ベイジーンが2024年7月、日本市場に参入!P3パイプラインと作用機序を解説

以下の方を対象に書かれています。
・ベイジーンのパイプラインが気になる
・ベイジーンの会社が気になる
・アムジェン社関係の方
・ノバルティス社関連の方

2024年7月、噂では20名弱のMRを伴って
日本上陸するベイジーン…

とはいってもほとんどの人は
『どんな薬あるのか』わからないですよね?
というか興味ない…って人が
ほとんどでしょう。

でも、そんな中、
ちょっとは知っておくか…
という珍しい方もいらっしゃるかと存じます。
そこで、そんな方を対象に
近年中に発売が見込まれるP3製品と
その作用機序をまとめました!

ちなみに興味がなくとも

チクチク

アムジェン関係の皆様

チク子

ノバルティス関係の皆様

上記2社の皆様は
お読みいただくと面白いと思います。

もくじ

ベイジーン社の概要

ベイジーン社の概要

BeiGene(ベイジーン)は、
2010年に設立された
バイオテクノロジー企業です。

主にがん治療薬の発見と開発に注力しています。
例えば、後述するパイプラインも
抗がん剤が中心です。

本社は北京にあり、
世界各地にオフィスを展開しています。

チクチク

漢字では百済神州と書きます!

ベイジーンの設立目的

設立目的は
『革新的で手頃な価格のがん治療薬を開発し、
より多くの患者に治療アクセスを提供すること』です。

この情報は、
同社のホームページに明記されています。

BeiGene was founded to deliver high-quality, innovative medicines around the world faster, and more accessible than previously.

ベイジーン社HPより:2024/06/08引用
チクチク

価格に言及しているのは
正直珍しい印象です。

ドチク子

日本の超安い薬価でも
発売してくれるのでしょうか?

ベイジーンの沿革

では、BeiGeneの沿革を見ていきましょう。

  • 2010年:北京でJohn V. OylerとXiaodong Wangによって設立される。初期の資金調達にはMerck & Co.の支援。
  • 2016年: ナスダックに上場し、6.6百万株を24ドルで公開、182百万ドルを調達。
  • 2018年: 香港証券取引所にも上場し、903百万ドルを調達
  • 2019年: Amgenが20.5%の株式を取得し、BeiGeneはAmgenの三つの薬剤(Xgeva、Kyprolis、Blincyto)の商業化権を取得。

初期にはメルクが関わり、
設立から6年でナスダックに上場しています。

そして、AmgenのXgeva、Kyprolis、Blincytoの
中国販売を担当しているのもベイジーンです。

これらの薬剤は日本でも既に発売されています。

  • Xgevaはランマーク(第一三共)
  • Kyprolisはカイプロリス(小野薬品工業)
  • Blincytoはビーリンサイト(アステラス製薬)

これらは非常に有名な抗がん剤やがん関連薬で、
世界的製薬企業であるAmgenからの信頼を得ています。

ちなみに、これら3製品にとどまらず、
Amgenの20品目のオンコロジー薬の
中国での販売権も取得しています。

このように、BeiGeneは自社製品だけでなく、
Amgen製品の中国オンコロジー領域も担当しています。

さらに、Amgenはベイジーンの
株式20.5%を購入しており、
取締役会に1名の役員を任命する権利も

持っています。

チクチク

アムジェンと関わりが
相当深い会社です。

チク子

中国市場で
アムジェン製品を
販売するだけで
相当な収益にはなりそうね🤔

第3相試験到達パイプライン一覧

P3パイプライン一覧

BeiGeneのパイプラインのメインは「がん」です。
特に、固形がんのパイプラインは強力で、
PDF3枚に及びます。

チク子

血液がんも3製品が
P3または発売されています。

以下は、P3の製品と
その作用機序を抜き出した表です。

般名固形or血液作用機序
Zanubrutinib血液がんBTK inhibitor
Sonrotoclax血液がんBCL2 inhibitor
Tislelizumab血&固anti-PD-1
Ociperlimab固形がんanti-TIGIT
Zanidatamab固形がんanti-HER2 BsAb
Pamiparib固形がんPARP 1/2 inhibitor
Tarlatamab固形がんDLL3 x CD3
Goserelin
microspheres
固形がんGnRH agonist
一般名をクリックすると該当の場所に飛びます

血液がんパイプライン

今回、日本でのMR部隊立ち上げは
血液がんのZanubrutinib(ザヌブルチニブ)が
対象になります。

なので、まずは血液がんパイプラインから
確認していきます。

コチラのページ
作用機序動画がありましたので、
該当する動画がある場合は
埋め込みリンクを飛ばしています。

Zanubrutinib:ザヌブルチニブ

【概要】
・米国にて既発売のBTK阻害薬。
・自社品。
・日本でベイジーンが最初に売る薬
・史上初FDA承認を獲得した中国薬

ザヌブルチニブはBRUKINSA(ブルキンサ)
という名前で既にアメリカやEUでは
発売されています。

何と言っても中国が開発した新薬として
初めてFDA承認を取得した薬
です。
中国の薬がアメリカで売られているんです!
歴史を変えた特異点といえる薬です。

チクチク

薬学の歴史に
刻まれるのでは?

そんな特異点ザヌブルチニブは、
B細胞抗原受容体(BCR)
およびサイトカイン受容体経路における
シグナリング分子である
Bruton’s tyrosine kinase(BTK)を阻害
することで作用するBTK阻害薬です。

具体的には、BTKの活性部位にある
システイン残基という部分と結合し、
BTKの活性を阻害します。

この結果、がん細胞化した
B細胞活動を抑え込みます。

海外の適応としては

  1. 慢性リンパ性白血病(CLL)
  2. 小細胞性リンパ腫(SLL)
  3. マントル細胞リンパ腫(MCL)
  4. ウォルデンストロームマクログロブリン血症(WM)
  5. 編延滞リンパ腫(MZL)

などなど、複数のB細胞性悪性腫瘍の治療に
承認されています。

ベイジーンの2023年度の決算発表によると、BRUKINSAの年間売上は13億ドルに達しました。

日本円で2000億円です(2024/06/08現在)

ブロックバスターを
既に持っている会社なんですよね…

チクチク

ベンチャーでは既にないですな


より詳しい解説と臨床試験は
noteにまとめていますのでご参照下さい

Sonrotoclax:ソンロトクラックス

【概要】
・自社品の未発売P3開発品

ソンロトクラックスは、
細胞内でアポトーシスを制御する
重要なタンパク質であるBCL2に結合
します。

BCL2はB-cell lymphoma 2の頭文字とってます。
B細胞リンパ腫…ものものしい名前です🤮

名前からはイメージしにくいですが、
細胞の生存と死を制御する
重要な役割を担っています。

このタンパク質は、
主にアポトーシスを防ぐ機能を持ちます。

正常な細胞では、BCL2の機能により
細胞が不必要に死ぬことを防ぎます
が、
がん細胞ではBCL2の過剰発現により死を逃れ、
治療に対する抵抗性に繋がっています。

要はコイツがいると
自然に死ぬはずのがん細胞が死なず、
不必要に長生きしちゃうってとですね!

そこでソンロトクラックス!

この薬はBCL2に特異的に結合し、
そのアポトーシス抑制機能を無効化します。
結果正常なアポトーシスが発動し
がん細胞が死滅します。

P3は2023/11/11に始まったばかりですので、
市場登場は2-3年後でしょうか

チクチク

こちらもnoteで
詳しくまとめています

血液がん&固形がんパイプライン

開発が固形と血液、
両方にまたがっている薬があります。

なに!と驚いた方も
いらっしゃるかとは思いますが、
理由は簡単です。

抗PD-1モノクローナル抗体です。

薬屋なら、
あぁ!って思ってもらえたかと思います。
そんなTislelizumab、チスレリズマブだけは
分けて紹介します。

Tislelizumab:チスレリズマブ

【概要】
・自社品
・FDA承認
・抗PD-1モノクローナル抗体
・2回出戻りして契約金稼いできた偉い子

Tislelizumabは、
免疫チェックポイント阻害薬として知られる
抗PD-1モノクローナル抗体です。

要はオプジーボとキイトルーダの類薬です!
作用機序は今さらいらないかと思いますが
念の為簡潔に書くと

PD-1に結合し、PD-L1との
相互作用を阻害します。
これにより、T細胞を活性化し、
がん細胞を攻撃する能力を回復します。

この薬剤も
2024年3月にFDA承認を取得しています。
適応は『切除不能または転移性食道扁平上皮癌 (ESCC) の成人患者の治療』

オプジーボが1stラインの適応
取ってるはずですが、どう使い分けるんやろ🤔

一応、オプジーボはFc領域を残している為、オプジーボが結合したT細胞がマクロファージに貪食されるリスクがあります。

チスレリズマブはこの点を改良して、Fcは残しつつもマクロファージのFcγ受容体に結合せず、貪食されにくくなり、結果として活性化されたT細胞が長時間働ける!というメリットがあります。

このあたりをどう訴求するのか?という点がベイジーン社のマーケティング部門の大きな仕事になりそうです。

なお数奇な運命をたどっている薬でして
アジアを除く世界販売権を
2度他社に売り渡していますが、
お金だけゲットして
ベイジーンの元に戻ってきています(笑)

チクチク

簡単に時系列だけ記載します

  • 2017年7月:BeiGeneとCelgeneがグローバル戦略的提携を結び、Celgeneがアジア以外の市場で固形腫瘍に対するチスレリズマブの開発および商業化の独占権を取得
  • 2019年6月:Bristol-Myers Squibb(BMS)がCelgeneを買収。そしてBMSにはオプジーボが既にある!契約上、BMSは二つのPD-1クラスの資産を保有できない!結局、権利はBeiGeneに戻り、CelgeneはBeiGeneに1億5000万ドルの手数料を支払う
  • 2021年1月 :ノバルティスがBeiGeneからアジアを除く主要市場(米国、EU、日本など)でのチスレリズマブの権利を取得6億5000万ドルを前払いし、最大で15億5000万ドルのマイルストーン支払いを約束
  • 2023年9月 :ノバルティスとBeiGeneがチスレリズマブに関する提携を終了することを発表ノバルティスは、PD-1阻害薬の市場状況の変化を理由に契約を解除…これにより、全ての開発・商業化権はBeiGeneに戻る
  • 2024年3月『切除不能または転移性食道扁平上皮癌 (ESCC) の成人患者の治療』の適応でFDA承認取得🎊 

こんな感じで2度出戻りしています。

チクチク

みていってね!

固形がんパイプライン

続いて固形がんです。

Ociperlimab:オシペルリマブ

【概要】
・次世代免疫チェックポイント阻害薬
・自社品
・チスレリズマブとの併用予定
・ノバルティスと共同開発

オシペルリマブはTIGIT(T細胞免疫受容体と免疫受容体チロシン基抑制モチーフドメイン)を標的とするヒト化IgG1モノクローナル抗体です。

TIGITは、T細胞やナチュラルキラー細胞など
さまざまな免疫細胞に発現しており、

そのリガンドである
CD155およびCD112と結合することで、
抑制シグナルを伝達し、免疫応答を抑制します。

結果、腫瘍細胞は
免疫系からの攻撃を回避することができます。

要は免疫逃避を司っているので、
そこを阻害してやろう!というコンセプト
です。

オシペルリマブは、
TIGITとリガンドの
相互作用をブロックすることで、

この抑制シグナルを阻止し、
免疫系がより強力な抗腫瘍応答を
発揮できるようにします。

詳細は2020年に
解説記事を作成してますのでご参照下さい

ベイジーンは、
オシペルリマブの開発において、
前述した抗PD-1抗体である
チスレリズマブとの併用を目指しています。

チクチク

セット売りが成功すると
かなり売上的に熱いですね!

ちなみにこの薬はノバルティスと共同開発品で
3億ドルの前払い金&最大7億ドルの
オプション追加支払い契約を結んでいます。
期待の強さが伺えますね!

チクチク

臨床試験をまとめたnoteは
鋭意作成中です。

Zanidatamab:ザニダタマブ

【概要】
・非自社品
・HER2標的のバイスペシフィック抗体

ザニダタマブは、
Zymeworksによって開発された
HER2標的のバイスペシフィック抗体であり、
Jazz PharmaceuticalsおよびBeiGeneが提携して
開発および商業化を進めています。

ベイジーンは
中国と一部地域の販売担当ですね。

HER2受容体の
異なる2つのエピトープに同時に結合することで、HER2シグナルの二重ブロックを行い
抗がん作用を示そう!というアプローチの薬です。

HER2シグナルの二重ブロックの
有効性が認められているので、
それなら1剤でやってしまおう!
というコンセプトですね!

最近エンハーツでもHER2併用データ出てきました!

具体的にはHER2受容体の
2つの異なるエピトープ(ECD2とECD4)に
結合し、HER2シグナル伝達の遮断と
HER2タンパクの細胞表面からの除去を実現し、
抗腫瘍効果を発揮します。

ザニダタマブはFDAから
進行性胆道がんの適応で
ブレイクスルーセラピー指定も受けています。

チクチク

臨床試験をまとめたnoteは
鋭意作成中です。

Pamiparib:パミパリブ

【概要】
・自社品
・PARP阻害薬

パミパリブは、
「PARP阻害剤」というタイプの抗がん剤です。

PARPは
「ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ」の略で
DNA修復に関わる酵素を表しています。

DNAが損傷すると
細胞が正常に機能しなくなります。

通常、細胞はPARPなどの酵素を使って
DNAの損傷を修復します。
がん細胞もこの修復機能を利用して
生き延びています。

パミパリブは、PARPの働きを妨げることで、
がん細胞のDNA修復を阻害します。
結果、がん細胞は自分のDNAを修復できず、
最終的には死滅します。

特にBRCA1やBRCA2という遺伝子に
変異があるがん細胞に対して
効果的と考えられています。

というのも
BRCA1やBRCA2もDNA修復を司っており
これらの遺伝子変異を持つがん細胞は、
他のDNA修復経路が使えないため、
PARPが数少ない修復手段になっています。

したがって、パミパリブがPARPを阻害すると、
がん細胞は修復不能となり、死滅します。

チクチク

臨床試験をまとめたnoteは
鋭意作成中です。

Tarlatamab:タルラタマブ

【概要】
・アムジェン創薬の非自社品
・BiTE

タルラタマブの作用機序も
薬屋の皆さんにはお馴染みの機序です!

T細胞エンゲージャーです。

正式には「バイスペシフィックT細胞エンゲージャー(BiTE)」と呼ばれます。

T細胞をがん細胞に引き寄せて、
がん細胞を攻撃する薬です。

このタイプの薬を
初めて臨床応用させたのがアムジェンです。

冒頭に出てきたビーリンサイトがそれです。

そして
この薬の創薬はベイジーンではなく
アムジェンです。
ベイジーンは中国の販売を担います。

タルラタマブの
1つ目のターゲットは
「DLL3」というタンパク質
です。

DLL3は主に小細胞肺がんの
細胞表面に存在するタンパク質で、
正常な細胞にはほとんど見られません。

そしてDLL3に結合する一方で、
T細胞の表面にある「CD3」という
タンパク質にも結合します 。

コレによりT細胞をがん細胞に
近づけT細胞の活性化&破壊を行います。

チクチク

臨床試験をまとめたnoteは
鋭意作成中です。

Goserelin microspheres:
ゴセレリン マイクロスフィア−ス

【概要】
・ルイエファーマ創薬の非自社品
・ゾラデックスの長期作動タイプ
・既に発売中

こちらの薬は
ルイエファーマ(Luye Pharma)が創薬し
ベイジーンとパートナーシップを結んでいます。

ゴセレリンのマイクロスフィア製剤で
既に中国内で発売しています。
(商品名:Baituowei)

ゴセレリン=ゾラデックスですので、
ゾラデックスのマイクロスフィア製剤です。

マイクロスフィア(microspheres)は、
薬物を包み込み、徐々に放出するように
設計された微小な球体状の粒子のことです。


要は作用時間の延長が狙えます。
他にもバイオアベイラビリティ上げたり、
副作用の軽減が狙えるそうです。

適応症も前立腺癌および乳癌

作用機序も従来のゴセレリン製剤と同様に、
GnRHアナログとして作用し
受容体のダウンレギュレーションを通じて
性ホルモンの分泌を抑制します。
最終的に、
ホルモンレベルは去勢レベルまで低下します。

ゾラデックスは16Gの針を使って
インプラントを留置しますが
Baituoweiは21Gの注射で投与される
非インプラントタイプとのこと
侵襲性がかなり減りそうですね!


チクチク

今後、全世界展開を
して行くらしいです。

まとめ

まとめ
般名固形or血液作用機序
Zanubrutinib血液がんBTK inhibitor
Sonrotoclax血液がんBCL2 inhibitor
Tislelizumab血&固anti-PD-1
Ociperlimab固形がんanti-TIGIT
Zanidatamab固形がんanti-HER2 BsAb
Pamiparib固形がんPARP 1/2 inhibitor
Tarlatamab固形がんDLL3 x CD3
Goserelin
microspheres
固形がんGnRH agonist
一般名をクリックすると該当の場所に飛びます

ベイジーンのP3開発役の
作用機序をまとめました。

チクチク

ワクワクする薬が多いですね!

チク子

日本上陸を
楽しみに待ちましょう!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
もくじ