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二重特異性抗体を解説。ビーリンサイトの作用機序

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二重特異性抗体を解説

二重特異性抗体を解説

過去記事にて、抗体薬物複合体(ADC)という抗体の特異性を利用した素晴らしい薬剤を紹介しました。ADCは間違いなく進化した抗体薬です。

しかし、抗体薬には面白い進化系がもう一つあります。

それが二重特異性抗体です。

抗体の特異性って基本的にはターゲットが1つという意味だと紹介してきましたが、それが二重になっている薬です。意味がわかりませんね。

どんな薬なのか、既に発売されている薬を使って紹介します。

ビーリンサイトってなに?

役割

今回、二重特異性抗体の例として紹介する薬剤は一般名ブリナツモマブ、製品名ビーリンサイトという薬剤です。

ビーリンサイトは日本で最初に承認された二重特異性抗体製剤です。開発元はアムジェン。アムジェンは抗体に強いメーカーで、実は多くの抗体薬を製造している世界有数のメーカーです。

ビーリンサイトの適応は『再発又は難治性のB細胞性急性リンパ性白血病』です。具体的には人体で抗体を製造するB細胞が異常をきたし、がん化した白血病。その中でも再発または難治症例に使われる薬剤です。

白血病っていうのは血液のがんです。この場合は血液中のB細胞ががん化しています。また後ほど登場しますので、ついでにCD19とCD3も併せて紹介します。

がん化したB細胞はCD19という分子を通常よりも多く細胞表面に作ることがわかっています。CD4とか8とか過去記事で紹介しましたが、同様の細胞表面にある分子です。

また、がん細胞をやっつける細胞はT細胞ですが、全てのT細胞はCD3という分子を持っています。CD3はT細胞の敵を探すためのセンサーであるTCRの土台となる分子です。

 
ビーリンサイトはこのCD3とCD19を標的とした薬です。
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ビーリンサイトの構造

次に構造を紹介します。

二重特異性抗体は2つの抗体を掛け合わせてつくられます。ビーリンサイトの場合はマウス由来のCD3抗体とCD19抗体を使います。

主に使うのは抗体の先の部分(可変領域といいます)

この可変領域は抗体がターゲットにくっつく部分です。CD3抗体の可変領域はT細胞のCD3に結合し、CD19抗体の可変領域はB細胞のCD19に結合します。

その領域を切り取ります。

 
切り取るの!!??
 
切り取ります!!!
ビーリンサイトの作り方

そしてADCでも登場したリンカーでつなぎます。

ビーリンサイトの作り方

すると両端に可変領域がある抗体が出来上がります。

CD3にも19にも結合する特異性が『二重』の抗体が出来上がりました。

ビーリンサイトの作り方
 
だから二重特異性抗体なんだね。
 
抗体を切り出して結合させるとか凄い技術ですよね。

※詳しく紹介すると

ブリナツモマブは遺伝子組換え一本鎖抗体(scFv-scFv)であり、1-111 番目はマウス抗ヒト CD19 モノクローナル抗体の L 鎖の可変領域、127-250番目はマウス抗ヒトCD19モノクローナル抗体の H 鎖の可変領域、256-374 番目はマウス抗ヒトCD3 モノクローナル抗体の H 鎖の可変領域、393-498 番目はマウス抗ヒト CD3 モノクローナル抗体の L 鎖の可変領域からなる。ブリナツモマブは、504 個のアミノ酸残基からなるタンパク質である。

ビーリンサイト申請資料

となりますが、マニアックなので端折って先ほどのぐらいの説明で十分だと思います。

作用機序

続いて作用機序を紹介します。作用機序は以下の図の通りです。

ビーリンサイト作用機序

T細胞のCD3にもがん化したB細胞のCD19にも結合する抗体ですので、ビーリンサイトはB細胞とT細胞を繋ぎます。(架橋といいます)がん細胞と繋がれた免疫細胞であるT細胞は、ターゲットを認識し、がん細胞を攻撃したり、自身が増殖したり、仲間を呼んだりします。

少し詳しく書くと、CD4陽性のT細胞はヘルパーTに、分化増殖し、マクロファージや細胞障害性T細胞を呼び寄せます。CD8陽性のT細胞は細胞障害性T細胞に分化増殖しがん細胞に穴をあけたり、アポトーシスを起こさせたりします。

どちらにしろ待っているのはT細胞の攻撃部隊である細胞障害性T細胞軍による総攻撃です。非常に増殖が得意ながん細胞でも、細胞障害性T細胞の総攻撃は深刻なダメージを受けます。

非常に面白いのは直接的な薬物の働きはターゲットとT細胞を繫ぐだけという点ですね。

多くの薬物は直接的にがん細胞を攻撃したり、がん細胞の偽装行動を妨げたりしますが、この薬は繫ぐだけです。

繫ぐだけですが、これが非常に有効な訳です。

がん細胞はT細胞の活性を落とす命令を出して、正常細胞であることを装ったりします。イメージとしてはルパン三世の変装に近いです。T細胞(銭型警部)に見つかっても一般細胞を装って攻撃をかわします。そこで、薬の力でルパン(がん)と銭型警部(T細胞)を手錠で繫いでしまう訳です。

そうすると単純にT細胞ががん細胞がT細胞をチェックする回数が増えます。数回は騙せても最終的には見破られてしまいます。物理的な距離を近づけることでT細胞ががんを発見しやすくなり、T細胞の活性化が起こりやすくなります。

流石のルパンも 手錠で銭型警部とつながれたら、そのうちバレますよね。そんなイメージです。

※ビーリンサイトによるT細胞の活性化に関してはCD3の直接刺激による活性化も考えられましたので調べましたが、根拠となる文献を見つけることが出来ませんでした。詳しい方いらっしゃいましたら教えてください。

 
この薬はT細胞が働きやすい環境を作ることで、人体が持っているがん細胞を破壊する力を引き出す薬剤なのです。
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まとめ

まとめ

二重特異性抗体は『繫ぐ』という特徴から様々な応用が期待できる薬です。

特にT細胞と架橋する抗体薬は今後開発が進みそうです。

サノフィは二重ではとどまらず、骨髄腫細胞表面に発現するCD38抗原、T細胞表面に発現するCD28抗原とCD3タンパク質複合体の3種類の分子を標的とする三重特異性抗体 (CD38/CD3×CD28抗体)を開発中です。

参考:Trispecific antibodies offer a third way forward for anticancer immunotherapy

 
ADCも面白い進化先ですが、二重特異性抗体も非常に面白い進化ですよね。今後、更に過熱してくる領域だと思っています。
 
二重特異性抗体のニュースを見たときにはこの記事を思い出して貰えればいいなと思います。
 

※有効性、安全性につきましては製造販売元の情報を確認ください。

※当ブログの内容は個人の見解です。
有効性&安全性を保障するものではありませんのでご注意ください。
医薬品は医師・薬剤師の指導に従い用法用量を守って正しく使いましょう。