今回、継続審議が決まった
塩野義製薬のCOVID-19治療薬のゾコーバ
同年11月に第三相試験の結果を待って再審議がなされます。
審議をリアルタイムで見ていたものの印象としては
6月にPMDAから出された宿題に全く回答してないじゃん…
前回とほぼ同じじゃん…
という残念なものでした。
今回継続審議が決まったわけですが、
次回の審議では今回出されたPMDAからの宿題に
回答することができるのでしょうか?
とは言っても11月となると4ヶ月先です。
多くの方が内容を忘れてしまうでしょう…
なので今回は、7月審議の際にPMDAが
科学的に足りないよね!と審議したポイントを
簡単に振り返るための資料として本記事を作成いたします。
なされているので
できるだけ噛み砕き意訳します!
意訳だけ読んでいってね!
PMDAの総評振り返り
まずはPMDAが下した判断の全体像を確認してみます。
本薬により ウイルス量が減少する傾向が認められていることは否定しないが、申請効能・効果に対する有効性が推 定できるものとは判断できず、当該試験の第Ⅲ相パートの結果等を踏まえて改めて検討する必要がある と考える。
引用:審査報告書
安全性上の大きな懸念は認められず、一定の忍容性は示されていると考えるが、SARS-CoV2 による感染症の患者に対する本薬の投与経験は限られており、本剤が製造販売後に多くの患者に使用 された場合に、新たな安全性上の懸念が生じる可能性は否定できないと考える。
引用:審査報告書
ざっくりまとめると
有効性は否定はできないけど、
推定はできないないし、
副作用に注意する措置は必要=継続審議
こう結論づけられました!
正直この段階で大勢は決していたように
思います。
有効性が推定できないとされたポイント
塩野義製薬の主張とPMDAの主張をそれぞれ並べます。
なお二部会の委員による審査でも
ほぼPMDA側の主張が全面的に認められています。
塩野義製薬 | PMDA |
【第Ⅱa 相パート】 Day 4 時点で、プラセボ群と比較して大きく、ウイルス力価が減少する傾向がある |
・SARS-CoV-2 による感染症は、通常は、自然経過においても比較的短期間でウイルス量が減少 すること。 ・プラセボに対するウイルス量の減少が、どのような株の場合に、どの部位、採取方法及び測定方法で得られた検体において、どの時点で、どの程度の差をもって確認できた場合に、薬剤投与による意義のある臨床効果が得られるかについて十分な知見の集積には至っていないこと。 また、同様の理由により、試験実施時期やウイルスの測定条件等が異なる他剤の臨床試験で認められたウイルス減少の程度との単純比較にも限界があること。 ・ 本試験の第Ⅱb 相パートにおいてウイルス力価の減少に伴う臨床的に意義のある臨床症状の変化は確認されていないこと。 |
【第Ⅱb 相パート】 Ⅱb 相パートの主要評価項目で有意差が認められた(12 症状合計の中でDay 1から Day 6までの単位時間当たりの変化量及び Day 4 におけるウイルス力価のベースラインからの変化量) |
仮説検定の多重性の調整がなされておらず、統計的に評価するのは適切ではない。 |
【第Ⅱb 相パート】 SARS-CoV-2 に よる感染症の 12 症状の分類別62)スコアのDay 1からDay 6までの単位時間当たりの変化量のうち、omicron 株に特徴的な呼吸器症状[鼻水又は鼻づまり、喉の痛み、咳、息切れ (呼吸困難)]で有意差 |
・多様な症状を呈する SARS-CoV-2 による感染症において、一部の症状スコアの結果から臨床症状の改善効果を解釈することには限界がある
・ 傾向は認められているが、群間差の推定値は各症状スコアの最小単位である 1 を下回り、これらの症状について意義のある群間差が認められているとは解釈できないこと。 |
【第Ⅱb 相パート】 12 症状のうち、ベースラインにおけるスコアの平均値が 1 以上であった症状(鼻 水又は鼻づまり、喉の痛み、咳、熱っぽさ又は発熱)に、SARS-CoV-2 による感染症の重症度分類の指標の一つである息切れ(呼吸困難)を加えた 5 症状について、Day 1からDay 6までの単位時間当たりの変化量で有意差 |
同上 |
意訳していきますね!
第Ⅱa相ではウイルス量が減ったというけれど、放っておいてもウイルス量は減るからね?そして確かに減っているように見えるけど減少量が症状を抑える量かは分かってないよね?現に第Ⅱb相試験では明らかに症状が軽くなったといえる変化はないよね!
Ⅱb相では効果があるって色々言ってるけど、再解析してゴールを増やしたんだから、その分ゴールの基準を厳しくする処理が当然必要なんだけど(多重性の調整)これやってないからね?厳しくせずにゴール増やしたらみんなゴールできちゃうからね?だから評価に値しないよね!さらに言うけど、色々な症状があるCOVID-19で特定の症状だけ改善するって限界ない?なんで他の症状は治らないの?あと確かに改善傾向は認められるけどプラセボと比べても本当に微々たるもので意味ある変化なのこれ?
ちょっと効くかわかんないっす。
と言う結論です!
安全性の懸念点
続いて安全性の懸念点も表にしてまとめていきます。
塩野義製薬 | PMDA |
患者における本薬の安全性情報は限定的であるものの、安全性に特段の懸念は認められて おらず、本薬の安全性は認容可能 | 安全性上の大きな懸念は認められず、一定の忍容性は示されていると考えるが、SARS-CoV2 による感染症の患者に対する本薬の投与経験は限られており、本剤が製造販売後に多くの患者に使用 された場合に、新たな安全性上の懸念が生じる可能性は否定できないと考える。
|
同上 | 現時点で得られている情報等を踏まえて、本剤が承認される場合には、以下の点に対応する必 要がある。
・非臨床試験において胎児に奇形を示唆する所見が認められており、本薬は潜在的な催奇形性リスク を有すること等を踏まえ、妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対する本剤の投与は禁忌とす る ・ 本薬は CYP3A の阻害作用を有する等、他の薬剤との相互作用が生じる可能性があることから、適 切に注意喚起を行う |
あと発売される時は催奇形性と薬物相互作用と安全情報の収集はしっかりやれよな!
想定の範囲内なのでは?
臨床的位置付け及び効能・効果
以上、紹介したポイントを踏まえ
7月段階での臨床的位置付けについても
検討がなされています。
塩野義製薬 | PMDA |
ウイルス感染後早期に本剤の投与を開始することで、ウイルス増殖を速やかに抑制し、ウイルス感染に起因する過剰な炎症や免疫反応を抑えて 臨床症状を改善し、さらには、入院又は宿泊療養等による隔離期間を短縮することで、ウイルス感染に よる患者への負担及び医療資源の逼迫の軽減にもつながる | 国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験(T1221 試験)の第Ⅱb 相パートの成績に基づき、本剤の有効性が推定できる とは判断できず、現時点では、本剤が SARS-CoV-2 による感染症の治療選択肢になるとは判断できない。 |
本剤はワクチン接種の有無や SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子の有無にかかわらず、無症状の SARS-CoV-2 病原体保有者及び酸素投 与を要しない SARS-CoV-2 による感染症患者に対して広く使用される抗ウイルス薬として新たな治療選 択肢となり得ると考える。 | 同上 |
効能・効果は、SARS-CoV-2 による感染症 | 既承認の経口治療薬と同様に、SARS-CoV-2 による感染症及び SARS-CoV-2 による感染症の重症化リス ク因子を有する等、治療薬の投与が必要と考えられる患者とし、他の治療薬が使用できない場合に限り 本剤を使用することが妥当 |
相当厳しい制限がかかることが
想定される内容です!
まとめ
以上より
有効性は否定はできないけど、
推定はできないないし、
副作用に注意する措置は必要=継続審議
と判断されたゾコーバですが
記載の通り有効性の否定はされておりません。
11月に公開される第三相試験にて今回問題となった
- 臨床的に意義のある有効性
- 多重性の調整を行なった上での有効性
この辺りをデータで示した上で、
市販後の販売体制を整えれば
承認される可能性が高いでしょう。
ただ300人超に使用して、
臨床的に意義のある効果が表せていない現状を考慮すると
個人的には厳しいのでは…とも考えてしまいます。