今回の内容は正直善悪がはっきりしているので、記事にするか悩んだのですが、
『ここ10年で恐らく最大級&直感的にヤバいと思った事件』ですので、取り上げます。
小林化工株式会社(本社:福井県あわら市、代表取締役社長:小林広幸)は、当社が製造販売し、Meiji Seika ファルマ株式会社と販売提携しております経口抗真菌剤『イトラコナゾール錠 50「MEEK」』(製品ロット 番号:T0EG08)を自主回収(クラスⅠ)することといたしましたので、お知らせいたします。
『イトラコナゾール錠50「MEEK」』につきまして、一部ロット製剤(製品ロット番号:T0EG08)を処方された患者様にふらつき、意識朦朧などの精神神経系の重篤な副作用が報告されました。
弊社において調査したところ、製造過程におきましてベンゾジアゼピン系睡眠剤であるリルマザホン塩酸塩水和物が、通常臨床用量を超える成分量の混入が判明しました。
『イトラコナゾール錠 50「MEEK」』(製品ロット番号:T0EG08)を服 用された患者様において健康被害が報告されており、該当ロットについて自主回収(クラスⅠ)することといたしました。
『イトラコナゾール錠 50「MEEK」』(製品ロット番号:T0EG08)を服用されている患者様におかれましては、 直ちに服用を中止していただき、医療機関へご相談いただきますようお願いいたします。
患者様ならびに医療関係者の皆様には、多大なるご迷惑をお掛けしますことを深くお詫び申し上げます。 何卒ご理解とご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
- 1 ヤバすぎ!!通常の使用量を超える睡眠薬が混入!?
- 2 被害状況
- 3 リルマザホン塩酸塩水和物の副作用が原因?
- 4 混入の原因は?
- 5 ハインリッヒの法則
- 6 116日間の業務停止命令
- 7 2/9:業務停止命令と原因が発表
- 8 2/26:明治が委託品5成分の販売中止
- 9 2021/04/12:メサラジンの自主回収
- 10 2021/04/16:12品目の製造販売承認取り消し
- 11 2021/05/12:14品目の自主回収
- 12 2021/05/28:MEEK販売中止
- 13 2021/06/01:12製品の承認取り消し
- 14 2021/06/07:業務停止期間満了
- 15 2021年12月3日:事実上の廃業を発表
- 16 あとがき
ヤバすぎ!!通常の使用量を超える睡眠薬が混入!?
今回の事件は本当にヤバイ!ここ10年で恐らく最大最狂の回収問題です。
冒頭のニュースを再度、簡単にまとめると
理由は通常の使用量を超える睡眠薬(リルマザホン塩酸塩水和物)が混入して、健康被害が発生しました。
まじでヤバイからロット番号T0EG08を服用している人はスグに飲むのやめて!って感じです。
相性のわるい組み合わせ
この混入されたリルマザホンともともとのイトラコナゾールはちょっと相性がわるいという点にも注意が必要です。
- イトラコナゾールは薬物代謝酵素のCYP3A4阻害作用が存在する
- リルマザホンの代謝にはCYP3A4が関わる
通常リルマザホンは各種代謝の中でCYP3A4によっても分解されますが、イトラコナゾールの作用でCYP3A4が十二分に働けない環境になっています。
被害状況
まずは12月7日段階での発表です。
本製剤1錠中にはリルマザホン塩酸塩水和物が5mg程度含まれ、本製剤を1日4錠服用した場合に
はリルマザホン塩酸塩水和物が20mgとなり、通常臨床用量の10~20倍に達します。このため、本製剤を服用されている患者様で、ふらつき、意識消失、転倒、記憶消失、重度の傾眠、意識もうろうなどの
精神神経系の症状が発生した場合は、本製剤に混入しているリルマザホン塩酸塩水和物による健康被害が想定されます。
12 月 6 日時点、報告された健康被害は 63 件となります。甚大な健康被害として、交通事故(自損)8件、精神・神経系の症状による緊急搬送4件・入院6件が報告されております。
意識消失、意識朦朧、ふらつきといった精神神経系の症状がメインですね。
12/9-11:患者特定と連絡の完了
この度、薬局・医療機関様等の多大なるご尽力のおかげで、本製剤の処方を受けたことが判明している 患者様全員(364 名)の特定、及び患者様への服薬中止等の連絡対応が完了したことをお知らせ致します。
患者様への連絡対応にご尽力頂いた、薬局、医療機関等の皆様には心より御礼申し上げます。
引続き、患者様のお手元等にある本製剤の回収を含め、回収作業を進めるとともに、服用された患者様 の健康被害等の状況の把握に努め、迅速に誠意をもって対応いたします。
12/11:死亡例が確認されました。
回収が完了して安心かと思いきや非常に残念ながら死者が確認されました。
老衰でなくなった可能性もありますし、詳細な調査と報告が待たれますね。
追記:12/12:被害者は100人越えに
- 健康被害134例
- 救急搬送33例
- 事故15例
- 死亡1例

《2021/01/29 追記》
- 健康被害:215人
- 死亡:1人
- 交通事故:22人
《2021/12/4 追記》
- 死者:1名
- 自動車などの事故:14名
- 救急搬送・入院:32名
- 健康被害数:128件
リルマザホン塩酸塩水和物の副作用が原因?
でも本当に睡眠薬が原因?って疑問をお持ちの人もいらっしゃると思いますので、一応添付文書を確認します。
4.副作用
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査 を実施していない。
引用:塩酸リルマザホン錠「MEEK」添付文書
(MEEK品販売中止により現在は添付文書が削除されました)
先発品はリスミー錠です。
4. 副作用
承認時における安全性評価対象例 1277 例中, 副作用は 319 例 (24.98%)に認められた。主なものは,眠気・残眠感 182 件, 倦怠感 83 件,ふらつき 74 件等であった 1)。 再審査終了時における安全性評価対象例 12618 例中,副作用は 135 例(1.07%)に認められた。主なものは,眠気・残眠感 24 件,ふらつき 17 件,倦怠感 8 件等であった。
重大な副作用
(1)重大な副作用
1)呼吸抑制(0.1%未満),炭酸ガスナルコーシス(頻度不明): 呼吸抑制があらわれることがある。また,呼吸機能が高度に低 下している患者に投与した場合,炭酸ガスナルコーシスを起こ すことがあるので,このような場合には気道を確保し,換気を 図るなど適切な処置を行うこと。
2)依存性:連用により薬物依存(0.1%未満)を生じることがある ので,観察を十分に行い,用量及び使用期間に注意し慎重に投 与すること。また,連用中における投与量の急激な減少ないし 投与の中止により,痙攣発作(0.1%未満),譫妄,振戦,不眠, 不安,幻覚,妄想等の離脱症状(0.1~5%未満)があらわれる ことがあるので,投与を中止する場合には,徐々に減量するな ど慎重に行うこと。
3)刺激興奮,錯乱(頻度不明):刺激興奮,錯乱等があらわれる ことがある。
4)一過性前向性健忘,もうろう状態(頻度不明):一過性前向性 健忘,また,もうろう状態があらわれることがあるので,本剤 を投与する場合には少量から開始するなど,慎重に行うこと。 なお,十分に覚醒しないまま,車の運転,食事等を行い,その 出来事を記憶していないとの報告がある。異常が認められた場 合には投与を中止すること。
混入の原因は?
混入の原因に関しても、日経ニュースに記載がありました。
同社は、あわら市の本社工場で原料を量る担当の社員が、入れるべき成分と睡眠導入剤の成分「リルマザホン塩酸塩水和物」を取り違え、保管場所から持ち出したのが原因と説明。本来は2人一組で確認が必要だったが、1人で作業していた。
同社の小林広幸社長は4日、記者会見し「誤混入の原因はヒューマンエラーであり、医薬品企業として万が一でもあってはならない。患者や医療機関の皆さまに深くおわび申し上げる」と陳謝した。
最も根幹の問題点は
2人1組の確認作業を1人で行ったこと…これに尽きます。
ヒューマンエラーは必ずおきます。
なので確認等を2人で行いシステムとしてエラーを防ぐことが製造業の基本です。
特に生命に直結する医薬品業界ではより高いレベルの水準が求められます。
しかしながら、今回はそれが蔑ろにされていました。
原因は明らかに企業&社員コンプライアンスレベルが低い
これに尽きるでしょう。
ハインリッヒの法則
今回の事件は明らかに重大な事故です。
重大事故に関しては「1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する」というハインリッヒの法則が有名です。
ハインリッヒの法則は労働災害を研究して作られています。
現在ではヒューマンエラーを理解する上での基本知識となっていますのでご存知の方も多のではないでしょうか。
再三になりますが、事件は明らかに重大な事故でしょう…つまり
今回の事故の背景には29件の軽微な事故、エラーがあるとみるべきです。
その中にクラス2、3に該当する品目がどれだけあるかはわかりません。
ただかなりの自主回収のリスクを孕んでいると私は考えていますし、そう考えるべき事象です。
なお小林化工の製品は2020年12月現在138品目あります。
この中にからどれだけのエラー品が出てくるのか、薬剤師の先生は採用品目を一度チェックされた方が良いかもしれません。
追記:12/8:追加自主回収のお知らせ~ハインリッヒ的中~
ロット番号:T0EG08 以外の全ロットの自主回収(クラスⅡ)理由
イトラコナゾール錠50「MEEK」につきまして、承認書に記載のない工程を実施していることが
判明いたしましたので、有効期限内の全ロットについて自主回収(クラスⅡ)することといたしま
した。
『イトラコナゾール錠100「MEEK」』および『イトラコナゾール錠200「MEEK」』につきまし
て、承認書に記載のない工程を実施していることが判明いたしましたので、有効期限内の全ロット
について自主回収(クラスⅡ)することといたしました。
12/14:Meiji Seikaファルマ 小林化工が製造する販売製品全品目を出荷停止
Meiji Seikaファルマは12月11日付で、小林化工が製造する販売製品全品目を出荷停止すると特約店に伝達した。対象品目はレボフロキサシン錠やピタバスタチンCa錠など43品目85包装。同社はすでに小林化工の現地調査を開始しており、結果が判明するまでは小林化工の製造品の出荷を停止する方針。
12/15:エルメッド品に飛び火。74品目供給停止
日医工の子会社エルメッドが販売する74品目が小林化工に製造委託されていた様です。
調査の為、該当する74品目が供給停止となっております。
ちょっと件数が多いため製品一覧はプレスリリース直接をご確認ください。
12/16:小林化工全製品の出荷を一時停止
福井県あわら市の製薬会社「小林化工」が製造した爪水虫などの治療薬イトラコナゾール錠50「MEEK」に睡眠導入剤の成分が混入し、健康被害が広がっている問題で、同社が、製造した全289製品の出荷を14日から一時停止したことが16日、わかった。同社の広報担当者は「製造記録の確認を進め、製品の品質、安全性を確かめるため」と説明している。
引用:産経WEST12月16日:水虫薬問題の小林化工、全製品の出荷を一時停止
12/24:クラスⅡ自主回収
これまでは供給停止、出荷停止状態でしたが遂に自主回収が発生しました。
再確認が必要なため自主回収
こちらは行政調査の結果再確認になったため、念のために回収します!というものです。
当該調査の一つとして、過去の試験記録を調査し、その結果について今月 21 日及び 22 日に行われた行政当局の立入調査で報告したところ、下記製品の当該ロットにおいて再確認の必要性が確認されました。
いずれの製品につきましても、弊社に保存していた製品の再試験の結果、問題点は確認されてはおらず、重篤な健康被害が発生するおそれは無いと考えておりますが、さらに安全性に万全を期すため、自主回収を致します。
なお、現在までに、本件に起因すると考えられる健康被害の報告は受けておりません。
いずれの製品につきましても、弊社に保存していた製品の再試験の結果、問題点は確認されてはいないとは言い切っているね。
とはいっても行政からなんらかのツッコミが入る方法で製造していたのは間違いないね。
あとアネトカインゼリーこれは、次の項目でもでてくるから覚えておいて!
出荷試験で再確認の実施に至る検証が行われていないため自主回収
今月21 日及び 22 日に行われた行政当局の立入調査で、定量試験や純度試験等の再確認を指示されました。
その後、弊社全製品を対象に調査を行った結果、出荷試験において再試験で適合されたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない製品として、下記製品の該当ロットが確認されました。
品質への影響がないことは確認しており、重篤な健康被害が発生するおそれはないと考えているものの念のため自主回収することとしました。
出荷試験において再試験で適合されたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない製品
簡単にいうと、本来は原因を徹底的に調べるべきところを、検証を行わず、再試験でOKがでるまで繰り返し試験を行っていたってことです。
原因究明を行わない絶対にあり得ない品質保証体制です。
いやいやいや…怖すぎでしょう…工場のコンプライアンス崩壊してるやん…
2021/01/27:21製品の自主回収
ここは本当にとんでもないですからね。
近代の製薬会社がおこした事件のなかで最も悪質と断言しても良いです。
理由 | 備考 | |
アトルバスタチン錠 5mg「KN」 | 参考品の定量試験において、承認規格に適合しない | 承認規格の下限値を僅かに下回っていることから、十分な効果が得られない可能性があり |
アトルバスタチン錠 10mg「KN」 | 参考品の定量試験において、承認規格に適合しない | 承認規格の下限値を僅かに下回っていることから、十分な効果が得られない可能性があり |
アマルエット配合錠 2番「KN」 | 安定性モニタリングの純度試験(類縁物質)、又は溶出性試験において、承認規格に適合しない | 製品使用によって重篤な健康被害が生じる可能性はない |
アマルエット配合錠 3番「KN」 | 安定性モニタリングの純度試験(類縁物質)、又は溶出性試験において、承認規格に適合しない | 製品使用によって重篤な健康被害が生じる可能性はない |
アマルエット配合錠 4番「KN」 | 安定性モニタリングの純度試験(類縁物質)、又は溶出性試験において、承認規格に適合しない | 製品使用によって重篤な健康被害が生じる可能性はない |
エナラプリルマレイン酸塩錠 2.5mg「MEEK」 (旧名称:エナラプリル錠 2.5「MEEK」) | 安定性モニタリングの純度試験(類縁物質)において、承認規格に適合しない結果が得られたロット、又は試験が実施されていないロットが確認 | 製品使用によって重篤な健康被害が生じる可能性はない |
エナラプリルマレイン酸塩錠 5mg「MEEK」 (旧名称:エナラプリル錠 5「MEEK」) | 安定性モニタリングの純度試験(類縁物質)において、承認規格に適合しない結果が得られたロット、又は試験が実施されていないロットが確認 | 製品使用によって重篤な健康被害が生じる可能性はない |
エナラプリルマレイン酸塩錠 10mg「MEEK」 (旧名称:エナラプリル錠 10「MEEK」) | 安定性モニタリングの純度試験(類縁物質)において、承認規格に適合しない結果が得られたロット、又は試験が実施されていないロットが確認 | 製品使用によって重篤な健康被害が生じる可能性はない |
塩酸プロピベリン錠 10「KN」 | 安定性モニタリングが実施されていない | 効果の発現が遅延する可能性あり |
塩酸プロピベリン錠 20「KN」 | 安定性モニタリングが実施されていない | 効果の発現が遅延する可能性あり |
エンタカポン錠 100mg「KN」 | 安定性モニタリングの純度試験(類縁物質)、又は溶出性試験において、承認規格に適合しない | 効果の発現が遅延する可能性あり |
オロパタジン塩酸塩顆粒 0.5%「MEEK」 | 参考品の純度試験(類縁物質)において、承認規格に適合しない結果が得られたため | 製品使用によって重篤な健康被害が生じる可能性はない |
クロルマジノン酢酸エステル徐放錠 50mg「KN」 | 参考品の溶出性試験において、承認規格に適合しない | 効果の発現が早まる可能性あり |
タムスロシン塩酸塩OD錠 0.2mg「KN」 | 参考品の溶出性試験において、承認規格に適合しない | 十分な効果が得られない可能性があり |
プラコデ配合散 | 安定性モニタリングの溶出性試験において、承認規格に適合しないロット、または試験が実施されていないロットが確認 | 効果の発現が遅延する可能性があり |
プランルカスト錠 112.5「EK」 | 参考品の定量試験において、承認規格に適合しない | 製品使用によって重篤な健康被害が生じる可能性はない |
プランルカスト錠 225「EK」 | 参考品の定量試験において、承認規格に適合しない | 製品使用によって重篤な健康被害が生じる可能性はない |
プランルカストDS10%「EK」 | 該当ロットは、販売会社様の倉庫に全数保管され、医療機関様及び特約店様等へ出荷されていないことを確認しております。従いまして、本製品の回収に関するご案内は行っておりません。 | |
メサラジン錠 500mg「AKP」 | 参考品の定量試験において、承認規格に適合しない | 十分な効果が得られない可能性があり |
リルマザホン塩酸塩錠 1mg「MEEK」 (旧名称:塩酸リルマザホン錠 1「MEEK」)【改訂 第2版】 | 後混合工程において、承認書記載の添加剤の他に、記載されていないリルマザホン塩酸塩水和物を添加していた | 製品使用によって重篤な健康被害が生じる可能性はない |
リルマザホン塩酸塩錠 2mg「MEEK」 (旧名称:塩酸リルマザホン錠 2「MEEK」)【改訂 第2版】 | 後混合工程において、承認書記載の添加剤の他に、記載されていないリルマザホン塩酸塩水和物を添加していた | 製品使用によって重篤な健康被害が生じる可能性はない |
アルマエットとアトルバスタチン10㎎は日医工の製造も請け負っていた様で日医工も巻き込み回収を行っています。
特に今回の理由であり得ないのが“安定性モニタリングが実施されていない”という製品が6製品あることです。
医薬品は患者が安全に薬を使えるか確認するために安全性モニタリングは必須です。
にもかかわらず、ミスではなく全く行われていないという本来ならあり得ない悪意に満ちた対応がなされています。
こんなのは薬じゃありません!!
これは個人の感想というか感情ですが、この会社には薬を作る資格が全くありません。
操業停止するべき案件です。
明らかに患者の健康よりも企業の利益を優先して、
超えてはならない一線を三段跳びで大きく飛び越え、はるか後方に置き去りにしています。
少々社員教育をおこなったところで、この差は埋められないでしょう。さっさと店じまいしてほしいです。
今回の回収で原因が少し明らかに
もともとの問題は
イトラコナゾールにリルマザホンが混入していた事件です。
イトラコナゾール製造時に原末を追加する工程が存在し、そこで取り違えリルマザホンを追加してしまったためです。
今回の回収では間違えたリルマザホンも回収になっています。
そしてその理由は
後混合工程において、承認書記載の添加剤の他に、記載されていないリルマザホン塩酸塩水和物を添加していた
つまり、イトラコナゾール、リルマザホン共に製造中に追加する工程が存在していたのです。
やってはいけない原末追加を両製品で実施、取り違えがおき、さらに1人で実施し確認せず、記録もとっているも全てのチェックポイントで素通り…
116日間の業務停止命令
過去最長の116日間の業務停止命令が小林化工になされる予定です。
これまでは化血研(現KMバイオロジクス)の110日が最長でした。
これまで紹介した通り、悪意があるとみなされても仕方ない対応をしており
私は至極当然な命令です。即廃業でもいいくらいなので、ちょっと緩くないでしょう。
化血研事件は『より良いものを作ろうとしつつ行った改良を長期にわたって届け出ていなかった』というものでした。
単純なミスとみなせる上に健康被害は発生していません。
しかしながら、小林化工は
- 安定性モニタリングを実施しない。
- 再試験の検証を行わない。
という単純なミスとはいいがたい行為を行っています。
そして品質保証を怠った結果、多くの人に健康被害を発生させました。
化血研と比べるとはるかに悪質度が高いと感じています。
2/9:業務停止命令と原因が発表
実際に業務停止命令が下されました。
(1) 第一種医薬品製造販売業の許可に係る製造販売業務及び医薬品製造業(矢地工場)の 許可に係る製造業務に対する業務停止命令 期間:116 日(2021 年 2 月 10 日から 2021 年 6 月 5 日まで)
(2) 第二種医薬品製造販売業の許可に係る製造販売業務及び医薬品製造業(清間工場)の 許可に係る製造業務に対する業務停止命令 期間:60 日(2021 年 2 月 10 日から 2021 年 4 月 10 日まで)
※1 ただし、安全対策業務、製造設備の維持管理に係る業務、製造管理及び品質管理の改善に係 る業務、並びに業務停止命令除外品目(医療上の必要性が高く、事前に福井県の了解を得た 品目)の製造及び出荷に係る業務を除く。
同時に二種医薬品の方も業務停止を受けていますが、こちらは60日ですね。
同様の資料に原因についても明記されていますが、ちょっとわかりにくい文体なので、意訳して箇条書きにします。
今回の原因医薬品医療機器等法違反に係る行政処分についてより意訳
- 承認された製造方法と異なる製造をした。
- 虚偽の製造マニュアル、製造記録を作成していた。
- 製造&品質管理の結果をちゃんとチェックせず出荷した。
- 品質に大きな影響を及ぼす製造手順の変更時に変更管理をしなかった。
- 製造手順等からの逸脱が生じた場合、記録せず、品質への影響の評価もせず出荷した。
- 福井県の薬事監視員が行った立入検査において、虚偽の報告を行った
- 承認書と製造実態が異なる事実を認識していたにもかかわらず、放置した
- 承認事項と異なる成分、品質の医薬品及び異物が混入している医薬品を製造し販売した
虚偽の報告するなよ…社員コンプライアンスが高ければ誰かが止められただろう?
結果、健康被害が生まれて死者も生まれています。
関係者全員が重く受け止めるべきですね。
まぁ今後名前変えたりブランド対策したとしても、ここの薬を採用する薬剤師や医師は皆無でしょうがね?
2/26:明治が委託品5成分の販売中止
小林化工問題を受け、製薬企業に同社との取引を見直す動きが出始めた。Meiji Seika ファルマは、小林化工を製造販売元とする5成分の販売中止を予定しているほか、同社に製造委託している製品についても同様の措置を検討する。第一三共エスファも小林化工を製造販売元とする1成分の販売を中止した。小林化工と提携する企業は10社以上あり、同様の動きが広がるかどうか注目される。
2021/04/12:メサラジンの自主回収
定量試験違反でクラスⅡの自主回収です。
健康被害は認められませんが、ここの会社の薬は正直信頼性0なのでとっとと回収してもらいたいですね…
自主回収規格一覧
2021/04/16:12品目の製造販売承認取り消し
小林化工製造の以下12製品が承認取り消しとなることが決定しました!
今般の製造販売承認の取消は、弊社が、製造販売承認取得のための申請を行った際に、申請書類 の一部に虚偽の記載をしたこと、例えば、予定していた承認申請時期に間に合わせるために、試験の実施時期について、虚偽の記載を行ったことや、承認申請書に記載された製造方法とは異なる製造方法で製造した製剤を使用して、安定性試験を行っていたにもかかわらず、その重要な事実を記載していなかったことなどが理由とされています。
- 試験日の嘘の記載
- 申請書に書いた方法と別方法で製造
- 別方法で作った製剤で安定性試験を実施
2021/05/12:14品目の自主回収
2021/05/28:MEEK販売中止
ついに明治がMEEKの販売中止を決定しました!
この流れは加速していくんじゃないか?と思います。
余談:MEEKってなんの頭文字?
余談なんですが、MEEKってなんの頭文字か全くわかっていなかったんですよね。
調べてみると
Meiji Endorsable and Essential generics made by Kobayashi
これでMEEKなんですね!
明治公認の小林製エッセンシャル(不可欠な)ジェネリック
っていう大層な名前がついているんですね!
今回の件で、明治は
一連の小林化工の動きについて大変遺憾に思っている。
今後同様の事態が起こらないように真摯に受け止めて改善に努める。
提携先との連携のあり方、品質管理体制および監査体制の強化を図る。
というコメントを出すくらいには激怒しているみたいだけど、
公認って冠ついているのにちゃんと管理できていなかった!!
という事実はけっこう無視できないんじゃない?
ちょっと嫌だな…
と主観ですが思いましたね。
2021/06/01:12製品の承認取り消し
非常に重い処分が降りましたね。
12製品の薬価取り消し、薬価未収載の1製品を除き11製品は薬価削除です。
以下12製品をリストアップします。
薬価削除品
- ロラタジン OD フィルム 10mg「KN」
- アナストロゾール錠1mg「KN」
- ロスバスタチン錠2.5mg「MEEK」
- ロスバスタチン錠5mg「MEEK」
- ボセンタン錠 62.5mg「KN」
- エンテカビル錠 0.5mg「KN」
- イルベサルタン錠 50mg「KN」
- イルベサルタン錠 100mg「KN」
- イルベサルタン錠 200mg「KN」
- セレコキシブ錠 100mg「KN」
- セレコキシブ錠 200mg「KN」
未収載のため承認取り消し品
- モンテルカスト細粒 4mg「KN」
2021/06/07:業務停止期間満了
ついに業務停止期間が満了しました。
ここからどのような変化を遂げるのか…
とんでもないことが起こることを証明する事件となりました。
決して忘れてはならない事件ですね。
2021年12月3日:事実上の廃業を発表
ついに…というか来るべき時がきた…というべきでしょうか。
12月3日ついに小林化工が事実上の廃業を発表しました。
- 生産拠点は沢井製薬に譲渡
- 販売品目は基本的に自主回収&承認整理
- ただし医療上必要不可欠な製品は他社への移管を検討
上記対応がとられます。

(近い将来HPがなくなる可能性が高いため)
小林化工株式会社(本社:福井県あわら市、代表取締役:田中宏明、以下「当社」)は、この度、医薬 品製造設備等の資産を、サワイグループホールディングス株式会社(本社:大阪市淀川区、代表取締 役社長:末吉一彦、以下「サワイグループ」)が新たに設立する子会社(以下「サワイグループ新設子会 社」)に譲渡する契約(以下「本件譲渡契約」)を締結いたしました。譲渡完了日は 2022 年 3 月末を予定 しています。 2020 年 12 月に発生した、経口抗真菌剤イトラコナゾール錠への睡眠剤の混入による健康被害に端 を発し、当社が医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機 器等法)と関連省令に違反をしていたことで、多くの関係者の皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおか けしましたことを、改めて深くお詫び申し上げます。 当社は、一日でも早く、「品質が担保された医薬品を社会に安定供給する」という、製薬会社としての 責務を果たすため、厚生労働省および福井県並びに外部の調査委員会のご指摘等を踏まえ、業務改 善を推進し、経営体制の刷新、コンプライアンス体制の見直しを含めた改善活動に取り組んで参りまし た。 このような状況の中、サワイグループから当社資産の譲受けに関するご提案を頂きました。サワイ グループのご提案は、大幅な供給調整に陥っている現状の医薬品市場の課題を一刻も早く解消しなく てはならないという、ジェネリックメーカーに共通した課題を解決するために、当社の製造設備と人材を 最大限に活かす、というものであり、当社として、慎重に検討した結果、「品質が担保された医薬品の 早期安定供給」と「当社従業員の雇用最大化」という 2 つの軸を実現する上で最良と判断し、本件譲渡 契約の合意に至りました。 当社は、本件譲渡契約締結により、福井県あわら市に所在する当社の本社、矢地事業所および清 間事業所の土地建物および設備機器をサワイグループ新設子会社に譲渡いたします。また、生産部 門、品質保証部門、研究開発部門および関連する管理部門に所属する従業員は、資産譲渡に伴い原 則としてサワイグループ新設子会社へ転籍することが可能となっております。 本件譲渡契約による資産譲渡後は、サワイグループのマネジメントの下、一日も早く工場が再稼働 し、市場への医薬品供給を進めて頂けるように、当社としても最大限の協力をして参る所存です。 なお、本件譲渡契約による資産譲渡後も、当社は、健康被害に遭われた方々への補償を最後まで責任を以って全ういたします。また、当社が製造・販売してきた医薬品のうち、医療上必要不可欠な一 部医薬品については、他社へ承継するなどして、安定供給に支障を生じさせないようにします。その余 の医薬品につきましては、本件資産譲渡の結果、当社として、市場に流通している医薬品の品質を将 来的に担保することができなくなるため、全製品の自主回収および承認整理を行います。これら一連 の業務に誠心誠意取り組むことで製薬企業としての社会的責任を全うする予定です。
今回の譲渡の目的は記載にある通り
- 品質が担保された医薬品の早期安定供給
- 当社従業員の雇用最大化
この2点です。
個人の意見ですが、これを達成するには事業売却しかないと考えます。
品質が担保された医薬品の早期安定供給のためには、生産拠点で適切に作られる必要がありますが、
それに加えて、医療関係者&消費者の信頼回復が必須です。
作っても使われなければ、供給したとは言えませんよね…
その点、小林化工は超えてはいけない一線を大きく超えてしまいました。
仮に今後、小林化工が供給を開始した未来があったとしても、そしてその販売価格がどれほど旨味のあるものであったとしても
まともな医療関係者が小林化工の薬を使うことはないです。
それほど信頼を失う製造をおこなっていました。
記載にない添加物や、適当な数値記載など…数々の違反が折り重なっていました(詳細は過去記事を参照ください。)
結果あってはならない健康被害を起こしています。
今回、小林化工の他にも、日医工、長生堂、共和薬品工業が承認外の製造をおこなって自主回収や欠品を起こしていますが、
この3社の製品は安定供給がされれば、また使われるでしょう。
3社は違反は行いましたが、生命関連産業として超えてはいけない最後のバーはまだ超えず健康被害は起こしていません。
(でも違反は違反です。長期的視点ではさらに悪化して小林化工と同じになっていた可能性は高いです。)
共和薬品
「小林化工の施設が売却されるようだな…」
日医工
「ククク…奴は違反回収四天王の中でも最弱…」
長生堂
「サワイさんに買われるとは違反製造者の面汚しよ…(羨まけしからん)」 https://t.co/BP1X8shHLG— チクチク@お薬ブログ (@mrnetinfo) December 4, 2021
※こんなこと言ってますが、実は最凶は小林化工です。明らかに
超えてはいけないバーを超えた小林化工の製品は今後市場に認められることはなく、薬を作っても使われない未来が決定しています。
こうなると目標2の『当社従業員雇用の最大化』も当然不可能です。
小林化工に残された道は自らの手で小林化工の看板を下ろすことだけだったはずです。

あとがき
いやほんとに、マジで??って感じの事件です。
2020年代にこんな事件が製薬会社から起こるなんて正直信じられません。
改めてコンプライアンスや企業倫理の重要性を浮き彫りにした事件となりました。
工場の譲渡を受けた沢井製薬さんには、沢井製薬基準の社員教育を叩き込んでいただき
混迷を極める医薬品の欠品に対する戦力として重用していただきたいなぁと切に願います!

頼みます沢井さん!!