随時追記しているため、時系列に並んでいます。目的の内容がある場合は目次より飛んでください。
2020/4/7:15品目の自主回収~悪夢の始まり~
4/9の業界紙ミクスに以下記事が載りました。
日医工は4月7日、同社が製造する12成分15品目を自主回収(クラスⅡ)すると医療関係者への周知を開始した。回収の内訳は、①安定性モニタリングにおいて承認規格に適合しないもの「8成分9製品」、②出荷時の定量試験で実態と手順に齟齬が生じていたもの「2成分3製品」、③出荷試験の溶出性で社内規格を下回る製品が出荷されていたもの「1成分1製品」、④安定性モニタリングにおいて定量試験および純度試験(類縁物質)が承認規格に適合しないもの「1成分2製品」-あった。自主回収する製品の業績影響は、売上高の1%程度としている。なお、承認規格に適合しなかった理由については、社内調査中としている。
4/9ミクスオンライン
これを見た瞬間に
と感じました。
考え過ぎかもしれませんが、とりあえず見にくいので表にしてみました。
日医工の回収品15品と理由
商品名 | 回収理由 |
ランソプラゾールカプセル30mg | 溶出試験において実態と手順に齟齬 |
ランソプラゾールカプセル15mg | 定量試験および溶出試験において実態と手順に齟齬 |
メキシレチン塩酸塩カプセル50mg | 定量試験において実態と手順に齟齬 |
プラバスタチン10㎎ | 定量試験および純度試験が承認規格に適合しない |
プラバスタチン5㎎ | 定量試験および純度試験が承認規格に適合しない |
オルメサルタンOD錠20mg | 出荷試験の溶出性が社内規格を下回る |
ベタヒスチンメシル塩酸錠6㎎ | 溶出試験が承認規格に適合しない |
ニコランジル錠5mg | 定量試験または製剤均一性試験が承認規格に適合しない |
テプレノン細粒10% | 定量試験が承認規格に適合しない |
テプレノンカプセル50mg | 定量試験が承認規格に適合しない |
テオフェリン除錠錠100mg | 溶出試験が承認規格に適合しない |
セフテラムピボキシル細粒小児用10% | 純度試験が承認規格に適合しない |
セファクロルカプセル250mg | 純度試験が承認規格に適合しない |
グリメピリド錠1mg | 溶出試験が承認規格に適合しない |
ATP腸溶錠20mg | 溶出試験が承認規格に適合しない |
4/26:回収の考察
社内規格不適合は1件。他は、試験方法そのものが間違っている齟齬。そして、承認規格に適合しないものが流通したという内容ですね。
複数の試験方法で適合外が見つかっています。このことからも問題は1つではなく複数発生してそうです。
これらの不適合品が時期をずらして17年9月26日~20年4月3日まで出荷されていました。
2年半にわたってこれだけの品目に何らかの規格外品が流通していたわけで、患者さんへの健康被害はないとしても、信用への影響は非常に大きいんじゃないでしょうか?
先ほども記載した様に後発品会社というのは高い製剤技術と信頼性が求められます。
今回の件は
というものです。
これは製剤技術に関する信頼性が大きく損なわれる理由として十分ではないでしょうか。
1製品規格外が出た回収!!という話は良くあります。しかし、今回のケースは規格外だけでなく承認外の試験方法も同時です。
管理体制自体に問題があると疑われても仕方がない内容かと思います。
更に言うと時期が悪い!!コロナで緊急事態宣言が出ている中、特約店のMSさんは回収のために医療機関を飛び回らなくてはなりません。
ウイルスの拡散を防がなくてはならない時期にMSさんが医療機関に訪問しなくてはいけない理由を作ってしまったという社会的な責任はあるのではないでしょうか。
4/26:日医工の変化を振り返る。
この画像は日医工の投資家向けプレスリリースのページです。(2020/04/26づけ)
追加情報含めて回収に関する記事は1つもありません。GW前の04/26になってもプレスリリースすら出さないっていうのは企業姿勢としてどうなのかなとは思います。既に2週間以上たってますからね。
プレスリリースはしない方針なんでしょうか。ここでも少し信頼性が落ちてる様に思います。
さらに市場の大半を押さえていた薬剤では、絶対的な物量が足りなくなり、競合他社では対応できず出荷調整がかかっています。
ATP製剤の出荷調整やらテプレノンの出荷調整やらで業界他社に迷惑かけまくってますね。
なぜ売り時なのに競合他社は出荷調整するの?と思われる方もいるかもしれません。
これは欠品を避けるために行われます。欠品すると今まで非日医工品を選んでいた競合他社にとってのお得意様である医療機関に薬を納入出来なくなり迷惑をかけてしまいます。
既存のお得意様>新規のお客様(日医工のお客様)
となるのは至極当然の流れですよね。当然、日医工を信じて使っていた医療機関は必要な薬が手に入らなくなります。
こういったリスクを避けるためにも後発品メーカーは製剤技術に対する信頼性確保が重要なんです。
問題を受けての対応
4/1の人事異動からは今回の件に対する対応がみれます。

4月7日のプレス前に既に組織改編していたんですね。
GMP監査室を新設する様です。
GMPはGood Manufacturing Practiceの頭文字です。製造管理とか品質管理基準を示した規範となってます。そこんとこを監査して、管理体制を強化したと見られます。
5/18:更に9品目の自主回収
8成分9製品の自主回収が追加で発生しました。せっかく4/26の追記で少し褒めたのに…背中で語るんだと思っていたのに…計24品目の自主回収になりました。史上最大規模ではないでしょうか。特約店MSと顧客がブチ切れる絵が浮かぶ…
ミクスオンラインの抜粋記事も記載します
日医工の田村友一社長は5月18日の決算説明会(Web会議形式)で、同社の富山第一工場で製造する8成分9品目33ロットについて「承認書に記載のない工程を実施していた」等の事案が発覚し、当該製品と対象ロットについて自主回収(クラスⅡ)を開始したことを明らかにした。同社は4月にも同じ工場で12成分15品目が「承認規格等に適合せず」として自主回収を行っていた。田村社長は決算説明会の冒頭で、「多くの製品の回収により患者様、医療機関、卸の方々、製薬企業の皆さまに多大なるご迷惑をおかけしたことを心よりお詫び申し上げます」と謝罪した。また同社として5つの品質改善への具体策を公表し、取り組む姿勢を表明した。
ミクスオンライン2020/05/19より
上記同様に商品名と回収理由を表にしました。
商品名 | 回収理由 |
---|---|
イフェンプロジル酒石酸塩錠20mg「日医工」 | 承認書にない工程を実施していた。規格には適合。 品質に関する科学的妥当性を示せない |
メキシレチン塩酸塩カプセル50mg「日医工」 | 出荷試験の書類に欠落、定量値が承認規格に適合しない |
オロパタジン塩酸塩OD錠5mg「日医工」 | 出荷試験の書類に欠落。規格には適合。 欠落部分での品質の担保が証明出来ない |
ゾルピデム酒石酸塩錠10mg「日医工」 | 出荷試験の書類に欠落。規格には適合。 欠落部分での品質の担保が証明出来ない |
プラバスタチンナトリウム錠10mg「日医工」 | 出荷試験の書類に欠落。規格には適合。 欠落部分での品質の担保が証明出来ない |
オルメサルタンOD錠40mg「日医工」 | 出荷試験の溶出性が社内基準を下回る。承認規格には適合。 承認規格を下回る可能性を否定できない。 |
オキサトミド錠30mg「日医工」 | 承認書にない工程を実施していた。規格には適合。 品質に関する科学的妥当性を示せない |
クリノリル錠50 | 承認書にない工程を実施していた。規格には適合。 品質に関する科学的妥当性を示せない |
クリノリル錠100 | 承認書にない工程を実施していた。規格には適合。 品質に関する科学的妥当性を示せない |
9品目回収の感想
個人的感想ですが、なんとなく化血研のワクチンの承認外製造事件と似ている気がします。1人の担当者が同じ薬を何年間も作って、効率と品質を求めていった結果、承認方法から変化してそれを再申請せず、さらにそれがブラックボックス化していったのでしょうか。(個人意見です)
GMP監査室が出来て、残ってたホコリが叩き出されたという好意的見方もできますし、しばし動向を見守りたいと思います。
5/26:メサラジン錠の自主回収
今度は東和薬品から受注生産を受けているメサラジン錠の自主回収が発生しました。業界紙RISFAXの記事を引用して紹介します。
日医工が製造する品目の自主回収が止まらない「異常事態」が続いている。煽りを受ける格好で東和薬品は26日、日医工の富山第一工場に製造委託している潰瘍性大腸炎・クローン病薬「メサラジン錠500㎎『トーワ』」について、一部ロットの自主回収に着手した。日医工から出荷時の溶出試験データの取り扱いに不適切な点があったとの連絡が入り、承認規格外であることが否定できないためだ。東和薬品の説明によると、日医工が溶出試験を実施したところ、承認規格外であると判明。その後、あらかじめ定めていた手順書に基づかない方法で処理し、出荷していた。現在、「原因究明と再発防止を日医工にお願いしている」状況。他に製造委託する「数品目」では「不備は認められないと(日医工から)回答をもらっている」という。
引用:https://risfax.co.jp/risfax/177846
日医工にとって他後発品会社からの受注生産は大きなビジネスだったと思います。他の会社からも製剤技術を評価されていたのでしょう。
もともと非常に高い製剤技術を評価されていたからこそ出来ていた受注生産だと思いますが、今回はその部分への信頼も傷つけてしまったでしょうね…
個人的に気になるのは
「日医工が溶出試験を実施したところ、承認規格外であると判明。その後、あらかじめ定めていた手順書に基づかない方法で処理し、出荷していた。
ここ!!
データに基づく判断が重要な医薬品製造の現場でこういう判断しちゃうマネージャーや従業員はおかしいでしょう。だめだってわかってるのに出荷しているのは理解不能ですね。
医療機関でも日医工品を全て切り替えたという話も聞くようになってきました。どこまでこの問題は拡大するのでしょうか。
7/13:役員処分の実施
新しく追加でプレスリリースが発行されました。
内容は本件に伴う役員の処分です。
役職 | 氏名(敬称略) | 内容 |
代表取締役社長 | 田村 友一 | 月額報酬 50%(12 ケ月)減俸 |
代表取締役副社長 サプライチェーン・BS マネジメント担当 | 吉川 隆弘 | 月額報酬 30%(6 ケ月)減俸 |
取締役副社長 CSR・ESG・ビジネス創造担当 | 赤根 賢治 | 月額報酬 30%(6 ケ月)減俸 |
取締役専務 利益・資産管理担当 | 稲坂 登 | 月額報酬 30%(6 ケ月)減俸 |
上席執行役員 品質管理本部長 | 田村 智昭 | 上席執行役員 品質管理本部長解任、月額報酬 30%(3 ヶ月)減俸 |
上席執行役員 信頼性保証本部長 | 島崎 博 | 額報酬 30%(3 ヶ月)減俸 |
上席執行役員 生産本部長 | 高石 正俊 | 額報酬 30%(3 ヶ月)減俸 |
執行役員 信頼性保証本部副本部長 総括製造販売責任者 | 坂 孝男 | 執行役員 信頼性保証本部副本部長 総括製造販売責任者の任を解く |
顧問 | 浦山 秀好 | 顧問を退任とし、報酬の一部の自主返納を要請する |
- 社長は50% 6ヶ月の減俸
- 取締役は30%6ヶ月の減俸
- 上席執行委員会は30%3ヶ月の減俸
上記ロジックのもと品質管理本部長と統括製造販売責任者と顧問を解任という感じでしょうか。信頼性保証本部長が解任されていないのに、信頼性保証副本部長が解任されているのは統括製造販売責任者としての責任を問われたと考えると自然です。
統括製造販売責任者は医療機器の品質管理及び製造販売後安全管理を行うものと法第17条第1項にて定められています。簡単にいうと医薬品製造販売業の実務のトップです。顧問は外部監視機能を十二分にこなせなかったということでしょうか。
取締役の解任はないのか…蜥蜴の尻尾きりか?と思っていたところ途中に取締役 (超品質・安定供給担当) 川岸 浩は、2020 年 7 月 13 日付で取締役を辞任いたしましたと記載がありました。既に品質管理を担当する取締役は辞任していたので、他の解任はないということでしょう。
更に
代表取締役社長が「コンプライアンス管掌」、および代表取締役副社長が
当社製品の自主回収に対する役員等の処分について
「超品質」の任にあたることとし、経営トップが自ら率先してコンプライアンスへの取り組みの強化、徹底を推進してまいります。
また、弊社では、品質に関する根本精神となります『日医工グループの品質方針』についても全面的な見直しを行い、役員及び社員全員の認識を一新して医療用医薬品製造販売者としての社会的責任を果たしてまいります。
という記載からも、会社の根本を見直す姿勢を読み取ることができます。
まとめると日医工からのメッセージとしては
- 品質保証関連役員の刷新
- 品質管理の根本精神『日医工グループの品質方針』の全面的な見直し
- トップによる直接のコンプライアンス管理
上記により品質保証の信頼を取り戻す様、対応を行っていきます。というところでしょう。
解任によってできた空席には同日に発行された人事異動についてというプレスリリースにて後任人事が記載されています。
7/31:4製品の自主回収
役員の引責をもって幕引きとはなりませんでした。新たに4製品の自主回収が発生しました。
製品名 | 回収理由 |
リネゾリド点滴静注液600mg「日医工」 | 環境モニタリング試験(浮遊微粒子、付着菌・浮遊菌・落下菌)に不備 |
ゾレドロン酸点滴静注液4mg/100mLバッグ「日医工」 | 環境モニタリング試験(浮遊微粒子、付着菌・浮遊菌・落下菌)に不備 |
レボフロキサシン点滴静注バッグ500mg「日医工P」 | 環境モニタリング試験(浮遊微粒子、付着菌・浮遊菌・落下菌)に不備 |
レバミピド顆粒20%「日医工」 | 安定性試験結果の確認に於いて、試験検体の保管状況等に逸脱があり、 正確な試験結果が得られていない |
しかし今回のうち3製品は巻き込み事故ですね。
共和クリティケアのソフトバック品が大量に自主回収になっており日医工も上記3製剤は委託していたようです。ミクスオンラインにも以下記事が掲載されています。(共和クリティケア受託製造品の自主回収問題 高田製薬、日医工などに拡大)
共和クリティケアはソフトバックの受注専門メーカーみたいですね。
正直、病院薬剤師の先生は対応で大変な思いをされているのではないでしょうか。かなりのソフトバック製品が回収ですから…欠品にならないことを祈りたいですね。
試験検体の保存方法がそもそも逸脱していて検査できません…ってそれはないでしょう。まぁこれまで、【それはないでしょう!!】の連続なので今更感があるのが悲しいです。
8/19:原因についての見解
ついに、一定の見解が出てきました。
日刊薬業さんが田村社長に取材を行っています。
問題が発生したことについて田村氏は「量的な拡大を行うために、現場で無理をさせ過ぎたのが背景だと思う」と述べた。(中略)キャパシティーを上回る供給を行う体制において品質や製造の管理、試験対応などが十分にできていなかったと説明した。そのような18年までの生産体制で起こった歪みの是正を模索する中、武田テバとの高山工場に関する交渉が始まったことも契機とし、一斉に製造工程の調査を実施。結果、今春の自主回収につながった。田村氏は医療機関や特約店などに「大変ご迷惑をお掛けした」とし、社内においても「特に営業には負担を掛けた。(医療機関などから)お叱りを受ける中で不安やストレスを抱かせたことは間違いない」と振り返った。
高山工場を最大活用、新たな品質体制構築へ 日医工・田村社長、一斉自主回収「現場に無理させた」
拡大路線を走った結果、現れた歪み。それが武田テバとの合併で叩き出されたということでしょうか。
私見ですが、医薬品産業が締め付けられる昨今、無理はどんな会社もしている訳で、それが不正に繋がったと表すのは違うんじゃないかなと思います。
無理の中で、超えてはいけない一線を守れなかったって事が直接的な問題なはず…生命産業に関わる自覚というものがマネージャー&現場サイドに欠如していたと言うことだと思います。
9/8:ブロチゾラムの出荷停止
流石にもぅ終わりかなーと思っていましたが、まだまだ続きますね。
今回は睡眠導入剤レンドルミンの後発品ブロチゾラム!!
睡眠導入剤なので、採用先は多そうですね!
温情で残しておいたのに在庫なくて困りまくる調剤薬局様が目に浮かびます…
4月に始まった当問題も既に6ヶ月…そして5回目の供給問題です。
こんな事言いたくはありませんが「いつまでつづくの??」「契約医療機関はいつまで欠品に怯えればいいの??」と怒りを感じ始めています。
未だ契約を続けている優しい医療機関の方も欠品リスクに対応する為、欠品したら本当に困る採用品は見直した方がいいのかもしれませんね。
9/16:ジアスターゼ、パンクレアチン、メトホルミン自主回収
長期安定性試験において、一部の製品で乾燥減量※が承認規格に 適合しない結果が得られました。他ロットについても、使用期限内に承認規格外となる可能性が否定 できないことから、当該品の使用期限内の全ロットを自主回収致します。 乾燥減量が承認規格上限値を上回っておりますが、定量値については承認規格内の結果であるため、 製品使用によって重篤な健康被害が発生する可能性はないと考えております。なお、現在までに、 本件に起因すると考えられる重篤な健康被害の報告は受けておりません。
長期安定性試験において、一部の製品で定量試験 (でんぷん糖化力)が承認規格に適合しない結果が得られました。他ロットについても、使用期限内 に承認規格外となる可能性が否定できないことから、当該品の使用期限内の全ロットを自主回収 致します。 定量値が承認規格下限値を下回り、十分な効果が得られない可能性がありますが、製品使用に よって重篤な健康被害が発生する可能性はないと考えております。なお、現在までに、本件に起因 すると考えられる重篤な健康被害の報告は受けておりません。
メトホルミンの回収は?
11/9:新たに6成分7品目の自主回収
止める気あるんでしょうか…プラバスタチンに関しては3回目の自主回収です。
タムスロシン塩酸塩カプセル0.2㎎:書類に欠落があり、出荷時の品質に問題があると考えられた。
ニチコデ配合散分包:安定性 モニタリングにおいて、定量試験が承認規格に適合しない結果が得られた。
バラシクロビル顆粒50%:定量試験および溶出性試験が承認規格に適合しない結果が得られた。
プラバスタチン10㎎:溶出性試験が承認規格に適合しない結果が得られた。
ホスホマイシンカルシウムカプセル500:承認書に記載のない工程を実施していることが判明
ランソプラゾールカプセル15㎎:出荷時の定量試験及び溶出性試験において、実態と手順に齟齬
ランソプラゾールカプセル30㎎:出荷時の定量試験及び溶出性試験において、実態と手順に齟齬
全部ダメダメなんですけど、特にダメだろ!!と思ったのはタムスロシンとプラバスタチンですね。
製造期間にご注目ください
タムスロシン該当ロット製造期間は2019年12月〜2020年10月29日
プラバスタチン該当ロット製造期間は2020年3月1 日~2020年5月20日です。
みなさん、この事件が長期になってお忘れかと思いますが、
当事件が最初に起こったのは2020年4月7日です。
タムスロシンに関しては事件後半年、書類に欠落状態が続いた!
プラバスタチンに関しては4月7日にも自主回収があったにもかかわらず、溶出性試験に適合しない製品を作り出荷していた!!
という状態です。
事件後何してたんだ????と言われても仕方がない結果です。
事件ありました!改善しました!ならOKだったと思いますが、
実際は、事件ありました!!改善しました!!やっぱダメでした!!しかも1製品は最初にダメだったやつです。
またダメでした!!が現状です。多分次もダメでしょう。
12/4 :アンブロキソール塩酸塩徐放カプセル45mg一時供給停止

12/9:更に4製品の自主回収発生
今回回収があるのは以下4製品です。
- テオフェリン徐放ドライシロップ小児用20%
- リシノプリル錠10㎎
- ランソプラゾールOD錠30㎎
- プラバスタチンナトリウム錠10㎎
テオフェリンは2回目の回収(前回は錠剤ですが)、ランソプラゾールは3回目、プラバスタチンは4回目の自主回収です。
ついに来た!長期安定性試験不適合品
今回の原因は以下の通りです。
- テオフェリン:長期安定性試験で定量試験が長期安定性試験に適合しない
- リシノプリル:参考品の溶出性試験不適合
- ランソプラゾール:参考品(24&36か月)にて純度試験不適合
- プラバスタチン:溶出性試験不適合
恐らくこれまで発表された回収は氷山の一角で、長期保存に影響を与える程度の軽微な製造変更が数多く眠っていて、長期安定性試験で明らかになったのではないのかなと、私見では考えています。この考え方が正しければ、これから長期安定性試験逸脱品が続出する可能性もあります。
2021/01/13:過去最大の38品目の自主回収
製品名 | 回収理由 | 期間 (ロットが複数ある場合は最古~最新を記載) | 備考 |
アムロジピン錠10㎎「日医工」 | 出荷試験の結果を再確認したところ、 再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない。 | 2018/11/19-2018/12/25 | 含量が規格を下回り、有効性の低下が懸念される |
アムロジピンOD錠2.5㎎「日医工」 | 出荷試験の結果を再確認したところ、 再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない。 | 2019/12/2-2020/2/6 | 含量が規格を上回る |
アンブロキソール塩酸塩錠「日医工」 | 出荷試験の結果を再確認したところ、 再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない。 | 2016/12/20-2017/07/05 | 含量が規格を下回り、有効性の低下が懸念される |
エチゾラム錠1㎎「日医工」 | 出荷試験の結果を再確認したところ、 再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない。 | 2018/11/14-2020/12/07 | 効果発現が遅延する可能性あり |
エバスチンOD錠10㎎「日医工」 | ・純度試験に適合しない結果が得られたロット ・使用期限内に不適合になる可能性があるロット | 2019/02/14-2021/01/12 | 規格内 |
オルメサルタンOD錠20㎎「日医工」 | ・参考品において溶出性試験承認規格不適合 ・出荷試験の溶出性試験にて社内規格を下回る | 2019/03/27-2020/04/21 | 効果発現が遅延する可能性あり |
オロパタジン塩酸塩OD錠2.5㎎「日医工」 | 書類に欠落 | 2020/02/25-2020/04/08 | 規格内 |
オロパタジン塩酸塩OD錠5㎎「日医工」 | 書類に欠落 | 2019/05/20-2020/04/07 | 規格内 |
カリジノゲナーゼカプセル25単位「日医工」 | 承認書と異なる試験方法を実施 | 2018/11/16-2021/01/05 | 規格内 |
カリジノゲナーゼ錠25単位「日医工」 | 承認書と異なる試験方法を実施 | 2017/08/25-2021/01/05 | 規格内 |
カリジノゲナーゼ錠50単位「日医工」 | 承認書と異なる試験方法を実施 | 2017/09/19-2020/04/13 | 規格内 |
カンデサルタン錠8㎎「日医工」 | 出荷試験の結果を再確認したところ、 再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない。 | 2017/08/28-2020/09/03 | 効果発現が遅延する可能性あり |
グリメピリドOD錠1㎎「日医工」 | 出荷試験の結果を再確認したところ、 再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない。 | 2018/11/09-2019/09/06 | 含量が規格を下回り、有効性の低下が懸念される |
ジピリダモール錠25mg「日医工」 | 原薬において、製造業の許可を有しておらず承認書に記載されていない保管施設にて保管・表示 | 2019/12/06-2021/01/05 | 規格内 |
シメチジン錠200㎎「日医工」 | 原薬において、製造業の許可を有しておらず承認書に記載されていない保管施設にて保管・表示 | 2020/05/07-2021/01/05 | 規格内 |
セチリジン塩酸塩ドライシロップ1.25%「日医工」 | 書類に欠落 | 2018/11/02-2020/04/02 | 規格内 |
テモカプリル塩酸塩錠2㎎「日医工」 | 安定性モニタリング及び参考品において、溶出試験承認規格不適合 | 2018/05/21-2019/02/05 | 効果発現が遅延する可能性あり |
ドキサゾシン錠2㎎「日医工」 | 書類に欠落 | 2018/05/09-2018/09/03 | 規格内 |
ドネペジル塩酸塩細粒0.5%「日医工」 | 定量試験が承認規格に適合しない | 2018/12/03-2019/03/26 | 定量値が承認規格下限を下回り十分な効果が得られない可能性あり |
トリアゾラム錠0.125㎎「日医工」 | 出荷試験の結果を再確認したところ、 再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない。 | 2018/07/19-2018/10/29 | 含量が規格を下回り、有効性の低下が懸念される |
トリメブチンマレイン酸塩錠100㎎「日医工」 | 原薬において、製造業の許可を有しておらず承認書に記載されていない保管施設にて保管・表示 | 2018/12/17-2020/12/08 | 規格内 |
バルサルタン錠40㎎「日医工」 | 出荷試験の結果を再確認したところ、 再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない。 | 2018/08/03-2018/12/12 | 含量が規格を上回る |
ピタバスタチンカルシウム錠4㎎「日医工」 | 出荷試験の結果を再確認したところ、 再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない。 | 2019/06/11-2019/08/23 | 規格内 |
ピタバスタチンカルシウムOD錠1㎎「日医工」 | 書類に欠落 | 2018/05/15-2018/06/20 | 規格内 |
プラバスタチンナトリウム錠5㎎「NikP」 | 書類に欠落 | 2020/03/03-2020/10/21 | 規格内 |
プラバスタチンナトリウム錠10㎎「NikP」 | ・参考品において溶出試験が承認規格不適合 ・定量試験が使用期限内に不適合になる可能性がある | 2019/02/01-2020/05/19 | 効果発現が遅延する可能性あり |
プランルカスト錠112.5㎎「日医工」 | 出荷試験の結果を再確認したところ、 再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が手順に従って行われていない。 | 2019/03/18-2019/08/01 | 効果発現が遅延する可能性あり |
ブロチゾラム錠0.25㎎「日医工」 | ・参考品において溶出試験が承認規格不適合 ・書類に欠落 | 2019/01/24-2020/06/08 | 効果発現が遅延する可能性あり |
プロピベリン塩酸塩錠20㎎「日医工」 | 出荷試験の結果を再確認したところ、 再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない。 | 2020/04/24-2020/09/01 | 含量が規格を上回る |
べポタスチンベシル塩酸塩錠20㎎「日医工」 | 出荷試験の結果を再確認したところ、 再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない。 | 2019/05/22-2019/08/29 | 効果発現が遅延する可能性あり |
ペングット錠250㎎ | 書類に欠落 | 2019/05/14-2019/06/17 | 規格内 |
ベンコール配合錠 | 安定性試験(18か月)において崩壊性試験のpH6.8が承認規格に適合しない | 2018/07/17-2019/01/25 | 規格内 |
メサラジン錠500㎎「日医工」 | 書類に欠落 | 2019/05/21-2019/07/17 | 規格内 |
モンテルカスト錠10㎎「日医工」 | 出荷試験の結果を再確認したところ、 再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない。 | 2018/07/13-2018/10/09 | 含量が規格を下回り、有効性の低下が懸念される |
ランソプラゾールカプセル15㎎「日医工」 | 出荷試験の結果を再確認したところ、 再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない。 | 2019/05/21-2020/04/16 | 含量が規格を下回り、有効性の低下が懸念される |
ランソプラゾールOD錠15㎎「日医工」 | ・参考品において溶出試験が承認規格不適合 ・純度試験または定量試験において再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない。 | 2018/11/06-2021/01/06 | 効果発現が遅延する可能性あり |
ロフラゼプ酸エチル錠1㎎「日医工」 | ・社内規格を下回る製品が出荷 ・出荷試験の結果を再確認したところ、 再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない。 | 2018/12/12-2018/12/27 | 含量が規格を下回り、有効性の低下が懸念される |
ロフラゼプ酸エチル錠2㎎「日医工」 | ・社内規格を下回る製品が出荷 ・出荷試験の結果を再確認したところ、 再試験で適合とされたものについて、再試験の実施に至る検証が行われていない。 | 2019/07/22-2019/09/03 | 含量が規格を下回り、有効性の低下が懸念される |
回収理由の集計

- 再試験の実施に至る検証がされていない→検証やれよ!
- 書類の不備→管理職ちゃんとチェックしろよ!
これだけです。
これが理由のトップになる点が日医工の体質の問題点ではないでしょうか?
有効性安全性への影響は?
試験逸脱は溶出試験が多かったためか、問題のある製品の中では効果発現遅延が9製品あります。
今回、回収される38製品のうち21製品は有効性・安全性に何らかの懸念がある製品ですので消費者への説明等、市場に与える影響が大きいかもしれません。
医師、薬剤師の先生には多大な労力がかかる気がします…
都度所管
理由不明だけど馬鹿みたいに多いぞ?と4月の段階で思いましたが、その時の直感が恐ろしくも当たっている状況です。正直出口の見えないトンネルの様相を呈してきました。
これだけ長くなると心配なのが第一線で謝罪するMRのみなさんの精神状況です。同業としてどうしても心配になってしまいます。
もういいから取引切ってくれ!!と思っているMRさんすらいそうです。
数字が大好きなMRがこれを言い始めたら危険信号だと思います。
ご迷惑を被っている消費側の皆様には申し訳ありませんが、こんな人見かけたら優しくしてあげてください…