さぁ今回のテーマは
MRが医薬品の説明会の際に使う弁当代です!
MRをしていると、
医療関係者からこんな質問を受けます。
「MRが医師に配っている弁当代って、薬価に上乗せされてるんじゃないの?」
弁当代は薬価に上乗せ…
弁当代は薬価に上乗せ…
弁当代は薬価に上乗せ…
まぁ医療費の財源は税金と保険料ですから、
医療関係者がそう疑問に思うのも自然です。
チクチクは許すよ…
ただしMR&元MR…
テメーはダメだ
ゆるさねぇ…
実際に経費を使っているMRなのに
間違った知識を振り撒くのは許さねぇ…
ここビシッと答えられるMRであってほしい!
というわけですが
実際の薬価算定の仕組みを丁寧に追うと、
答えは意外とシンプルです。
結論から言えば――
弁当代は薬価に含まれません。
むしろ薬価を押し下げる方向に作用します。

なぜ下がる?と思った人も大丈夫!順番に解説していきます!
薬価算定の基本をおさらい
弁当代の出どころを知るには
薬価算定の基本を押さえなくてはなりません…



弁当代という
フワッとした話題だったけど
まさかのお勉強回なのね!!!
原価計算方式の仕組み
薬価算定の方法は大きく分けて2種類です。
その中でも類似薬のない革新的な新薬の薬価は
主に原価計算方式で決まります。
以下の項目を積み上げて算定されるのが基本です。



5項目で構成されています
- 製品製造原価(原材料費・製造人件費など)
- 一般管理販売費(研究開発費など)
→営業活動においては市販直後調査、使用成績調査関連のみ算入可能注1 - 営業利益
→ 製薬産業全体の平均営業利益率を基準に設定注2 - 流通経費
- 消費税
一般管理販売費(研究開発費など)
ここでポイントになるのは、
弁当や接待といった交際費は
販管費と認められないことです。
というよりMR経費のほとんどが
薬価に計上できる経費として
認められておりません…



中医協の資料にもこんな感じで書いてあります!


上記以外のMR活動費については、
原則として計上を認めない
上記以外のMR活動費については、
原則として計上を認めない
上記以外のMR活動費については、
原則として計上を認めない



つまり薬価のどこを探しても、弁当代が直接上乗せされるルートは存在しないということです!



価格に乗せられないならメーカーの持ち出しってことね!というかMRの活動費の大半は薬価に計上されないのね…
営業利益率は「業界全体の平均」で決まる
薬価の計算に使われる営業利益率は、直近3年間の製薬業界全体の平均値です注2。
これは「一社ごとの事情を持ち込まず、業界全体の姿を基準にする」という制度設計です。
たとえば、ある会社が弁当を用い説明会を行なって処方を増やし、売上が伸びたとしても、その会社の数字だけで薬価が上がることはありません。薬価に使うのはあくまで産業全体の平均利益率だからです。
制度は「業界全体の平均」を反映する仕組みなので、「弁当の出る説明会で売上が伸びたら薬価も上がる」という考えは成り立たないのです。



余談ですが直近3年間の平均から『0から-50%の範囲』で調整を受けます。革新性が乏しいものや原価開示率が低い製品はここで大きく利益を削られます。


そんなこと言っても
みんなで弁当ある説明会をやれば売上も利益も伸びて、薬価も上がるのでは?
こんな疑問も聞こえてきます…
確かに一見そう思えますよね。



でも実際は、そんなに単純ではありません。
利益率で見るのがポイント
薬価の算定に使われるのは「利益の割合(利益率)」です。
式にするとこんな感じです:
利益率 = 利益 ÷ 売上



売上が増えたとしても、同じくらい費用(弁当代など)が増えれば、利益率は変わらないか、むしろ下がってしまいます。
業界全体で弁当ありの説明会をしたら?
- 売上:一時的には増えるかもしれません。
- 費用:全社で弁当代を足せば確実に膨らみます。
- 効果:みんなで同じことをすればシェアの取り合いで相殺され、業界全体では売上増は限定的。



つまり、「売上の伸び」が「弁当代の増加」を上回らないと、利益率は改善しません。
しかも薬価に反映されにくい
- 薬価に使うのは利益の“額”ではなく“率”。
- しかも直近3年間の業界平均を使うので、一時的な効果はすぐには出ません。
- 個々の会社が工夫しても、全体の平均に埋もれてしまいます。



そして薬価自体は毎年落ちていくので、さらに営業利益率は圧迫されます。
結論
「みんなで弁当がある説明会をすれば薬価が上がる」という考え方は現実的ではありません。
費用は確実に増え、売上効果は相殺されやすく、利益率を下げる方向に働くことが多いからです。
結果として、業界全体で弁当代を増やしても薬価が上がるどころかむしろ下がりやすいのです。
医師は「弁当」ではなく「情報」で処方を決める
もうひとつ重要な点は、医師は弁当そのもので処方を変えるわけではないということです。
- 医師は弁当を食べながら情報提供を受けているだけ
- 処方変更は弁当ではなく情報の内容に基づいて行われる
- 情報によって処方が増えることも減ることもある



処方の判断基準は常に患者ベースです。
弁当は単に情報提供の「場」を整えるためのツールに過ぎません。
だから弁当は売り上げをそもそも増やさないんだ…
弁当代はむしろ薬価を押し下げる
それどころか、弁当代は
間接的に薬価を下げる要因に
なります。
簡単に書くと…
- 弁当代を出す
- 販管費が増える
- 営業利益が減る
- 産業全体の平均営業利益率が下がる
- 標準営業利益率が低めに設定される
- 将来の薬価が低く算定されやすくなる



つまり、弁当代は薬価を押し上げるどころか、長期的には薬価を低くする方向に作用するのです。
よくある誤解への反論
「弁当で売上が増える→利益が増える→だから弁当代も利益に含まれる」?
これまで述べたとおり
一見もっともらしく聞こえますが、このロジックは誤りです。
- 薬価算定は産業平均で決まる
個別企業の売上増加は薬価に反映されません。 - 弁当代は費用であり、利益を圧迫する
売上が伸びても、弁当代が増えれば営業利益は削られます。 - 処方は弁当でなく情報によって変わる
必ずしも売上増に直結するとは限りません。



よって「弁当代が利益に含まれるから薬価が上がる」という主張は制度的にも実務的にも誤解です。
倫理的議論と制度的議論を分けて考える



弁当代は薬価という公金が源泉だから、他業界より透明性高く慎ましくすべきだ
という意見もあります。
これは一部正しく、一部は誤解です。
- 制度的には: 弁当代は薬価に含まれず、企業の利益から支出される営業費用。
- 倫理的には: 公的医療保険を財源とする産業だからこそ、透明性や節度が社会的に強く求められる。
つまり「弁当代は薬価に上乗せされている」というのは制度的誤解です。
しかし、透明性を担保し慎ましくあるべきという倫理的議論は別に存在します。
両者を切り分けて理解することが大切です。



これをごっちゃにして考えるのはだめだよね



実際、製薬協のプロモーションコード、公正競争規約、各社の接待規制などが存在し、一般的に透明性は高いのよね…弁当費もすでにスケスケよ!
簡潔にまとめると
- 制度的には → 薬価に含まれず、企業が自由に使う営業費用。制度上の「問題」はない。
- 倫理的には → 公金を源泉とする産業だからこそ、透明性や節度が強く求められる。社会的誤解を招きやすく、批判の的になることは事実。



だからこそ、経費を使うMRは誤解を解くために、ここの理解をしっかりしておいて欲しいな!と強く思うんです!



ここの理解が浅いと、MRや元MRにも関わらず、間違いを正しいと思い込み、『薬価の一部を弁当代に回して処方誘導するMRは悪だ!』という業界に悪影響をあたえる存在になりかねません…注意しようね!
【理想的な回答例】
説明会の弁当代は薬価に含まれず、企業が自由に使う営業費用。制度上の「問題」はない。医師が処方を決めるのは情報次第で弁当による誘導はない。透明性も各種ガイドライン等でしっかりと担保している



こんな風に力強く応えられるMRになりたいよね!
まとめ
いかがだったでしょうか?
ポイントを振り返ると以下の通りです!
- 弁当代は薬価の「原価」や「販管費」には含まれない
- 営業利益率は産業平均で決まり、弁当代はむしろ利益を圧迫する
- 「弁当で売上増→薬価増」という考えは誤り
- 医師の処方は情報提供に基づき、患者ベースで判断される
- 制度上は含まれないが、倫理的には透明性が求められ対応されている
今回は「MRの弁当代は薬価に含まれるのか?」という、現場でよく話題になる疑問を整理しました。
制度の仕組みを見れば、弁当代は薬価に算入されることはなく、むしろ薬価を押し下げる要因になることが分かります。
一方で、製薬企業の売上は公的医療保険=公金を源泉としているため、社会からは高い透明性と節度が求められます。つまり「制度上の誤解」と「倫理的な期待」が混ざりやすい領域であり、そこが弁当代をめぐる議論の難しさでもあります。
だからこそ実際に経費を使うMRは、制度を正しく理解し、倫理的な問題にも応えられるよう備えておくことが重要です。



今回の記事が、その整理に少しでも役立てば幸いです。