築
研究開発本部の責任者の交代、研究開発業務に対する信頼性保証、生物学的同等性試験の実施組織の見直し、治験薬等の管理強化を実施いたします。
一方、新たに設置したコンプライアンス 推進室と連携し、役職員に対して法令遵守を徹底させ、全ての研究開発活動に対して法令遵守を 最優先とする風土を醸成します。
ざっくり書くと
ルール最優先の研究開発をやるんで組織作り変えます!というものです。
- 研究開発本部の責任者の交代
- 研究開発業務に対する信頼性保証
- 生物学的同等性試験の実施組織の見直し
- 治験薬等の管理強化
これらをやるためにコンプライアンス推進室と役員が中心となって
コンプライアンス最優先の研究開発活動を行います!!!
責任と役割の明確化
責任と役割の明確化
研究開発本部に所属する全ての役職員が、自らが開発する製品が医療に用いられ、人の生命や健康に直接関係するものであることを認識して医薬品開発を行うために責任と役割を明確にします。
組織については業務分掌を作成し、本部長を含むマネジメント陣と各責任者については、それぞれの職務を明確にし、役割と責任を自ら意識するよう教育訓練の場を設け、徹底を図ります。
まず突っ込みたいのは
研究開発本部に所属する全ての役職員が、自らが開発する製品が医療に用いられ、人の生命や健康に直接関係するものであることを認識して医薬品開発を行うために責任と役割を明確にします。
これざっくりと書くと
- 研究開発本部役員が開発する製品が人の命に関連することを認識します。
- そのために責任と役割を明確にします。
って書いてあるんですよ…
製薬会社の社員が、人の命に関連するっていうのは至極当たり前だと思っていました。
役員だとさらに高い認識を持つはずですが、それができていなかったんですね。
あと責任と役割を明確にしないと認識できないことじゃないと思うんですけどね。
役員なら呼吸するレベルで備えているべき内容で、それができない人は役員クビにするレベルだと思うんですよ。
邪推すると研究開発本部役員が自身のポスト守るための対策にも受け止められる内容…
ここの部分はめちゃめちゃツッコミたかったです!!
次の文章の
組織については業務分掌を作成し、本部長を含むマネジメント陣と各責任者については、それぞれの職務を明確にし、役割と責任を自ら意識するよう教育訓練の場を設け、徹底を図ります。
この文章は
- マネジメント陣と各責任者にの職務を明確化
- 役割意識の意識するよう教育訓練
- それらを行うために業務分掌を作ります!
というものです。
「業務分掌」っていうのは『組織内の各部門が果たすべき責任・行使できる権限を明確化する』規定のことです。
つまりは
ちゃんとルールにして明確に記載しますよ!!って書いています。
研究開発業務に関する文書体系の見直し
研究開発業務に関する文書体系の見直し
薬機法、GCP 省令、治験薬 GMP を遵守した研究開発業務を確実に実施できるように文書体系を見直します。
それに伴い、基準書や SOP を改訂または新設します。
ここは略号が多すぎますね!
製造業に関わっていなけりゃ暗号じゃないですか?
薬機法:お薬関連の大元の法律です。大抵の薬屋は薬機法違反って言われると死にます。
GCP 省令:Good Clinical Practiceの略で、医薬品を人に使う試験の時のルールみたいなもんです。違反=社会的死。
GMP:Good Manufacturing Practiceの略で製造管理基準と品質管理基準を定めたルールです。違反=社会的死。
SOP:Standard Operating Proceduresの略で、標準作業手順書のことです。手順等の動作をまとめてあります。
これらを踏まえた上で文書を確認すると
研究開発業務に関する文書体系を各種ルールに適した形に見直します!
役職員に対する教育訓練
役職員に対する教育訓練
全ての役職員に対して、法令遵守や研究開発活動に必要な基本的な知識やスキルを身に着けるための教育訓練を実施します。
加えて、研究員の専門性を向上させるための取り組みを実施します。
特に、治験のモニタリング実施者、治験薬の製造実施者に GCP 及び治験薬GMP の教育を実施します。
習熟度の評価のあり方を予め構築した上で、受講者の習熟度を評価し、基準を満たさ ないものには再教育を実施するなどの対策を講じます。
この部分は特にツッコミたいところがありませんでした。
- 全ての役職員に法令遵守や研究開発活動に必要な基本的な知識やスキルを身に付けさせます。
- 研究員に関しては治験&製造関連の知識教育をさらに行います
- ちゃんと基準設定してテストしてチェックします
こんなところです。
ざっくりいうと、
必要な知識教育をちゃんと行うようにします。
知識レベルも保証できるようにします。
開発プロジェクトに対するマネジメントの強化
開発プロジェクトに対するマネジメントの強化
製品開発において、トラブルを未然に防ぎ、トラブルが生じた場合にも適切に対処できるように開発プロジェクトに対するマネジメントを強化します。
開発の遅延等を早期に見つけ、適切な対策を講じることにより不適切な行為につながる要素を取り除きます。
適切な製品開発の進捗管理の下で、開発継続の可否判断や研究資源の追加投入等の意識決定が行えるようにします。
具体性に欠けるんじゃない?と思ったんですが、
改ざん防止策の強化
改ざん防止策の強化
日付改ざんを防止するため、データインテグリティ強化のシステム構築及び試験検体の出入庫管理を強化します。
ですよね!ほとんどの人が聞き慣れない言葉ですよね。
データ完全性(データかんぜんせい、英: Data integrity)は、情報処理や電気通信の分野で使われる用語であり、データが全て揃っていて欠損や不整合がないことを保証することを意味する。データインテグリティとも。
すなわち、各種操作(転送、格納、検索)が行われる際にデータがひとまとめで扱われ、目的とする操作に対して期待されるデータ品質を維持する。
簡単に言えば、データ完全性とは、データが一貫していて正しく、アクセス可能であることを保証するものである。
引用:Wikipedia
つまりは、
データを後から書き換えられないようにしまっせ!!
そして検体の差し替え等でデータの交換を防ぐために入庫管理も徹底しまっせ!!っていう内容です。
大体のちゃんとした製薬会社の基準に揃える感じですかね?
ただ、これって出来ていて当然の内容なので、
これが改善されたからといって、落ちた信頼が戻るかというとそれは違います。
これは私見ですが、
先発以上の信頼性を示さないと小林化工はこれから顧客に選ばれることはないと思う…
ブロックチェーンの導入で改竄が絶対に不可能です。
世界レベルで監視されています!!!位やらないとダメだと思う。
少なくとも私が小林化工のMRだとして
営業個人の能力を使わずに製品のスペックだけで、薬を採用してもらえ!と言われたら
ムリです!!って言うでしょう。
それくらい医薬品製造の信頼は大事ですし、
小林化工さんの信頼は地に落ちています。
過剰な自前主義の撤廃および外部委託の実施
過剰な自前主義の撤廃および外部委託の実施
業務量に応じた適切な対応を行えるよう、外部委託を適時に実施します。
外部委託する場合には、外部委託先のシステム監査や成果物に対する監査等を行い、委託先での成果物について社内と同レベルの信頼性を確保します。
これは業務過多になって、やるべきことが出来ていなかった反省から
業務量が多すぎる場合は外注して対応します!その場合も社内規定を満たす信頼性を確保します!
という宣言ですね。
まぁ社外の方が信頼性高いんじゃない?というツッコミは置いておいて、
個人的にはかなり好意的に受け止めています。
量的にムリな場合は人を頼る!
これって社会人として最も大切な能力の一つだと思うんです。
それを全社を上げて取り組むっていうのは、コンプライアンス的にはかなりいい方向に作用しますよね。
大体の不正は異常に余裕がないときに起きるんですよ。
心を亡くすと書いて忙しい&忘れると書きますが、
忙しすぎて本来ならしないであろう決断とか忘れてミスするとかが不正の始まりですよね。
まとめ
これまで紹介した文章のポイントをまとめると以下8点です。
- ルール最優先の研究開発のために組織作り変えます!
- 研究開発本部役員が開発する製品が人の命に関連することを認識させます!
- 認識改善のために責任と役割を明確にします。そして規定に明記します!
- 研究開発業務に関する文書体系を各種ルールに適した形に見直します!
- 必要な知識教育をちゃんと行うようにします。レベルも保証できるようにします!
- 開発進捗を管理する方法を強化します!
- データを後から書き換えられないようにします!
- 量的にムリな場合は人を頼ります!
こんな感じでしょうか?かなりガチガチに固めた変化ではないでしょうか?
②番以外は変な感じは受けませんでした。
新たな小林化工のためにもぜひ頑張ってもらいたいです。