【本記事がオススメの方】
プレゼンの時、スライドばかり見てしまう。
どこを見て話せばいいのか、いまいち自信がない。
チクチクそんなモヤモヤを抱えたまま、
なんとなくプレゼンしていないでしょうか。
実は、心理学や
コミュニケーション研究の分野では、
聴き手の信頼を勝ち取るための
「視線の型」が存在します。
結論から少しだけ触れると、
ポイントは「1人3秒の法則」などの
5つの基本ルール
本記事では、実際の研究データをもとに、
- なぜ視線がプレゼンの
伝わりやすさを左右するのか - なぜ5つの基本ルールが有効なのか?
- スライド説明中の視線の動かし方
という科学的根拠と、
明日から使える具体的な視線の配り方を
解説します。



医師向け講演、社内プレゼン、営業の提案など、あらゆる場面で使える視線の「型」として活用いただければ幸いです。
なぜ「視線」がプレゼンの伝わりやすさを左右するのか
視線の重要性と確認するために
- 視線が与える印象
- 視線と説得力の関係
- 視線のデメリット
- 視線を送る適した時間



これらを5つの論文を
参考にみていきます
視線は「内容」以上に“印象”をつくる


プレゼンの評価は、「何を話したか」だけでなく、
「どう話したか」=非言語情報に
大きく左右されます。



非言語情報の大切さは
過去別記事でも取り上げました!
中でも視線は
- この人は誠実そうか
- 自信がありそうか
- 専門性がありそうか
といった印象を決める重要な要素です。
Beebe1は、
実際のスピーチ場面で
アイコンタクトの量を操作し、
聴き手が話し手をどう評価するかを検証しました。
その結果、アイコンタクトの多い話し手ほど
「信頼できる」「理解しやすい」と評価されることが示されています
スライドに視線が固定されてしまうと、
内容がどれだけ良くても、
- 原稿を読むだけの人
- 聴き手に興味がなさそうな人
といった印象になりやすく、損をしてしまいます。



あーなんとなくわかるわね…
研究でわかった、視線と“説得力”の関係


続いて印象だけではなく
実際の内容に対しても
影響力を与えるのか見ていきます。
- 視線の量(多い/少ない)
- 話す速さ(速い/遅い)
上記を組み合わせた説得スピーチの映像を作成し、
受け手が話し手をどう評価するかを調べました
主なポイントを抜粋すると、
- 視線が多いほど、
「説得的」「好ましい」印象が
高まりやすい - ゆっくり話すこと
自体はマイナスではないが、
視線が少ない状態で「ゆっくり」だと、
信頼性・専門性が低く見える - 一方で、視線が多い × ややゆっくりは、
落ち着いていて誠実・説得的という
印象につながりやすい
つまり
「ゆっくり話せば良い」
「視線を増やせば良い」ではなく、
視線と話速の組み合わせが
重要だと示唆されます。



視線がなくてゆっくりだと
マイナスなのは面白いですよね!
「目を合わせると嫌われる?」
アイコンタクトの光と影


これまでポジティブな効果を2つ紹介しましたが
当然アイコンタクトには
ネガティブ…
注意が必要な側面もあります。
まずKreysaら3は、
真偽がはっきりしない内容を話す映像を用いて、
話し手の視線方向を操作しました。
- 聴き手にまっすぐ視線を向ける
- 視線をそらして話す
この2パターンで反応を調べています。
その結果、直接視線を向けられた時の方が、
その発言を「信じる」割合が高かったと
報告されています



よくわからない話でも視線を向けて話したほうが
信じてもらえたのね!
これまでの結果と同じね!
一方、Chenら4は、
説得メッセージの動画を見てもらう実験で、
- もともと話し手の主張に反対している人ほど
- 話し手の目を長く見るほど
- 説得されにくくなることを示しました
つまり、
- 基本的には、視線が多い方が「信頼」「説得力」にプラスに働く
- しかし、強く反対している相手を凝視すると、かえって防衛的にさせてしまう
という、両面をおさえておきましょう!



アンチを
注視してはいけない!
反対派には「戦略的に視線を外す」
では、明らかに不満そうな顔をしている人や、
反対意見を持っていそうな人に対しては、
具体的にどう振る舞えばよいのでしょうか?
答えはシンプルです。
「無理に見なくていい」です。
研究が示す通り、アイコンタクトは万能ではありません。
相手が拒絶のサインを出している時に
見つめ続けることは、
火に油を注ぐようなもの。
メンタルを守り、プレゼンを成功させるために、
以下の2つの「逃げ道」を用意しておきましょう。
1. 視線の避難所(スライド・資料)を使う
怖い顔をしている人と目が合いそうになったら、無理に笑顔で返そうとせず、自然にスクリーンや手元の資料へ視線を落としましょう。「次のデータを確認する」という自然な動作で、視線を外すことができます。
2. 「ホームベース」に帰る
会場には必ず、うんうんと頷いてくれる「好意的な人」がいます。
視線に困ったり、プレッシャーを感じたりした時は、
その味方の人に視線を戻しましょう。



便宜上、視線のホームベースと呼んでいます。



ホームベースで一度心を落ち着かせてから、
また別の場所へ視線を配れば良いのです。
どのくらいの割合で
「相手を見る」のが自然か


続いては、アイコンタクトの時間についてです!
プレゼン関連でよくある質問の1つが
聴講者1人に、どれくらいの時間
アイコンタクトを取るのが適切なのか?
この問いに対し、プレゼンに特化して
最適秒数を決めた研究は
実はほとんど存在しません。



少なくとも私は
見つけられませんでした…
しかし、
「人が見つめられて不快にならない時間」
これを扱った研究はありますので
参考値としてみていきます。
人が「快適」と感じる直視時間(PGD)
Binettiら5は、
相手からの直視が、
短すぎず長すぎもしないと感じる時間
Preferred Gaze Duration(PGD) を
測定しました。
結果、人が「ちょうどいい」と感じる
アイコンタクトの長さは、
平均で約3.3秒。
そして、長めのアイコンタクトが平気な人ほど、
瞳孔(黒目)が早く大きくなる傾向がありました。



研究のポイントです
- ロンドンの科学博物館で、
約500人が実験に参加。 - 画面の中の俳優が、いろいろな長さで見つめてくる動画を見て、参加者は毎回、
- 「短すぎる」or「長すぎる」
どっちかを選ぶ。 - その答え方から、各自の
PGDを計算した。 - 結果:平均のPGDは約3.3秒。
- さらに目の機械で瞳孔の大きさも測定。
- PGDが長い人ほど、
瞳孔が大きくなりやすい。 - 俳優の顔が「怖そう」に見えるほど、
参加者は短いアイコンタクトを好んだ。



重要なのは、長く見れば見るほど良いわけではない&短すぎても「関心がない」と感じられる点です。



怖い顔の営業担当者は
長時間のアイコンタクトは
デメリットだよ!
プレゼンにどう活かすべきか?
紹介した研究は、あくまで
「対人直視の心理的快適さ」を扱ったものです。
そのため、
「3.3秒がプレゼンの最適解」と
断定できるわけではない点には注意が必要です。



しかし
1人あたり約3秒前後で
視線を切り替える運用自体は
不快になりにくい行動として
心理学的裏付けがあると
考えることができるでしょう。
伝わるプレゼンの視線テクニック
5つの基本ルール


ルール1:話している時間の半分以上は
「聴衆」を見る
まず一番コスパが良いのは、
「スライドばかり見ない」と決めることです。
- 話している時間の50〜70%くらいは、
聴衆の顔の方向を見る - スライドやノートを見るのは、
「要点を確認する一瞬」にとどめる
これだけで、
- 聴衆が「自分たちに語りかけられている」と
感じやすくなる - 話し手の「自信・誠実さ」の印象が上がる
(Beebe、横山・大坊の研究の方向性と一致)



内容は同じでも、
視線配分を変えるだけで
「伝わり方」が変わります。
ルール2:「1フレーズ=1人」を目安に
3秒ずつ視線を配る
次に視線の配り方です。
おすすめは、
- 1〜2文(ワンフレーズ)話すあいだ、
一人の方向をしっかり見る - 次のフレーズに移ったら、別の方向の人を見る
という「視線リレー」です。
(目安:1人あたり3秒程度)
ポイントは、
- 視線をキョロキョロさせない
- あくまで「その人に話しかけている」つもりで、
ワンフレーズを届ける
こうすることで、
- 会場全体ではなく、
「自分に話してくれている」感覚が生まれる - 横山・大坊(2012)が示したような、
「視線が多い × ややゆっくり」の
説得的な印象に近づける



これで説得力が増すね!
ルール3:会場を“ゾーン分け”して、
まんべんなく見る
視線は無意識だと、どうしても
- 前列の知っている先生
- 中央付近
に偏りがちです。
そこで、会場をあらかじめ
ゾーン分けしておきます。
- 左・中央・右
- 前・中・後ろ
の組み合わせで、6ゾーンを意識しておき、
- 1枚のスライドを話している間に、
最低でも3ゾーン以上には視線を送る
と決めてしまう方法です。
こうしておくと、
- 1スライド10秒程度
- 後方の参加者にも「ちゃんと見てもらえた」
という感覚を持ってもらえる - 一部の人だけを見続けてしまうことを防げる



慣れてくると視線の送った数で
大体の時間を
測れるようになります。
ルール4:キーメッセージは
「ゆっくり+アイコンタクト」で伝える
先述の横山・大坊の研究からは、
視線+ややゆっくりが
説得力が最強!!!
という示唆が得られています。
実務的には、
- 「ここが今日一番伝えたいポイントだ」
と決めた一文を選ぶ - その一文を話すときは、
キー顧客を見て、いつもより少しゆっくり話す



これだけで、「重要度」が
自然と伝わりやすくなります。
ルール5:対立が予想される場面では
『凝視』しない
プレゼンの内容次第では
- もともと異なる意見を持つ聴衆
- 言いにくいことを伝えるべき顧客
がどうしても含まれます。
Chen ら(2013)の結果を踏まえると、
そのような聴衆を長時間じっと見つめるのは、
説得という意味では逆効果になります。
そこで、
- その人の「目」だけではなく、顔全体・資料・他の聴衆にも視線を適度に分配する
- 質問者に答えるときも、質問者+周囲の人たちに視線を配る
といった工夫で、



「詰問されている」「責められている」という印象を避けながら、
メッセージを全体に届けやすくなります。
よくあるNG
「スライド読み上げモード」
多くのプレゼンで見かけるのが、
話し手がほぼずっとスクリーンだけを見て話している
という「スライド読み上げモード」です。
これをされると聴き手は、
- 「スライドだけ見れば良い」と思ってしまい、話を聞かなくなる
- 「自分たちに向けて話してくれていない」と感じてしまう



結果として、内容の理解も
記憶も落ちやすくなります。
おすすめの視線パターン
「聴衆 → スライド → 聴衆」
スライド説明のときにおすすめなのが、
次の3ステップ視線パターンです。
- 聴衆を見る
「このスライドでは、◯◯についてお話しします」のように、まずこのスライドの意味・目的を一言で宣言する。 - スライドを見る
グラフや数字を指し示しながら説明する。
「こちらの青いバーが〜」など、指やレーザーポインタを使いながら話す。 - 再び聴衆を見る
「つまり、この結果からわかるのは〜です」と、
要約・メッセージ部分は聴衆を見て伝える。



視線の流れと、
聴衆に注目してほしい
ポイントの流れを揃えることで
情報処理がスムーズになります。





スライドとの関係は
ぜひ上記の記事も
ご参照ください!
よくある質問&ご相談
まとめ:「視線」は一番コスパの良いプレゼンスキル
ここまで見てきたように、プレゼンの「視線」は、
- 信頼感・専門性の印象(Beebe 1974)
- 説得力の評価(横山・大坊 2012)
- 信じやすさ・抵抗感(Kreysa 2016、Chen 2013)
といった要素に関わる、重要なスキルです。
今日からできる実践ポイントを、
最後にもう一度まとめます。
- 話している時間の半分以上は、聴衆を見て話す(スライド見っぱなしはNG)
- 「1フレーズ=1人」で、3秒前後、視線を配る
- 会場をゾーン分けして、1枚のスライドで3ゾーン以上を見る
- キーメッセージは、「ゆっくり+アイコンタクト」で届ける
- 対立が予想される場面では、特定の人を凝視しすぎない
スライドを作り直さなくても、
話す内容を変えなくても、
視線の使い方を少し変えるだけで、
プレゼンの伝わり方は確実に変わります。



まずは、次のプレゼンで
どれか1つだけ
取り入れてみてください。
終わったあとに振り返ると、
「視線が変わると、印象がこんなに違うのか」という
実感が得られるはずです。
参考文献・論文リンク
- Beebe, S. A. (1974). Eye contact: A nonverbal determinant of speaker credibility. The Speech Teacher, 23(1), 21–25. https://doi.org/10.1080/03634527409378052 ↩︎
- Yokoyama, H., & Daibo, I. (2012). Effects of Gaze and Speech Rate on Receivers’ Evaluations of Persuasive Speech. Psychological Reports, 110(2), 663-676. https://doi.org/10.2466/07.11.21.28.PR0.110.2.663-676 (Original work published 2012) ↩︎
- Kreysa H, Kessler L, Schweinberger SR. Direct Speaker Gaze Promotes Trust in Truth-Ambiguous Statements. PLoS One. 2016 Sep 19;11(9):e0162291. doi: 10.1371/journal.pone.0162291. PMID: 27643789; PMCID: PMC5028022. ↩︎
- Chen, F. S., Minson, J. A., Schöne, M., & Heinrichs, M. (2013). In the Eye of the Beholder: Eye Contact Increases Resistance to Persuasion: Eye Contact Increases Resistance to Persuasion. Psychological Science, 24(11), 2254-2261. https://doi.org/10.1177/0956797613491968 (Original work published 2013) ↩︎
- Binetti N, Harrison C, Coutrot A, Johnston A, Mareschal I. Pupil dilation as an index of preferred mutual gaze duration. R Soc Open Sci. 2016 Jul 6;3(7):160086. doi: 10.1098/rsos.160086. PMID: 27493767; PMCID: PMC4968459. ↩︎





